16:38
このエリアには建物が3棟、連なっている。
梓川方面から順に、食堂・売店棟、受付・浴場棟、そして残り一つがこれ。倉庫らしい。
倉庫の二階はスタッフたちの宿泊所になっているように見える(実際そうなのかどうかは不明)。
車が停まっているのが見える。ここまでは関係者であれば、車で立ち入ることができる。
なんなら、ここから梓川を遡上すること3時間、明神⇒徳沢と進んだ先の横尾まで車が入ることができる。延々徒歩で歩いている登山客は、車がブーンと車道専用道路を走り抜けていくのを見て、「俺も乗せてくれ・・・」と思うものだ。なにせ、殆ど水平移動であり、標高差がない光景だからだ。
横尾まで観光用にマイクロバスを運行したり、なんなら馬車を走らせたり、そういうことはできるだろう。しかし、それでオーバーツーリズムになるのは誰も望んでいない。観光客は上高地まで。ちょっと足に自信がある観光客は明神まで。それ以降は山を登る人くらい、という棲み分けのままで良いと思う。
受付に、「ペグトンカチを貸してくれないか」とダメ元で聞いてみたら気前よく貸してくれた。ありがとう!
ちょっと見ない間に、梓川沿いのエリアはさらに密集してきた。
それにしてもモンベルのステラリッジテントの多いことよ。
山用テントということもあって、黄色が多い。自分が黄色いテントの場合、うっかり誤って別の人のテントに入ってしまいそうだ。
16:39
一方、我らがBエリアは平和なものだ。それでも、さっきと比べてテントが増えた。
「おっ、そこに張るのか」
みたいな感じで、お互いが牽制しあっている世界。・・・と考えるのは深読みしすぎか。
僕が混んでいるテン場にテントを張らないのは、先にテントを張っていた人も、これからテントを張る人も、気まずいだろうと思っているからだ。
「え?この隙間に割り込んでくるの?ヤだなあ」
みたいに思われるの、イヤじゃん。
殆どのテントは登山用のものだけど、時々ホームセンターで売っているような大型の、オートキャンプ向けのテントを建立していらっしゃる方もいる。
テントがでかいと快適さは段違いだ。特に雨の日はテント内に閉じこもることになるので、なおさらだ。でかいテントは正義。・・・しかし、完成するとデカいけど、たたむと小さくて軽いテントというのは存在しないのよね。オートキャンプ用ともなると、平気で10キロ超えだし、長さも相当なものになる。
しかし、そういうテントさえも設営できてしまうのが、ここ小梨平キャンプ場の強みだ。専用のシャトルバスなどに乗ってくる必要はあるものの、バスターミナルからだと徒歩10分足らずだ。マイカーからバスへの荷物の積み込みと、バスターミナルからここまでの徒歩とを頑張れば、なんとかなる。
いっぽう、ソロキャンパーおかでんは黙々と借りてきたペグトンカチで、2型テントの張り綱をセットするのであった。
教訓だな、ペグトンカチは買っておいたほうが良い、ということを。
これまで、アワレみ隊で数多くキャンプをやってきた。でも、ペグ打ちなんて殆どしたことがなかった。というのも、「砂浜にテントを張る」という体験からスタートしているからだ。砂浜だと、ペグなんて打てない。
それ以降も、ペグは殆ど使っていない。面倒だからだ。「テントに荷物を置いておけば、風でテントが飛ばされることはないっしょ」という程度の認識だった。
しかし今回は違う。ちゃんとペグを打っておきたい。
周囲を見渡すと、さすが山登り系のキャンパーだけあってみんなお行儀よく張り綱を貼って、ペグダウンしているからだ。自分だけしなっとしたテントは、なんだかかっこ悪い。
それだけじゃない。狭いテントなので、ペグでフライシートをピンと張っておくのは大事だ。夜になると、湿気でテントやフライの生地は伸びて、緩む。その際に生地同士がくっつくと、そこから水がしたたってくる。
写真の僕の姿を見てわかるように、今は半袖で十分なくらい、温かい。しかし、これがこのまま深夜まで続くだなんて到底考えられず、予報通りにきっちり氷点下まで気温が下がるはずだ。これは結露まつりの予感しかしない。
空気が寒いのはなんとか耐えられても、結露がポタポタ落ちてきて、濡れて寒いのは耐えられない。なのでペグ打ちはしっかりと、しっかりと。
16:52
改めて、テント完成。
根城をこしらえたことで、ご満悦だ。
実はこのテント、買ってきてから開封したのが今回が初めてだ。アウトドアの本を読むと、口が酸っぱくなるほど「テントや装備品は、実際に使う前に家で組んでパーツの不足や作り方の確認をしておくこと」と書いてある。なので、いきなり実戦投入というのはだめな見本だ。
でもまあ、今回はうまくいった。テントを立てるのは慣れているんでね。これが特殊な構造のテントだったら難儀したかもしれないけれど。
ご覧の通り、狭い。
横幅もさることながら、背丈も低いからだ。
入り口から右側を寝るスペース、左側を荷物スペースに振り分けてちょうど1名分のテント、といったところ。しかし、寝るスペースのところにあぐらをかいて座ると、テントの壁が頭にぶつかるのだった。このテントの場合、真ん中に座らないと頭がぶつかる。
しかしそのかわり、このテントはコンパクトだ。寝袋よりも小さくまとまるのだから、なんだか不思議な存在だ。
テント内部。
右にウレタンマットを敷き、寝床にする。左はザックやら買ってきた食料品やらを並べている。
ウレタンマットは、昔はアルミが表面に貼り付けられた分厚いものだったけど、今のものは随分コンパクトになった。この「生卵が入っているパックのような凹凸がある黄色いシート」がマットだ。モンベルの「フォームパッド」という商品。
https://webshop.montbell.jp/goods/list.php?category=229000
凸凹している分、薄い。折りたたんでも、昔ながらのマットよりも小さい。
こんなもの1種類しか存在しないと思いきや、モンベルは様々なサイズのパッドを売っている。
長さが90cm、120cm、150cm、180cmの4パターン存在する。
多くの大人であれば、180cmのパッド一択でしょう?と思うだろ?僕もそう思う。でも、今回のために買ったパッドは、150cmのものだった。
理由はシンプルに、案外コイツは値段が高いということだ。もちろん、サイズが大きくなればなっただけ、お高くなる。ちなみに150cmのものは、2021年5月時点では5,280円する。イメージとしては、その半額くらいで買えそうなのに、ぎょっとさせられる。
あと、当たり前だけどサイズが大きくなればその分だけ、折りたたんだときにかさばる。ザックに外付けで縛り付けるにしても、大きいのは邪魔だ。小さいにこしたことはない。
ただその分、150cmにすると長さが足りない。体がはみ出す。ではどうするのか?
「肩から上は、どうせ何か枕でフォローできるよね?パッドはいらないよね?」
という発想だ。おう、そういうことか。極限まで絞り込むねぇ。
じゃあ、120cmはどうだ?さすがに全然長さが足りないだろ?
「だいじょうぶです、足の部分にザックを置いて、その上に足を乗せればよいのです。どうせテントは狭くて荷物置き場って殆どないでしょ?体の下に置けばよいのです」
おおう。そこまで省略するか。
僕は、「枕があればいいじゃない」説までは乗れるけれど、「ついでに足元も省略できるじゃない」説にはさすがについていけなかったので、150cmだ。
90cmというハードボイルドな寸法は、もはや肩からケツまでの部分が地べたから離れていればいいよね?という発想だ。まだまだ、そういう世界に到達するまで、僕の道のりは長い。
一応家からは、自炊用に、ということでこれだけのセットを持ち込んでいた。たったこれだけ、とも言える。3泊しようというのに。
単に、荷造りしている際に目に止まったものをザックに詰めただけだ。「これで足りなかったらどうしよう。ひもじい思いをするのではないか?」なんて心配はいらない。小梨平には食堂があるし、他にも上高地界隈は食事に困らない。(夕食だけは、キャンプ場の食堂を利用するか、自炊するかの二択しかない。朝食昼食は選択肢がいくつもある)
缶詰のパンは、会社から貰ったものだ。非常食として備蓄されていたものだけど、賞味期限切れになるということで払い下げられたものだ。なので、当然こいつは賞味期限がバッチリ切れている。しかし僕の体験では、少なくとも賞味期限2年オーバーでも食べられた。今回もたぶんだいじょうぶ。
全てのキャンプ準備が完了したので、お風呂に入りにいく。
実は上高地には何か所か、入浴できる施設がある。
上高地ルミエスタホテル、上高地温泉ホテル、上高地アルペンホテル、そしてここ・小梨キャンプ場。
どこもトリッキーな外来入浴受付時間だ。「朝7時から10時までと、12時半から15時までだよ」というところとか(上高地温泉ホテル)。
夕方入浴したい、と思ったら、小梨キャンプ場(12:00から19:00まで)しか選択肢はない。
でも、そんな便利な風呂場がテントのすぐ近くにあるというのはありがたいことだ。しかも600円で、石鹸などの備品あり。タオルさえあれば入浴可能だ。最高かよ。
17:25
受付でお金を払って、「小梨の湯」に向かう。この時間は結構混んでいるようだ。テント泊の人、ケビン泊の人、そして山から下りてきた登山客。
この時刻になると、食堂はラストオーダー時間が過ぎている。もちろん僕は食堂でご飯を食べていないので、今晩は自炊確定だ。風呂上がりに売店に立ち寄って、何か見繕うことにする。
なんだ、何を食べるのか、どこで食べるのか、いつ食べるのかって選択肢がいっぱいあるじゃないか、って?選択肢がない生活を目指してこの地に来たのに、ここでも選択肢はいっぱいだ。
でも、ここならばダイナミックに自分の判断で生き方を変えることはできない。日が暮れたら寝なくちゃいけないし、夜が明けたら起きなくちゃいけない。その大前提があるなかで、何を食べるかなんて些細なことだ。少なくとも今は、そう思える。
脱衣場。
お風呂に入るときは混雑していたので、風呂から出る際に人がいないタイミングに撮影。
お風呂は、ちょっと熱めの温度で、たっぷりと深い湯船で入りごたえのある湯だった。とても気持ちがいい。
今回はキャンプ療養だけど、湯にしっかりと浸かると気持ちが落ち着くのはどこでも一緒。今回も、30分くらいかけてじっくりと心を解きほぐした。
(つづく)
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