15:41
小梨平キャンプ場の受付がある建物。
奥が受付で、手前の茶色い壁の部分は大浴場になっている。
看板には
「日本アルプス観光株式会社 森のリゾート小梨」
「ケビン 入浴 キャンプ 受付 小梨平食堂売店」
と書かれている。
上高地、という特殊な国立公園の中でも、株式会社が営業をやっているのか!と思うが、それを言い出すと河童橋界隈のホテルなども民間会社だ。別に特殊なことではないだろう。とはいっても、今から新規参入で営業をしたい!と申請しても、松本市なり環境省なり国土交通省なりから却下されるはずだ。
環境保全の規制が厳しくなる前にできた会社で、既得権益でここに会社があるのだろうか。いや、そうとは思えない。おそらく第三セクターか何かだろう。帰宅してから、この会社について調べてみた。
すると、情報が松本市の公式サイトにあった。
筆頭株主は松本市で30%。やっぱり、第三セクターだった。
面白いのが、二番目に「株式会社五千尺」の名前があること。これは、河童橋のたもとにある五千尺ホテルの経営母体だろう。
あと、三番目の株主の上條敏昭さんは、上高地から徒歩2時間のところにある山小屋、徳沢園の社長だ。そして、四番目の株主の「㈱燕山荘」は、北アルプス界隈にいくつも山小屋を展開している会社だ。
僕自身、燕山荘、ヒュッテ大槍という燕山荘グループの宿に泊まったことがある。
いい宿だった。
それはともかく、つまるところは地元自治体と、上高地周辺の宿泊施設による共同運営がこの「森のリゾート小梨」ということだ。
受付に向かう。
かなり立派な受付だ。
「入浴受付」「ケビン 常設テント受付」「持参テント受付」
の3つの窓口がある。
僕が今回、上高地を「自らの閉鎖病棟」として選択した理由には、もう一つ大事なことがある。
それは、「何を持参すればいいのだろう?もし、ものが足りなかったらどうしよう?」と、荷造りの時点であれこれ思い悩んだり、調査したりしなくて済むからだ。
今回は久々のキャンプ。きっと、「あっしまった、アレを持ってくればよかった」という抜け漏れがあるはずだ。あと、まだ夜は氷点下まで下がる厳しい季節で、寒さ対策が甘い、ということもあるだろう。
そんなとき、このキャンプ場はいろいろなレンタル品がある。足りなければ、借りればいい。
そして、売店がある。ほしければ、買えばいい。
これだけダイナミックな、日本最高峰レベルの絶景大自然の中だけど、あまり装備に心配しなくてもリカバリーがきく、というのは大きい。
特に今の僕のように、あれこれ選択肢があって悩む、とか、心配して悩む、ということを嫌っている状態だと、なおさらありがたい。
驚いたものだな、スマホの充電までやってくれるんだ。しかも100円。
受付してくれる時間が「朝6時から18時まで」というのが、いかにも山のキャンプ場時間だ。
今回、スマホの電源はほぼオフにしっぱなしなので、バッテリー切れの心配はない。ただ、デジタルカメラのバッテリーだけは心配だ。「すんません、モバイルバッテリーの充電もお願いできますか?」と声をかけたら、受付の人はなんと答えるんだろう?
キャンプ場の地図。
キャンプ場の中央を蛇行するかたちで中川が流れているので、ややこしい見栄えになっている。
地図右側が河童橋および上高地バスターミナル方面。地図左側が明神・徳沢方面。槍ヶ岳や穂高、涸沢を目指す人は右から左へと向かっていく。
地図は東が上を向いている、と思ってくれればだいたいあっている。
地図左に、赤字で「受付」という文字が書かれた建物が描かれている。これが今僕がいるところ。
で、人気エリアは梓川沿いのKとLだという。ここだと、テントからにょきっと顔を出せば、目の前に梓川、岳沢からの奥穂高岳・前穂高岳がバーンと見える。特に売店近くのKエリアは便利が良いということで、一番人気らしい。そういえば、さっき「うわ、混んでるな!」とテント村になっている光景を見て驚いた場所が、まさにKエリアだ。
で、僕は今回Bエリアの奥を陣取ろうと考えている。
キャンプ場の中央を横切っている道は、朝早くから登山客が歩く。できれば通りからは遠くにテントを張りたいものだ。というのも、特にご高齢のハイカーは熊よけの鈴をチリンチリンと鳴らしていることがあり、やかましいからだ。
それに限らず、テントの中にいると、無言であってもザッザッザッと歩く音というのはかなり大きく聞こえる。安眠を確保するためには道から遠いに限る。夜は、テント泊の人たちがトイレに行くための通路にもなるわけだし。
受付を済ませると、テントにくくりつけるための札をもらう。何月何日から何日まで利用しますよ、という料金回収済みの証明だ。
あとで、17時ころになったらここのスタッフさんがテントサイトをくまなく歩き回り、各テントの札をすべてチェックしていた。札がなかったり、日付が古かったら、無賃宿泊者ということで料金回収の対象になる。
それと別に、営業時間を書いた紙も受け取った。
食堂 7:00-13:40、16:00-18:00 ※ラストオーダー17:20
売店 7:00-18:00
風呂 12:00-19:00 ※最終受付18:30
選択肢が少なくて気楽なキャンプ生活ではあるけれど、そんな中最大の選択肢が、「夕ご飯をどうする?」問題だ。食堂は18時まで、しかもラストオーダーは17:20と超絶早い。食堂でご飯を食べるのか、それとも売店で何か買って、テントで食べるのか。それを夕方の早い時間に決めてしまわないといけない。
あと、風呂の時間も最終受付が18:30だ。これも早い。しかも、受付の人曰く、「最終受付の時間近辺は混みますよ」とのことだった。混むのを避けるには、もうちょっと早い入浴の方が良さそうだ。
何を気にしているのかというと、オートキャンプではない登山装備のソロキャンプの場合、日が暮れるとそこから夜明けまではひたすら長い夜がやってくるということだ。メシにしろ、風呂にしろ、本当はもっと後ろの時間で、ゆっくりと夜を満喫したいところだ。しかし、施設の運営は日が暮れる前に全てが終了してしまう。
こりゃあ、夕ご飯は自炊かなあ、という気がしてきた。自炊、といっても、ガスストーブとアルマイトの鍋くらいしかないので、簡単な温め程度のことしかできないけど。でも、自炊だと日が暮れてからでものんびりメシの時間を楽しめる。
受付脇にある自販機。
ペットボトル飲料が160円なので、場所の割にはぎょっとする価格設定になっていない。むしろ良心的だ。これがあるので、24時間何か飲みたくなったら買いに来られる。ただ、ノンアルコールビールが置いていないなら欲しいものは何もないけれど。
15:47
梓川河川敷のエリアを視察するため、川沿いを歩いてみる。
梓川が美しい。
中洲には、ケショウヤナギの木が生えている。
一方、キャンプ場側にはカラマツの木が生えている。
これは護岸のために人間が樹林したものだ。上高地だからといって、何でも天然の自然というわけではない。明治時代、徳沢を中心にこのあたりは牧場として開発された経緯があるくらいだ。
15:48
それにしてもテントが多い。
これだけ雄大な自然なのに、人間は密集する。
空いている空間があるな?と思ったら、全てそこは「テント設営禁止」という場所だった。
川沿いに陣取っているテントは、みんな一様に梓川に向かってテントの入り口が向いていた。まるで太陽の光をおいかけるひまわりのようだ。
同じKエリアで、梓川沿いからちょっとだけ中に入ったところ。ここも、みっちりとテントが並んでいる。
だいたい、登山用の軽量小型テントが用いられている。2人用のものが多いけれど、中には「頑張って運んできたなぁ」と感心させられる、オートキャンプにでも使うかのようなデカいテントの人もいた。ただしそれは少数派。
最近のキャンプのトレンドには全く疎いのだけど、テントの上にタープを張る、というスタイルのところがいくつもあった。流行りなのだろうか?
登山用のテントは、とにかく狭い。なので、靴をはじめとする荷物の一部をテントの外に出すしかない場合がある。その場合、雨が降ったらびしょ濡れだ。タープを張ってテントの前室を作るというのは、いい案だと思う。ただし、設営とバラシの手間がかかるし、荷物が重たくなる。今回みたいにソロキャンプの場合は、負担が増えるからそこまでは思いつかなかった。
この写真の手前に写っている黄色いテントは、「シングルウォール」と呼ばれるタイプのテントだ。つまり、雨・夜露避けとしてテントの上にかぶせるフライシートがないタイプのテントだ。小型軽量にできるので便利だが、その分生地がゴアテックス製だったりするので値段がすごく高くなる。
あと、テント本体とフライシートの隙間が空気の膜となって結露を防ぐ役割があるのだけれど、シングルウォールだとどうしても結露しやすい。あと、フライシートの隙間に靴を押し込むことができるのだけれど、それができない。テントの中で収納を完結させる必要があるので、よし悪しだ。
(つづく)
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