閉鎖病棟・上高地【小梨平ソロキャンプ2018】

18:06
小梨平キャンプ場の梓川沿いのベンチに陣取る。

ガスストーブをはじめとする調理器具、食材、ライト、防寒具など一式全部持ち込んだ。今日はこれから、寒さでギブアップするまでここで過ごすつもりだ。

お風呂にも入った、買い出しもした。あとはテント付近で食事の準備をしてゆっくり過ごせばいいはずだ。でもね、いくらここが上高地という地上の楽園であっても、テントの中に入っちゃえばどこでも一緒なのよ。

だから、この空間を最大限満喫するためには、ここで過ごしたい。「ああ、もう何も見えなくなっちゃったよ」と真っ暗になったとしても、風を感じていたい。寒さを肌で感じていたい。

つまりだ、貧乏根性ゆえの「絶景満喫」なのだった。

岳沢に乾杯

でも、貧乏根性ゆえのこの絶景。贅沢だ。岳沢を見上げながらの、乾杯。

本当に贅沢な人たちは、こんな絶景を尻目にもう寝る準備に入っていたりする。今更いちいちこの景色に感動なんてしていられないのだろう。

その境地に達するまで、あと何回ここを訪れればよいのだろう?いや、多分何度訪れても、絶景を満喫し続けるだろうな。僕はそういう性分だ。

18:46
谷間なので、「ああ、日が暮れてきたな」と感じ始めたらあっという間だ。さーっと暗くなっていった。ランタンのちからが必要だ。風情重視で、ライトなしで行くぞ!と頑張り続けるのはキツい。ましてや、読書をしているんだから。

人間贅沢なものだ。久しぶりにキャンプをやると、ランタンやヘッドライトの光が届かない暗い部分があるとかなり不自由に感じる。隅々まで明るいオフィスや屋内に慣れすぎているからだ。手の届く範囲にもかかわらず「薄暗い」とか「暗い」というのが、結構違和感を感じる。許されるなら、周囲数メートルをこうこうと照らしたいくらいだ。

もちろんそんなことは望んでおらず、むしろこの不自由さ、暗さを楽しんでいる。でも、「明るくないと心地よくない」という自分の感覚に対して、改めて驚かされる。

19:03
「驚かされる。」なんて自己分析やってる場合じゃねえ!

寒いんだよ、寒くなってきたんだよ。

日が沈むと、あっという間に暗いやら寒いやら、大自然の猛威が我が身に襲ってくるのだった。

貧乏根性とはいえ、これ以上ここにいるのはキツい。自分のテントに退却だ。ザックに全ての荷物を投げ込んで、この場を脱出する。

19:10
テント内で、小梨平キャンプ2日目夜の部が続行。

今日の夕ご飯は、売店で買ってきた「信州王様辛味噌ラーメン」。これだけじゃなんだか物足りないので、冷凍の「ソーセージアソート」を入れて、肉だくさんのラーメンにしようと思う。そして、さらにアルファ米を炊く。贅沢だ。

19:12
テント内でお湯を沸かそうと思う。

昨晩もやったが、本当はNG行為だ。酸欠で死ぬか、一酸化炭素中毒で死ぬか、お湯をこぼして火傷をおって死ぬか。いずれにせよ、「ヘルテント」といえるよくない未来しか見えてこない。

なので、緊張感をもってこれからのミッションに取り組まねばならない。

まず、ベンチレーター。

山用のテントには大抵、テントの横っ腹に穴が開いている。これをベンチレーターと呼ぶのだけれど、酸欠を防ぐための穴だ。ここをしっかりと開放しておく必要がある。

mont-bellのステラリッジテントには、フライシートとテント本体で二層のベンチレーターがついているのだけれど、完全密閉はできないようになっている。写真で見ての通り、テント本体のベンチレーターはメッシュ地だ。そのかわり、フライシート側のベンチレーターを開放しておく。あと、テントの入り口も少し開けておく。

お湯をひっくり返して火傷を負う、とか床が水びたしになる、というのも最悪だ。これはもう、「ながら作業」をやめ、しっかりと湯が湧いているのを見続け、見届けるしかない。

現場猫が言うように、指差しと声出しで確認をすることが大事だ。

そのかわり、人差し指を耳の脇まで上げ、そこから「ヨシ!」と指差し確認をするわけにはいかない。それをやると、鍋をひっくり返してしまうから。

19:21
お湯をアルファ米、ラーメンにそれぞれ注ぎ、ガスの火を消してようやく場を支配していた緊張感がほぐれた。

ベンチレーターをいそいそと閉める。なにしろこのテント、生地が白いうえにランタンがこうこうと灯っている。虫がそれを放置しているわけもなく、続々と僕のテントにご挨拶に訪れるのだった。やめろやめろ、虚礼廃止だ。テントの中に入ってくるな。

ベンチレーターは巾着袋のように紐で絞り上げて閉めているのだけど、その僅かな肛門的な穴のところから虫が入ってくるのでまいった。

一度テント内に入り込んだ虫は、「いずれ気が向いたら出ていってくれる」ということはない。うなぎを捕獲する罠と一緒だ。一度中に入ったら、まず出られない。こうなったら、相手を迎撃するしかない。

虫と格闘しながら、草もちを食べる。うん、うまい。

19:27
甘いものを先に食べ、塩っ辛いものを後に食べるという「デザートと主食の順番が逆」パターンになってしまった。でもそれが上高地流。

さて、ソーセージたっぷりの味噌ラーメンと田舎ごはんの夕食だ!もちろん、まだノンアルコールビールの残りはあるぜ。今日は3本買ってあるので、不足はない。

不思議なものだ。

僕は夕ご飯にカップラーメン、ということは100%やらない。なんだか物足りないからだ。満腹にならないから、というよりも、気分が満たされない。

しかし、テントの中でこうやってカップラーメンを食べると、なんという贅沢な料理なことよ。

逆に、ここで高級料理を食べたいだなんて思わない。むしろ、こういうのがいいんだ。

で、ラーメンの中からソーセージが出てきたらもう、「いよっ!待ってました!」と拍手喝采ですよ。

拍手喝采といっても、片手は箸、片手はラーメンどんぶりを持っているので拍手ができない。心のなかでグッと握りこぶしを作ってガッツポーズ。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください