13:27
嘉門次小屋で岩魚を食べたあと、「遅くなって申し訳ありません」とつぶやきつつ小屋の奥に向かう。
嘉門次小屋のお隣さん、という位置関係で、穂高神社奥宮がある。
穂高神社そのものは、その名の通りJR大糸線穂高駅のすぐ近くにあるお社だ。
本宮そのものはお詣りしたことがないけれど、今回は奥宮にお詣りしよう。
御神体は穂高連峰だということなので、より近い奥宮のほうがご利益ありそうだ。
いや、ご利益とか言ってる時点で俗にまみれすぎてお前ダメじゃん、という気がするけれど。
穂高神社奥宮は、明神池という明神岳山麓の池に面して本殿が設けられている。
ちゃんと社務所もあって、お札などを授与していただくことができる。
13:28
ただし、本殿から先、湖畔に行こうとすると拝観料なるものがかかる。大人300円。おう・・・。
拝観料惜しさに、本殿脇から明神池をチラ見してそれで良しとする。
明神池は神秘的で素晴らしいやに聞くけれど、拝観料を払ったからといって、「さらに奥の宮」みたいな建物が建っているわけではない。純粋に湖畔に行ける権利料だ。
ちなみに明神池には船を浮かべることができ、ここで結婚式を挙げたらその船に乗れるようだ。それにしても、ここで挙式するとなると大変だ。若い新郎新婦は良くても、家族親族は一体どうすればいいのやら。さすがに、その場合はマイクロバスかなにかで送迎があるのか・・・?いや、そんなことはないか?
時間をたっぷりと取ったことだし、改めて「山のひだや」に併設されている喫茶店、「 かふぇ・ど・こいしょ」を目指す。
目指すもなにも、穂高神社奥宮から100メートルも離れていないのだけれど。
「専属パティシエールがつくるオリジナルスイーツ」なんて書いてある。すごいな、山小屋にパティシエール(女性の菓子職人)がいるのか。
焼き菓子とか、日持ちするものだけ扱っているのかと思ったけどとんでもない。ガチなものをガチで自作してるぞ。ガトーショコラ、シフォンケーキ、バナナタルトが今日はあるらしい。びっくりだ。
入り口の黒板には、「バナナタルト」の文字に線が引っ張られ消されていた。あ、そうか、売り切れが当然あるよな。
営業時間は「AM7:30-PM2:30オーダーストップ、PM3:00終了」と書いてある。あくまでも宿の営業の合間に、というわけだ。それにしても朝7時半からやってるカフェとは!
13:31
先ほどは人がいなかったので、「あれ?やっていないのかな?」ということでお店に入らなかった。でも今は窓際に一組お客さんがいる。よかった、多分営業をやっている。
建物の外観は渋くて、ガラス張りの店内でも薄暗く見えた。しかし中に入ってみると、ずいぶんと開放感のある明るいお店だ。外から見た景色と中から見た景色は大違いだ。
ほー。
ランプが天井から吊り下げられている。
ランプ風のライトではなく、ホンモノのランプだ。夜になるときっと幻想的に、ほの暗く周囲を照らすのだろう。これだけたくさんランプを吊るしているくらいだから、そうでもしないと明るさが確保できないのだろう。
いいね、こういう暗さ。
今の家は部屋の隅々まで明るくしすぎだ。暗いところがあったらダメ、といわんばかりだ。
僕は最近、陰影というのを部屋に取り込みたいと思っている。なので、できるだけ自分がいる空間以外は明かりを消して暗くしている。LDKであっても、リビングにいるときはダイニングを消す、といった感じで。
周囲を暗くすることで、情報量が減る。それは心の落ち着きを導いてくれる。特にいまのLEDの明かりは刺々しいので、暗い方が助かる。
13:32
明神なので、嘉門次小屋に倣ってこのお店でも岩魚を焼いております・・・なんて日和ったことは一切ない。
飲み物と、ケーキ、それだけだ。
お店の方曰く、アイスコーヒーは置いていないのだそうだ。電気に制約があるので、「冷やす」ということをやっていないからだという。
いいね、そういう割り切り方。むしろ好きだ。
ひだやオリジナルブレンド焙煎ドリップ珈琲のオリジナルを頼む。800円。
ありゃりゃ、バナナのタルトだけでなく、ガトーショコラも売り切れていた。
ということで、必然的に「シフォンケーキ(いちごジャム添え)800円」をオーダーすることになる。
早い時間にここを訪れないと、売り切れるので注意だ。
13:39
この空間は、ランプ、鉄の大釜、手入れされて艷やかな木の机などフォトジェニックだ。
ケーキの到着を待っている間、不審者のようにウロウロしながら写真を撮りまくった。
そしてこれ。
シフォンケーキとコーヒー。いや、山小屋とは思えないクオリティ。
シフォンケーキなんて、フワッフワですよ。シロウトが作って、小麦粉のダマがケーキの断面にできているようなものじゃないですよ、手練の、熟練の仕業ですよこれ。うまい。まいった。これは日々ここに通ってもいいレベル。
恐れ入ったなあ、上高地から徒歩1時間の山奥にこんなおいしいシフォンケーキが出現するとは。
あと、「ううむ」と唸ってしまったのがコーヒー。これも「えっ!?」と二度見してしまうレベルでうまかった。
たぶん珈琲豆がすごいというよりも、ドリップに使っている水がすごいんだと思う。水だけでチートモードになってる。コーヒーのいろいろな味の要素をしっかりと抽出しつつも、すっと口の中に入り喉に落ちていく。その感覚は目が覚める思いだった。
あ、目が覚めるのはカフェインだからか?
いや、そんな冗談では済まないほど、気に入った。
以前、北海道の菊地珈琲でわざわざ自家焙煎珈琲豆を買って東京に持って帰ったのに、東京で淹れてみたら全然違う味になってションボリしたことがある。ドリップのうまい・へたがあるとしても、そもそも水が違うんだと思う。
窓際の席で、珈琲とシフォンケーキをいただきつつ、ここでも読書。
今日は本当にあちこちで読書を繰り広げている。まあ、それだけ「長時間の読書に不慣れな体質」になってしまった証拠ではある。今回の上高地滞在で、今一度活字を読む楽しさを思い出したい。
それにしても優雅な時間だなぁ。
今日の食費も随分優雅だけど、財布のことはひとまず気にしないでおく。
(つづく)
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