閉鎖病棟・上高地【小梨平ソロキャンプ2018】

08:20
キャンプ場に戻る道中。

バスターミナルから少し森の中を歩くと、梓川に出てその先が河童橋。

このあたりは観光客が大勢いるところなのだけど、朝8時にして既に団体の御一行様が闊歩していらっしゃる。早い!

一体どういうことだ?こんな時間にここにいるって、朝何時に宿を出発したのだろう?

バスターミナル方向から歩いてきているので、おそらくついさっきバスで到着したのだろう。この界隈に泊まっていました、というわけではなさそうだ。

あり得るとすると、岐阜県の平湯温泉泊だ。でも、そこから出発するにしたって、遅くとも7時半には宿を出発しないと今ここにはいられない。じゃあ朝ごはんは何時なんだ?起床は?

みなさん気合いを入れてここに来ているんだな。さすがだ。

08:21
でもそれでいいと思う。昼になると、河童橋界隈は人であふれる。山と川、森の美しさは昼夜を問わないけれど、人が多いと気が散る。美しさが何割か減少してしまう。朝のうちに来られるなら、来ておいたほうがいい。

夕方はダメだ、この界隈は店じまいがやたらと早い。売店は営業していても、店頭で食べ歩き用に売っている軽食類は16時をすぎるとそろそろ怪しくなってくる。

写真は河童橋たもとにある五千尺ホテル。一階が売店になっていて、軒下にはおやきやコロッケ、ソフトクリームなどが売られている。コロッケはわさび味で、「上高地名物」を自称している。

ここのソフトクリームは、昼間とても多くのお客さんが食べている。河童橋のたもとにある、ということで便利なのに加え、どうも団体旅行客向けにソフトクリーム券を配布しているようで、ツアー客がソフトクリームを我先にと頼んでいる様子が見かけられた。

08:23
五千尺ホテルを過ぎて、橋を渡ったらそこから自然エリア。

清水川という名前で、とても水が美しい。湧水池からわずか数百メートルしかない、短い川だ。この橋の先で、梓川と合流する。ちなみに橋の名前は清水橋。

08:24
橋を渡ったところにあるのがビジターセンター。

昨日は上高地到着が遅かったので、ここにお邪魔することができなかった。今日は朝から、ちゃんと勉強しようと思う。せっかく自然と一体になって一日を過ごそうとしているのだから、ビジターセンターでこの場所について知っておきたい。

08:29
・・・が、どうしても僕は草花や樹木、そして鳥の名前って覚えるのが苦手なんだよな。全然頭に入ってこない。

ただなんとなく、わかったつもりになってこの場は退却。いや、楽しかったんだけど。

ビジターセンターの玄関には、天気図とともにウェザーニュースの天気予報も出ていた。

さきほどスマホで見た天気予報と情報ソースが異なるので、こちらも参考にしておく。

この情報によると、今日は晴れで、最高気温は21度まで上がるという。いっぽう、翌朝の最低気温は1度。スマホ情報だと2度だったので、大差はない。どうやら、氷点下の中一晩を耐える、というのは今晩はなさそうだ。まずは一安心。

この天気予報でも、明後日は雨上の予報が出ていた。明後日には引き上げた方がいいのかな、それとも一過性のものなのかな。ちょっと思案のしどころだ。一応、キャンプ場は2泊分の宿泊料金だけ払っている。延長するなら追加でお金を払えばいいだけのことだ。

これって、フリーテントサイトならではのメリットだ。区画が区切ってあるキャンプ場や旅館・ホテルの場合、延泊したいと思ってもその場に空きがないと無理だ。それが旅行における当たり前だと無意識のうちに思っていたけれど、フリーサイトならば「気が済むまで、いられる」。自分の中では大発見だ。

幸い、GWが終わるまでまだ時間がある。その気になれば、もっと長居は可能だ。

08:31
キャンプ場に戻ってきた。

既に昨晩あったテントの一部が消えていた。早い。この時間に撤収して、一体どこに行くんだろう。ここからさらに奥の涸沢を目指すのか、それとも家路に向かったのか。

08:41
使われていないトイレの軒下にあるベンチを使って、お湯を沸かしてインスタントコーヒーを淹れる。

インスタントコーヒーを飲むのは久しぶりだ。最近、セルフサービスのソフトドリンクベンダーでも、ボタンを押してから豆を挽くようなものが増えたからだ。

コーヒーのおともとして、バスターミナルで買った河童焼きもある。こいつらとともに、またしばらく読書を楽しもう。

08:44
森は、目に優しい光景。風は、耳に優しい音。

ときどき遠くから聞こえる人の声。

心がくつろぐ。

なによりも、朝9時前という今にして、「今日は特にやることがないぞ!」というこの圧倒的現実。素晴らしすぎて、感動した。そして、今晩寝て明日起きても、また一日たっぷりとやることがない。本を読むか、散歩するかしかできない。ああ、なんてすごい時間なんだ。

静かに興奮する自分。昨晩は、上高地の景色やシチュエーションに興奮したけど、今日は内省して興奮している。これだよこれ、こういう選択肢のない世界に身を起きたかったんだ。

今日の昼飯はどうしよう、とか晩飯は自炊するかなあ、とか考えるけれど、調理器具や食材、メシ屋の数は限られている。それがいい。

もしこれが自宅で一日ダラダラだったらどうなってただろうか?せっかく暇なんだし、豚の角煮とか燻製でも作ってみようか、なんてあれこれ考え始めてしまう。

それがどうだ、上高地なら、燻製とか角煮とか、ムリだ。大人しくカップラーメンでも食ってろ、という世界だ。

09:22
情報過多の世界に身を投じている日々。登山だってやるけれど、ちゃっちゃと目的地に着いて目標達成したらどんどん下山しちゃう。ゆっくり自然を見るなんてことはしない。

もし、「山頂で休憩しているときくらい、ちゃんと自然を見ようよ・・・」と思ったとしても、それは義務感からやるに過ぎない。その義務が果たされれば、さっと目線を外し、「さて、次だ次!」と気持ちを入れかえてしまう。

そして今。今は、いくらでも新緑を眺めることができる。飽きたら目を逸したっていい。1時間後もどうせここにいるんだし。いやでも自然はいくらでも目に入る。

09:22
硬い木のベンチは、長時間の読書に向いているわけではない。

とはいっても、テントの中で寝っ転がって読書というのも難しい。テントが狭いというのもあるけれど、おひさまが上っている間はテント内が蒸し風呂になるからだ。ビニールハウスで野菜を栽培するのはなぜか、というのがテントの中にいるとよくわかる。覆うだけで、その中の空気は暖かくなるからだ。

読書はこれからも続けていくけれど、同じ場所でひたすら読書というのはケツがいたい。どこか散歩して、適当なところで休憩がてら読書して、また歩いて、を繰り返すことに決めた。

(つづく)

09:23
コーヒーと河童焼きを食べたあと、しばらく読書時間。

読書は好きなはずなんだけど、時間があればパソコン、スマホに向き合ってしまっている。読書に割ける時間が全然足りない。今回、まとまった時間がとれたのは本当に良かった。このままだと活字離れしてしまいそうだ。

遠くに聞こえる小鳥のさえずりを聞きつつ、文字を追いかける。

09:41
向こうでバサバサと音が聞こえる。テントの撤収をしている音だ。

このキャンプ場は老いも若きもいる。白髪になった60オーバーのおじさんがソロで寝泊まりしていたりする。夫婦でご年配、というのは見かけるけれど、さすがにマダムのソロは見かけなかったと思う。そういえば、男性比率がとても高い。

いっぽう、少年少女は皆無だ。受付や食堂では子どもを見かけたけれど、その人たちはみんなケビン泊だった。オートキャンプではないので、学童レベルの子どもを連れて親がキャンプにやってくるのは難しいのだろう。

多くが山用のテントで寝泊まりしている一方、時々「ホームセンターで買った、初心者向けの安いテント」を使っているおじさんがいるのでアツいな、と思う。安いテントは、テントの雨露よけ「フライシート」の面積が足りない。なので、フライシートをかぶせても、テントの下が少し見えてしまっている。女性でいうところのニーソックスとミニスカートの間の太もも、通称「絶対領域」のようだ。

あと、安いテントはテントの底の生地がブルーシートみたいにゴワゴワだ。防水にはなるのだろうが、かさばるし重たい。

でも、そういうテントでこの季節に上高地までやってくるというのが、いい。素敵だ。お作法をわきまえない人なら困るけれど、そういう人はここには来ない。

09:51
ゴミを捨てに炊事場近くのゴミ箱までやってきた。

鉄製の、頑丈な作りになっている。扉も、重たい。おそらく、熊対策のためだ。

熊なら、少々のゴミ箱ならば押し倒して壊せる。そうさせないぞ、という決意がここには感じられる。その分、相当いかつい。

ゴミを捨てるための穴だって、ふだんはちゃんと蓋がしまっている。扉を開けても、中は伺いしれない。なぜなら、扉が「く」の形になっているから。扉の内側にゴミを乗せ、蓋を締めるとゴミが中に落ちる。徹底して、中身を漁られないように対策している。

10:07
あれだけ混んでいた梓川沿いのエリアも、余白が生まれていた。

ただ、このキャンプ場は朝7時から夜7時までチェックイン可能だ。チェックアウトは、夕方までに済ませればいい。なので、「どの時間に行けば穴場スポットが運良く確保できるのか?」というのは正解がないのかもしれない。

とはいえ、今日帰る人、というのはだいたい昼前には荷物をまとめることが多いので、今は空いている時間帯なのだろう。

10:09
折りたたみ式のチェアが天日干しされている。レンタル品が返却されたんだと思う。

こんなチェアをレンタルする人がいたのか。かなり大掛かりだな。いや違うか、持参する荷物はできるだけコンパクトにして、現地でいっぱい借りるという作戦だな。

毛布、寝袋も干してあった。

10:10
受付棟の奥に、「奥小梨セントラルロッヂ」という看板を掲げた、倉庫のような建物があった。石とコンクリートに覆われていて、中がよくわからない。倉庫?冬季小屋?それとも、従業員のお仕置き部屋?

ケビンの横を歩いていく。

ケビンはカーテンを閉めていなければ、部屋の中が丸見えだ。

川を渡る。

まだ4月末だと、東側斜面のあちこちに残雪が見える。

今日はそういう光景を眺めつつ、ここから徒歩1時間弱の明神まで歩いてこようと思う。次の読書場所は、明神の河原だ。

(つづく)

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