10:48
前方に建物が見えてきた。
上高地から梓川を遡上して、最初のポイントとなる地点、明神だ。
建物は、明神にある一軒宿、明神館。
一般的に、「上高地ー明神-徳沢-横尾」はそれぞれが1時間ずつかかる、と言われる。すごくざっくりとしているけれど。
今回、小梨平を出発したのが10:10なので、1時間の行程を40分に縮めたことになる。軽装だし、独りだったということもあってペースが早かったのだろう。あと、バスターミナルからキャンプ場までの10分を省略しているので、実際に僕の足だと、上高地-明神が50分といったところか。
10:49
明神館。
登山をするにも観光をするにも中途半端な場所ではあるが、上高地の高級ホテルに泊まるのはちょっと、という人はここまで足を伸ばして泊まるのもありだ。
1泊2食付きで11,000円から(2021年4月時点)。二段ベッドの相部屋になる。
ということは、河童橋近くの西糸屋山荘別館の10,000円から、よりはお高い。値段重視ならば、西糸屋山荘別館を選んだほうがいい。山に分け入った場所にある宿なので、「観光地物価」ではなくなるかわりに「手間賃」がかかる。
明神館の公式サイトを見ると、
「パワースポット明神のパワーの強いのは、午前7時ころまでです。」
と書かれている。パワースポットだったのか!知らなかった。
山の中とはいえまだここは下界の余韻を残している。その証拠に自動販売機もある。つまり、電気が常時あるということだ。
500mlのペットボトルは、コーラもお茶も水も等しく250円。しっかりと山ン中価格になっている。
そもそも、起点の上高地そのものが山の中にあるので、そこからさらに奥にあるここで割高価格なのは当然だ。
店頭の黒板には「明神カフェ」と書かれていた。
明神カレー1,000円、岩魚定食1,500円、ソフトクリーム400円など。
10:49
で、これが明神カフェ。渋い。
カフェといっても、山小屋の土間だ。おそらく朝晩はここが宿泊者の食事場所になるのだろう。
ガラスケースには、Tシャツやバンダナなどのグッズ類が売られている。
Tシャツって欲しい人、いるものなんだな。僕は全くそういうのに興味がないので、素通りする。ご年配の方々が好むのだろうか?
テーブルの上にメニューがあったので撮影しておいた。
食べ物は至ってオーソドックスな山小屋風。
カレー、うどん、そば、おでん、牛丼など。
岩魚定食や岩魚の塩焼きがあるのは、橋を渡った向かいにある嘉門次小屋の岩魚塩焼きが有名だからだろう。
嘉門次小屋で岩魚を食べてもありきたりすぎるので、こっちで岩魚を食べてもいいな・・・という気持ちもあるが、嘉門次小屋で岩魚を食べたことがないのでここはパスする。
生ビールがサイズに応じて4種類ある。すばらしい。
小、中、大、特大。
特大は1,000円。一体どれくらいのサイズのものが出てくるのだろう?
ペットボトル500mlで250円するのだから、ビールで1,000円となると・・・えーと、よくわからない。
お酒が飲める方はぜひここで特大をどうぞ。
でも、ここでガブガブお酒を飲んだら、その後の行程に支障が出そうだけれど。
10:52
明神岳が木々の合間から見える。
先ほどと比べて見え方が随分変わった。正面に見えているピークが明神岳の●峰に相当するのか、僕にはわからん。1~5まであるどれかなのだけれど。
山小屋の前を、二人組のおまわりさんが巡視していた。
特に犯罪があるわけじゃないけれど、こうやって見回りを行っているようだ。お疲れさまです。上高地に駐在所や派出所があるわけじゃないので、バスターミナルのあたりから歩いてやってきたのだろう。
10:54
「朝焼けの宿 明神館」の看板の前で記念撮影。
サングラスをして、腹が出ていて、帽子をかぶっていて随分怪しい人だ。しかもザックがオレンジ色で目立つし。
こういう水たまりを見かけると、「おお!」と思わずカメラを向ける。
でも、後で見返してみると、あまり大した写真にはならないものだな。
10:56
おっ、ニホンザルが目の前を横断。
人の存在に全く臆することなく、堂々と通り過ぎていった。
「明神よさらば!我が代表堂々退場す」
と国際連盟を脱退した松岡洋右ばりの態度だった。
と思ったら、あれれ、次から次へとサルが現れた。
そうか、群れをなして生息する生き物なので、一匹だけでなくたくさんいるのか。
それにしても大きいのから小さいのまでいろいろいて、見ていて面白い。動物園のサル山にいるのとは違う、自分と同じ地面に立っているサルは「僕ら人間と同じ生き物」という実感があった。
ときどき、山道を自動車で走っているときにサルを見かけることがある。
そのときは、大抵あちらさんは歯をむき出しにして、キー!と吠えて敵意を剥き出しにする。
野生のサルというのはそういうものだ、と思っていたので(地獄谷温泉の、温泉に浸かるサルを除く)、こののどかな光景は心が和んだ。
とはいえ、近づきすぎてはいけない。通りすがりの観光客、登山客はみんな遠巻きに囲んで、写真を撮影していた。
こういう馴れ合いの関係が続くと、いずれサルが人を襲って食べ物を奪ったり、建物の中に侵入して狼藉を働くようになってくるかもしれない。遠巻きで観察する、という行為自体が良いのかどうか、ちょっと僕にはわからなかった。標高が高い山で、雷鳥を観察するのとはわけが違うので。
(つづく)
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