閉鎖病棟・上高地【小梨平ソロキャンプ2018】

14:23
上高地帝国ホテルですばらしいひとときを過ごしたのち、バスターミナルに戻る。

コーヒーのおかわりができるのだし、半日くらい粘っても怒られないだろう。もちろん良いお客さんとはいえないけれど。

でも、せっかく上高地に来ているのに、屋内で読書を続けているというのはあまりにももったいない。せっかくだから屋外にいこう。ちょうど持参した本を読み終えたことだし。

「もったいない」「せっかくだから」というキーワードは、貧乏性の僕において頻出する。そして、その気持ちのせいで、あれもこれもやりたくなって、でもできなくて、その分断で心が疲弊する。

それがどうだ?上高地にいると、やれることが少ない。「もったいない」からバスターミナルに戻ろう。「せっかくだから」バスターミナルに戻ろう。それくらいしか、やることがない。

なんて素晴らしいんだ。やることがないぞ。

これが温泉宿での逗留だったら、「じゃあまた風呂に行くか」となるけれど、ここ上高地だとそういうわけにもいかない。なのでひたすら、歩いて、本を読んで、自然を眺めて時間を過ごす。おかげで、気持ちがこの数日で随分と落ち着いてきた気がする。

上高地帝国ホテルからバスターミナルへは、木道が通っている。確か800メートル程度の距離で、徒歩だと10分。それでも、ホテル宿泊客はわざわざバスターミナルに待機しているタクシーを呼び寄せ、移動している人がいた。金持ちは発想が違う。

14:31
バスターミナルに戻ってきた。

ハイシーズンになると観光バスがいっぱい並ぶ駐車場も、今日は数が少ない。

低公害バス以外上高地エリアには立入禁止!普通の観光バスは沢渡から平湯温泉で低公害バスに乗り換えてください!というルールにはなっていない。ダメじゃん、と思うけれど、そこまで厳格には運用できないようだ。ただし、駐車場でバスが待機している間はアイドリングストップが義務付けられている。

14:36
チケット売り場に行き、高速バスの空席状況をカクニンする。

まだ今なら、東京に戻る高速バスに間に合う。そして、空席もある。ええと、東京方面へは15:00、15:30、16:15か。または長野行き15:30に乗って、長野から新幹線という手もある。

このあとどうしようか、思案中。

14:38
相変わらずバス乗り場には行列ができている。

このバスは平湯温泉行きだろう。

年齢層は幅広い・・・と言いたいが、全体的に高め。子供はほとんどいない。

こちらは沢渡の駐車場に向かうシャトルバス。パーク&ライド方式で上高地にやってきた人たちが乗る。

14:45
そういう人たちを眺めながら、思案に暮れる。

今日、テントを畳んで東京に戻ろうかどうか、ということについて、だ。

というのも、明日はどうやら昼前に雨が降るということがわかっている。午前中にテントを片付け、撤収することになるのだろう。だから、明日はあまり時間がない。

そして今日。まだ昼下がりの時間とはいえ、既に上高地感覚だと「日没前のラストスパート」とも言える時間帯になってきている。17時をすぎると夕食や風呂について目処をつけていないといけないし、18時をすぎると日没だ。そしてその後12時間近く続く、寒さと暗さとの対峙。

僕は「しばれフェスティバル」とこの時間帯のことを呼んでいた。「しばれる」とは北海道方面の方言で、「寒い」という意味だ。

しばれフェスティバルにあと数時間で突入し、一晩を過ごし、翌朝は早い時間に荷物の撤収と退却。これだと、単に僕が寒い思いをするために一泊延長するかのようだ。

どうしようかなぁ。今日中に帰宅してもいいんだよなぁ。でも、延泊したって、キャンプ場利用料は800円だ。金額的な負担増は全然ない。そう、全然ないに等しい。これには新鮮な驚きを禁じえない。「延泊してもしなくてもいい」という自由って、わかっているようで未体験だったからだ。それはGW期間中ということで僕の身がフリーだということにも関係している。

14:52
「帰ろうかなぁ、それとも残ろうかなぁ」

と考え込んでいる間、テーブルの上にドバトがやってきて机の上をついばんでいた。

観光客が食べた食べ物のカスが卓上にわずかに残っているのかもしれない。

そんな光景をぼんやり眺めつつ、考える。

「最後の一泊は、旅館山小屋案内所に駆け込んでどこかで一泊、というのもヴァリエーションとしてありだなぁ」

うん、それはそのとおりだけど、お金が高くつくからやめとけ。

たぶん、そういう発想すら選択肢として出てくるのは、さすがに2泊テントで寝ていると身体がダルくなてきたからだろう。家のベッドや布団と違って、熟睡できないのは言うまでもないから。

悩んだ結果、今晩も「しばれフェスティバル」に突入することを決定した。

よし、腹をくくったからには、今晩の「しばれ」に向けて買い出しをしよう。

目の前におやきを売っているお店があるので、そこで食事の調達だ。

14:56
晩ごはんの一端を担ってもらうべく、「そばおやきピリ辛やさい」と「とろ~りチーズおやき」を買った。これだけを晩ごはんにするのは寂しいので、あとで小梨平の売店で追加の買い出しをするけれど。

テント泊の場合、最大のごちそうというのは「暖かい」ということと、「食べ終わるまで時間がかかる」ということだ。なにしろ夜は長い。あっという間に食べ終わってしまう、というのはあまりに惜しい。だから、おやきは「前菜」扱いだ。僕の中では。

(つづく)

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