13:02
特急スーパーあずさは松本駅に到着。約3時間の道のり。
松本に到着すると、俄然旅情が湧いてくる。
新宿駅を旅立つ時は、まだ都会のザラザラした触感が残っている。「さあ、旅だ」という気持ちにはならない。それは甲府を過ぎても続いていて、まだ都会の重力圏から脱出できていない気がする。
それが、松本駅を降り立った瞬間、一気にモードが切り替わる。ガッ、と。
旅だ、という楽しい気持ちというよりも、「ここまで来た以上、『やっぱやーめた』と後戻りはできないぞ」という決意だ。
何度も言うけど、僕の場合「選択肢が少なければ少ないほど、その環境下で楽しめる」タイプだ。オープンワールドの世界では、選択肢が多すぎてツラい。
ホームからは、ちょうど常念岳や蝶ヶ岳といった北アルプスの山々が見える。もう今の僕には、あそこに向かうしかないのだよ。
ようやく、ここで少し気持ちが解き放たれた。
松本駅で、松本電鉄上高地線(現:アルピコ交通上高地線)に乗り換えだ。上高地線の終着駅、新島々駅まで行ってから上高地行きのバスに乗り、そして到着したところが上高地バスターミナルだ。
当たり前すぎることを言っているな、我ながら。この僅かな文章の中でどれだけ上高地を連呼しているんだ?
でも、つまり「ここから上高地まで、そしてキャンプ場まで、完全に地続きかつ心理的ハードルが低い状態でスルスルと前進できる」ということだ。これもまた、「あれこれ思い悩むことがない」ということで、僕の心を落ち着かせた。もう、キャンプ場までまっすぐ一直線だ。
昔は、松本駅すぐ近くのバスターミナルから上高地に向かう直通便があった。しかし今は廃止されてしまったようだ。おそらく、ローカル路線の極み・上高地線を存続させるためにも、なんとしても電車に乗って欲しいという思いがあるのだろう。
上高地線のホームは、JR大糸線と同じ島式ホーム上にある。このため、改札を出ないでそのままJRから乗り換えることができるのだけど、チケット売り場自体は改札の外にある。面倒でも、一旦改札を出ることになる。
JRとの直通きっぷは特に売られてはいないようだ。
松本駅、改札を出たところがきれいになっていた。西口方面には、コンコースがのびていた。昔はもっと地味な出口だったのに。どんどん進化していくな。
13:09
ご飯を食べよう。お昼ごはんはまだ食べていない。
今晩はキャンプだ。オートキャンプをやるわけじゃないので、「うぇーい!日が暮れたら焚き火だ!バーベキューだ!」という世界線に生きてはいない。日が暮れるまでに夕メシの仕度は済んでいないといけない。
あんまりお昼ごはんが遅くなると、夕ごはんに支障がでる。だって、たぶん18時くらいには遅くとも食事をとることになるから。急がなくちゃ。
松本駅の駅ビル3階がレストラン街になっている。そこに「松本からあげセンター」という素敵な名前のお店があって、この界隈では有名なご当地グルメ「山賊焼き」が食べられる。ぜひここで山賊焼きを食べて、これから山賊になる決意を新たにしようと思った。
しかし、お店の前まで行ってみたら、山賊志願者が店の外にまで溢れていて断念せざるをえなかった。繁盛店だったのか。しまった。
しょうがないので、お昼ごはんを諦めて上高地行きのチケットを買う。
新島々まで30分700円。
電車バス乗継(割引)運賃、というのがあって、上高地までなら電車バス込みで2,450円となる。当然、この乗継運賃でチケットを買う。
あと、片道2,450円なのに対し、往復が4,550円だ。結構気持ちが揺らぐ割引額で、「それだったら行きも帰りも同じルートにしよう」と考える。
とはいえ、今回は片道きっぷを買った。帰り道についてはフリーハンドにしておきたかったからだ。
なにせ、今回は帰京する日を明確に決めていない。一応3泊4日を予定しているけれど、天気や気分によっては長引いたり、短くなったりするかもしれない。
そんな時、上高地から帰京するルートはいろいろ選択肢がある。
新宿や東京駅八重洲口に向かう高速バス「さわやか信州号」は昼便、深夜便が存在するし、長野駅に向かう高速バス「せせらぎ号」がある。そして新島々経由の松本電鉄もある。
選択肢は少ないほうがいい、と思っている僕ではあるが、さすがに「もう帰りたい・・・」となったときには即座に帰れるようにしておきたい。ここだけは選択肢が欲しい。そんなわけで、片道。
13:12
再度、改札内に入る。松本駅には、改札内にお土産物を売るお店や売店がある。駅のホームには売店もある。買い物には不自由しない。
おっ。
さっき「松本からあげセンター」で食べそびれた、「山賊焼き」を駅弁で発見したぞ。
よし、これをお昼ごはんにしよう。
13:14
駅弁を食べる場所を求めて、そうそうにホームに下りる。次の新島々行きは13:28分。さっと食べる時間はありそうだ。
ちなみに上高地線はローカル電車とはいえ、通勤電車型のロングシートを採用している。そして、ガラガラというわけではなく、混まない程度にはお客さんが乗る。なので、電車の中で駅弁、というのはちょっと難しい。
あ、ちなみに「電車」という表現は間違いではない。ちゃんと電化されているから。
空いているベンチを求めて、ふだんは足を踏み入れたことがないホームの奥まで歩いてみる。
ここは、左側が上高地線用のホームで、2両編成しかない電車のためにホームは短い。一方右側は大糸線に通じるホームなので、長い。
あれれ、ここってこんなに奥が深いのか・・・?
と思いながら歩いていくと、ベンチを発見。そしてそれと同時に、「蕎麦」の文字も。
へえ、こんなところに立ち食い蕎麦屋があるのか!
お店の名前は山野草、というらしかった。せっかくだから、ここで蕎麦を食べていくことにした。
長野県って、こういう「駅の立ち食い蕎麦」も十分にうまいから困るよな。東京の立ち食い蕎麦は、相変わらず麺がまずいお店が駅ナカ・駅ソトを問わずゴロゴロしているけれど。
さて、ここで蕎麦を食べちゃったので、さっき買った山賊焼き弁当は宙に浮いてしまったぞ。
しょうがない、山賊焼き弁当は今晩のご飯だな。
キャンプなので、こういうところが融通がきく。むしろ、晩飯をどうしようかと悩む必要がなくなり、むしろスッキリした。へっへっへ、またこれで一つ選択肢が減ったぜ。
(つづく)
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