10:57
明神館から、明神橋に向かう道を歩く。
相変わらず平坦で歩きやすい道だ。崩落によって迂回したルート以外、殆どアップダウンがない。おかげで、ずっと微笑みながら周囲の自然を楽しむことができる。
しかも、背中のザックには、お財布と読みかけの本、その他ちょっとした荷物が入っているだけだ。軽い!近所にお散歩しにいくのと一緒だ。
これまで、上高地といえば重武装した上でドスドスと歩くことをイメージしてきたけど、そうでない瞬間が今まさにこれ。お日柄も良いし、ああ、なんて快適なんだ。
11:00
明神橋にやってきた。河童橋同様の吊り橋だけど、こちらの方が川幅が広く、橋が長い。
そしてなによりも、人が少ない。
いや、下界との結節点である上高地から1時間近くかかる場所にしては人がいる。みんなやるなぁ。
明神までやってくると、静かな自然の光景を堪能できる。いや、「堪能」という表現は月並みでイヤだな。しみじみと、自然が目に染みる。心に火を灯す。
なにしろ、この光景だ。
高圧電線とか護岸工事がない、のんびりした眺め。日本って、案外こういう眺めを気軽に楽しめないものだ。
度重なる大水被害が過去繰り返されてきたはずで、護岸工事がないというのは嘘だけど、ガチガチにコンクリートで固めた川沿いではない。それが目に優しい。
明神橋から下流、上高地方面を眺めたところ。
梓川右岸は石組みがあって、護岸工事はきっちりされている。このあたりは山小屋や神社があるところなので、大水で氾濫を起こされてはたまらない。
11:01
明神橋から見上げた明神岳。ほら、さっきと見た目が変わった。上高地からひたすらこの山を回り込んできたから。
見えているのは、明神岳5峰・・・かな?
明神橋を渡りきったところの川沿いに車道がある。
上高地の手前から梓川右岸にずっと車道があり、ここから先徒歩2時間の横尾まで車道が続いている。
こんなところまで車が、と風情の点では残念だけど、この界隈の小屋にとっては生命線だ。そして、そんな小屋を使わせてもらっている我々からしても、ありがたいライフラインだ。
そして同時に、暴れ川である梓川を護るための土木工事用の道でもある。
さきほどの明神館は、ここまで車で荷物を運んで、あとは人力で橋を渡って荷物を運搬しているのだろうか?最後の最後で、ちょっと大変だ。
11:02
明神から見て北東、長塀山方面。てっきり「ちょうべえやま」だと思っていたけど、「ながかべやま」と読むのが正解だと今更知ってびっくり。
この奥に、蝶ヶ岳がある。
以前蝶ヶ岳山荘に一泊したことがあったな。
蝶ヶ岳から見た涸沢は本当に素晴らしかったけど、未だに行けていない。今年もそう。
涸沢は標高が2,300メートル。上高地から800メートルも高い位置にある。気温が5度近く下がることになるので、多分今の僕の装備なら死ねる。行かなくて正解だ。
11:03
明神橋のたもとで日陰を探し、ここで小一時間読書を楽しむことにする。川の音をBGMに読書なんて、最高じゃないか。
で、取り出した本が「生涯投資家(村上世彰著)」。物言う株主・村上ファンドとして名を馳せた人の自伝だ。
山ん中で読むには俗な内容だけど、面白い。ライブドア株が盛り上がっていたころ、僕も株は売ったり買ったりしていたものだ。
12:32
1時間半ほど読書をして、ちょっと飽きてきたので河岸を移動することにする。
明神橋の近くの森の中にひっそりとある山小屋、「山のひだや」を目指す。
以前この山小屋の前を通ったとき、「古びた建物だな」と思ったものだ。実際今見ても、その印象は変わらない。板張りの建物は、長年の風雨で板の色にむらがある。
しかし、オンボロというわけではなく、しっかりと大事に手入れされているのも、わかる。
12:33
一泊2食付きで14,300円~(2021年時点)。
上高地の西糸屋山荘別館、明神の明神館よりもさらに値段は高い。ここは二段ベッドの相部屋ではなく、個室が用意されているのであくまでも「山小屋」ではなく「旅館」なのだろう。
黒板でしつらえた玄関は重厚。
ちょっと入りにくい雰囲気があるのだけれど、ここには「かふぇ・ど・こいしょ」というカフェがあるのだという。その存在は知らなかったのだけれど、今回小梨平のキャンプ場で初めて知った。
上高地から徒歩1時間。一休みするのにちょうどいい立地だ。
かふぇ・ど・こいしょ の入り口は宿とは別に、建物脇にある。ガラス張りの喫茶スペースが外から見えるのだけれど、明かりはなく、薄暗くみえた。人はいないようだ。あれれ、営業をやっていないのかな?
看板は出ているので、やっているっぽいけれど。
しょうがないので、後でまた出直そう。一旦、お隣の嘉門次小屋を目指す。
(つづく)
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