08:27
上高地温泉ホテルにやってきた。
以前ここで一泊したことがあるが、この「へべれけ紀行」の連載対象にすらならないくらい、はるか昔の話だ。だから、2000年よりも前。
その時は、兄貴との二人旅だった。特に何の計画もなく、1泊目を八ヶ岳東山麓の本沢温泉に泊まり、次の日はどうするかねぇ?という話になって、兄貴から「上高地に行こう」と言われ、この地を訪れた。僕の人生で初上高地がそんな体験だった。
そのときもGW中だった。特にあてもなく上高地に降り立ち、バスターミナルにある旅館案内所で「今晩安く泊まれるところ、ないスか?」と聞いてこのホテルを紹介された。今思えば、上高地に宿の予約なしでやってくるというのは随分無謀だと思う。しかも、値段がそれなりにする場所なのに。「帝国ホテルしか空きがありません」と言われたらどうしていたんだろう。
で、その人生初上高地でこのホテルに泊まったのが特に記憶に残っているのは、1泊2食付きで1万円で泊まれたからだ。そのかわり、山側の狭い部屋だった。ビジネスホテルばりのツインルームだった。でも、ビュッフェ形式のメシは他の人と一緒で、「なんてラッキーなんだ俺たちは」と兄弟揃って喜んだものだ。
夜中、眠いのを我慢して、F1モナコGPを見た記憶がある。1997年かな?
もちろん今は1万円で泊まれるわけはなく、だいたい1泊20,000円くらいはする。
上高地エリアでは数少ない温泉だ。
焼岳という活火山がすぐ近くにあるのに、長野県側には温泉が恵まれていない。岐阜県側は、新穂高温泉郷ということでいくつも温泉地が点在している。
ホテルの前には足湯があるのだけれど、お湯が張られていなかった。
ここの日帰り温泉は、まず建物脇の自販機コーナーにある入湯券自販機でチケットを買うことからはじまる。一人800円。
チケットを買ったら、日帰り入浴専用入り口から建物の中に入っていく。
左側に売店の壁、右側にロッカーが並ぶ。
宿泊客や買い物客と動線を完全に分けている。ドサクサに紛れてお金を払っていない人が入浴しちゃった、なんてことにならないための工夫だろう。
ちなみに入浴の受付時間は07:00-09:00、12:30-15:00。実際に入浴できるのは、受付終了から1時間後だったと思う。
この狭い廊下を進んでいくと、日帰り入浴の受付がある。そこでチケットを従業員さんに渡して、中に入る。くれぐれも、四つん這いになって受付カウンターの下をくぐり抜けよう、だなんて悪いことをしてはいけない。
梓の湯、と名付けられたお風呂に入る。
温泉の成分表。「カチオン」と「アニオン」という分類にされているのがちょっと見慣れない気がするけど、どうだっけ。泉質は「単純泉」。すぐ近くに活火山があるからって、白濁していたり赤茶けていたり、見た目ド派手な温泉が湧くというわけではない。
そんなわけで、適応症の項目を見ても、まあいわゆるお風呂に入るのと一緒デスネ、という内容になっている。
いや待てよ、「飲用」のところを見ると、「神経衰弱、ヒステリー、興奮型不眠症、慢性皮膚病」と書いてある。これは単なる湧き水を飲んだのとは効果が違うっぽい。
今の僕は神経衰弱・・・なのかなあ?だったら、飲んだほうがよかった。あとになって気がついた。
09:36
小一時間、朝風呂を楽しむ。まさか上高地にやってきて、だらりと朝風呂を楽しむことになるとは思っていなかった。これぞ、「やることがない人ならではの優雅さ」だ。山に登るぞ!とか観光するぞ!と気合が入っていたんじゃ、朝風呂なんてできない。
そして、しつこいくらい繰り返すが、この後夜までやることないんだよね。暇なんだよね僕。そして、その気になれば今日テントを畳んで帰宅するという選択肢だって、ある。この「留まるも、引き上げるも自由」というのがますますいい。ホテルの予約があるので、今晩は確実にここに留まるんだ・・・という拘束がない。テント泊ばんざい。
実際問題、小梨平のテントは2泊分の料金しか払っていない。今晩分のお金は未払いだ。今晩も上高地に泊まるぞ、と決めれば受付で800円を追加で払えばいい。
完全に寒さから脱却して、リラックスしまくりで上高地温泉ホテルから出てくる。すると、正面には霞沢岳の勇姿。ゴツゴツした岩山で、見応えのある山だ。
写真左側の山が六百山、真ん中が三本槍、右側のピークが霞沢岳。
解説板が設置されていたが、「登る人はまれ」と書かれていた。上高地からダイレクトに登頂するルートがないからだ。
おーおーおー、雪渓が残ってるねぇ。
ホテルの前にベンチとテーブルがあったので、ここで読書タイム。
ホテルの売店でコカコーラゼロを買って、水分補給しながらの読書。ノンアルコールビールを飲みながら、というのはちょっと朝からやりすぎな感じがしたのでコーラで。
朝ごはんを食べていた頃は寒そうな格好をしていたけれど、ようやく少し薄着になってきた。
10:27
一時間ほど読書を楽しむ。
本を読んでいると、ぱらぱらと梓川下流から観光客がやってくる。みんな、河童橋を目指して歩いている。おそらく、大正池で一旦下車し、バスターミナルで集合ということで解散・各自自由行動になっているのだろう。
なので、団体旅行客と思しきバラバラのお客さんは、一方通行で下流からやってくる。上流から下流に向けて歩いていく人は、ツアー客はほぼいない。
見上げると焼岳。
今日は山頂付近に少しだけ噴煙が見えた。噴煙は火山のご機嫌と風向きの関係で見えない日もある。噴煙が見えたから今日はいい日・・・と思うことにしよう。このまま爆発しなければ。
(つづく)
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