冬の上高地に歩いて潜入!カフェ・ド・コイショでクリスマス【中の湯・明神】

10:21
絶景の穂高連峰を眺めながら、一歩一歩歩いて行くのはすごい楽しい時間だ。

いつもならバスで一気に通過してしまうところを、少しずつ、ちょっとずつ、前へと進んでいく。このゆったりとした時間と、わずかながらも着実に変わっていく景色とが最高だ。

「このあと、真正面に見える山に登っていただきます。」

と言われたら「えー、スゲー標高差あるじゃん。たりー、面倒くせー」と思う。でも僕らが今回目指すのは、明神だ。ここまできたらあとは標高差はほとんどない。水平移動中心の動きになる。なので気が楽だ。

歩き続けて、すっかり体は出来上がっている。このとき撮影した二人の写真を見ると、釜トンネル入り口のときの服装からすっかり変わってしまっている。いしは、ジオライン(モンベル製のアンダーウェア)のシャツにフリースだけの格好になっている。そのフリースも前を開放し、アンダーウェアが丸見え状態。

僕も防寒用として着ていたレインウェアを脱ぎ、ジオライン+フリースだ。手袋は邪魔なので脱いだ。

10:28
しばらく歩いていると、堰堤が見えてきた。

ああ、ここが大正池の末端部分だ。この堰堤の先からが、大正池となる。

最初この堰堤を見た時はなんだかがっかりしたものだ。「えっ、人工物で貯水されているの?」と思ったからだ。だって、「焼岳の噴火によって梓川がせき止められてできたのが大正池」って聞いているので、話が違うじゃないか、となる。

大正池と、その奥に明神岳・前穂高岳。

大正池に逆さに移る明神岳が美しい。

雪をまとう吊尾根が水面に写り込んできれい。これは初冬ならではのお楽しみだ。

これ以上季節が深まると、「キレイダナー」なんて呑気に言ってられないくらい寒いだろう。ちょうどこの時期の上高地訪問でよかった。冬山登山経験がない僕らであっても、安全に楽しめる。

でもよく考えてみると、まだ11月23日だった。準備段階から決死の覚悟感があったが、12月にさえなっていない。

10:32
とはいえ、そろそろ冬は足元にも及びつつある。

路面が若干濡れている。直近で雨が降ったわけじゃないだろうから、夜間にできた霜が明け方になって溶けたものだろう。

これを繰り返していくうちに、凍結した道となるはずだ。

いちおう僕ら、スパイクとか軽アイゼンは持参したけど・・・まだそれらを使うほどじゃ、ないな。

10:37
大正池ホテルが見えてきた。さあ、ここからが「普段なら観光客で溢れる、観光地・上高地の中核エリア」だ。

もちろん大正池ホテルはとっくに冬季休業に入っている。窓はシャッターや雨戸で閉じられ、すっかり冬ごもり体制で人っ子ひとりいなかった。

馴染みの光景だけど、見慣れないシチュエーション。すごくゾクゾクするぞこれは!

ゾンビ映画なんかでよくあるよな。「いつもなら人がいる場所なのに、誰もいない・・・おかしいと思いながら歩いていたら、いきなりゾンビが出てきた!」というやつ。

大正池ホテルの脇には公衆トイレがある。

様子を見に行ってみると、「立入禁止」の札が下がったトラロープで奥に入れないようになっていた。おや、トイレも冬は利用禁止か?

でもよく見ると、男性トイレには入れるようになっている。その奥の多目的トイレ、女性トイレが立入禁止だ。

つまり、冬季期間中でも入山者用にトイレは利用できるけど、男女問わず手前の男性トイレを使ってください、というわけだ。

冬季トイレの場所がマップで示されていた。

それによると、上高地エリアには大正池、中の瀬(帝国ホテルの裏手あたり。穂高橋・田代橋のたもと)、バスターミナル、小梨平の4か所が冬でも使えるトイレになっている。逆に言えば、それ以外のトイレは閉鎖だ。

たとえば河童橋近くに公衆トイレがあるけれど、そういうのは使えないですよ、ということになる。

ご丁寧に「上高地冬期入山ルール」という張り紙もトイレに貼ってあった。

「入山の際、必ず登山届を提出してください」と書いてある。あっ、僕ら登山届を書いていないぞ。いや、でも明神に行くだけなら登山届はいらない・・・か?微妙だな。

ちなみに、所要時間も書いてある。

中の湯⇒大正池 90分 3.1km
大正池⇒中の瀬 60分 2.0km
中の瀬⇒バスターミナル 30分1.1km
バスターミナル⇒河童橋 15分0.5km

これを見ると「時速2km」で計算されていることがわかる。一般的な人の徒歩スピードよりずいぶん遅いので、雪が積もった状態での時間を指しているらしい。

「湿原の踏み込みはやめろ」という記述が2か所ある。「冬は人がいないから、湿原を歩いちゃっても誰にも怒られないぞ!」というイタズラを警戒しているわけじゃない。冬になると、この地をスノーシュー(西洋かんじき)で散策する人がいて、そういう人はつい、歩きやすくて開放感がある湿原に足を踏み入れてしまうのだろう。

10:43
ほとんど人がいない、静かな上高地。

・・・の筈だったんだけど、そうでもなかった。

大正池には大きな工作船が浮いていて、ゆっくり動きながらドドドド!と周囲に音を響かせていたからだ。何をやっているのかというと、浚渫だ。土砂が流れ込んで浅くなった湖底を掘って、土砂を取り除いていた。

へえ、そんなことをやってこの池を維持しているのか。

浚渫工事をしないで土砂の堆積を自然にまかせていたら、大正池がいずれ消滅してしまうのだろう。

(つづく)

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