冬の上高地に歩いて潜入!カフェ・ド・コイショでクリスマス【中の湯・明神】

17:02
卜伝の湯を17時前に出る。

正味入浴時間は10分~15分といったところか。かなり忙しい。

「それ、急げ急げ」と湯船にドボーンと入るわけにはいかない。なにしろ気温がかなり低いので、そこから熱い湯に入ると体がびっくりして幽体離脱してしまいそうだ。しっかりかけ湯をして、体を慣らしてから湯船にソロリソロリと、なんてやっていると、本当に時間がない。

とはいえ、じゃあ1時間時間があったところで時間を持て余すだろう。なにしろ卜伝の湯は洞窟風呂。薄暗いし、窓はないし、空間のすべてがジメジメしている。のぼせるまでお風呂に入って、外にでて体を冷まして、また入って・・・と繰り返したいような空間ではない。

だから、「卜伝の湯お試し体験」という程度の30分でちょうど良かったんだとおもう。

さて、17時に風呂を出たものの、まだお迎えの車は来ていない。17時~17時半枠で卜伝の湯を予約しているお客さんを宿から運んでくるのだろう。

お迎えの車が来るまでの間、釜トンネルの前で待つ。

明日はこの奥の漆黒に吸い込まれていくことになる。今から楽しみでしょうがない。だって、大きく「進入禁止」と書いてあるんだぞ。

釜トンネルの入り口には、「中の湯売店」と呼ばれる建物がある。

その名の通り、中の湯温泉が運営する売店らしいのだけど、何が売られているのかまったく知らない。食べ物とかお土産とか売っているのだろうか?ここを通り過ぎたことは10回以上あるけれど、全て車で素通りだ。上高地の常連であっても、中の湯売店の中に入ったことがある人はごくごく少数だろう。

なにしろ、釜トンネル周辺には駐車場が全くない。そして、観光するような場所もない。せいぜい、焼岳登山の人が中の湯温泉旅館近くに下山し、この中の湯売店に立ち寄るくらいだろう。

日帰り入浴で卜伝の湯を使いたい場合、この売店に依頼することになる。シーズン中なら、常に宿のスタッフが常駐しているのだろう。

なお、釜トンネル前にはいつも警備員が立っている。許可されていない一般車両が迷い込む事案が後を絶たないのだろう。

そんなの、許可車両だけ通行できるようにゲートを設けて、ナンバープレートをカメラで読み取って事前申請済みならゲートが開く、といった仕組みをつくればいいのに・・・と思う。それなら無人で対応できる。

しかし、わけもわからず突っ込んでくる無許可マイカーがいれば、それだけで釜トンネル前が渋滞してしまう。「えっ、入れないの?なんで?」なんて運転手がモニターとスピーカー越しに遠隔操作のオペレーターとケンカを始めたりしたら、後ろに延々と車列ができ、上高地に用がない、飛騨高山方面に向かいたい車にまで迷惑がかかる。

やっぱり、人手で大きなジェスチャーを使って、「お前、こっち来んな」と指示をしたほうが確実だし早いのだろう。

釜トンネルをこんなに間近に、じっくり見たのは人生初めてだ。たかがトンネルだって?いや違うんだ、釜トンネルというのは、「さあここから上高地だ」と気持ちが引き締まる場所だし、「あの世」と「この世」を結ぶ玄関口だ。とても感慨深い。

「県道上高地公園線 冬季閉鎖」という看板を見ると、大変に誇らしい気持ちになる。だって、明日は「進入禁止」で「冬期閉鎖」の道を歩くんだから。

念のため言っておくが、釜トンネルを歩いて上高地を目指すことは夏でも冬でも禁止はされていない。看板に出ている「進入禁止」というのは、あくまでも許可されていない車に対してのものだ。明日ここを突破するのは、法に触れることではない。

そのかわり、「この先の道路は積雪及び雪崩の恐れがあるため車両及び歩行者の通行は大変危険です。」と書いてある。注意喚起はしっかり行われている。

釜トンネルは時折車が出てくる。今日の作業を終え、上高地から退却するのだろう。冬季閉鎖は11/15(金)19:00~翌年4月17日(金)7時、と実に5ヶ月もの期間に及ぶ。しかし実際は、こうやって閉鎖期間中にあれこれ作業が上高地では行われている。

17:03
迎えの車が宿からやってきた。車に乗って宿に戻る。

17:14
17時にもなればもう真っ暗だ。

宿の玄関から森を見ると、すっかり葉を落とした白樺の木がライトアップされていた。寒々しい光景で、美しい。森をライトアップするなんて、やるなぁ。

17:22
チェックインの際に使ったロビーの一角に畳の間がある。囲炉裏が切ってあって、天井から自在鉤がぶら下げられていた。

ここではお茶と冷水のセルフサービスがあったので、ありがたくいただく。

ロビーのテーブルにあったドリンクメニュー。

軽く飲むことができるらしい。ロビーは大きなガラス窓で開放感があるので、外の景色を眺めながらの一杯は楽しいだろう。

おっ、ノンアルコールビールが450円か。

こういうところでもノンアルコールビールが選択肢として用意される時代になったのは、酒を飲まない僕にとっては本当に喜ばしい。昔は「本当は酒を飲みたいけど、車の運転があるから飲めない・・・」という人がしぶしぶ飲むドリンク、という位置づけだった。そのせいで、置いてあるお店や場所というのは「飲みたいけど飲めない事情がある場所」に限られていた。しかし今じゃ、あちこちで飲める。

17:56
夕食まであともう少し時間があるので、一旦部屋に戻る。

部屋に備え付けられている旅館ガイドを読む。

お風呂は内風呂として男女別の「本館浴場」と貸し切りの「家族風呂」があるようだ。

午後9時50分~10時10分の間に本館浴場の男女が入れ替わる。この「男女入れ替え制」、宿によってはやたらと早い時間(客が夕食を食べている最中とか)のことがあるし、24時を回ると変更、というシンデレラばりの設定のところもある。この宿の場合は22時ということで、なかなかいいタイミングで僕好みだ。

「チェックイン後に一発、夕食後に一発、ダメ押しで寝る前にもう一発風呂に入るのが理想」という考えの僕の場合、二発目と三発目の間に男女入れ替えがあるというのはちょうど都合がいい。

先ほどお世話になった卜伝の湯についても、解説があった。

入浴可能時間は「16時~17時」、「翌朝7時~9時半」となっていた。入浴時間は30分単位なので、お風呂に入ることができるのは16時、16時半、17時、7時、7時半、8時、8時半、9時、9時半の9組限定となる。この宿の部屋数はもっと多いので、満室の日に泊まる際は卜伝の湯に入りたくても空き枠がないことが起きる。

快適なお風呂かどうかはともかく、「いやあ、すごい風呂に入った」という驚きと興奮は得られるので、ここに宿泊するからにはぜひ卜伝の湯を予約したいものだ。

※繰り返しになるが、この翌年に卜伝の湯は崩落のため廃業となった。2019年に入浴できて良かった。

食堂の飲み物や追加料理などが記されたメニューを発見。

信州牛朴葉ステーキや岩魚骨酒、といったメニューが並ぶ。信州牛朴葉ステーキなんて2,940円もする。ただでさえ品数が充実している宿飯に加えて、こんな贅沢をする人ってどんな属性なんだろう。僕はとてもじゃないがこんな出費はできない。

そういえば、僕といしはこの上高地紀行から2週間後には入籍・結婚するんだった。その後に新婚旅行の予定はないので、対外的には今回の旅を新婚旅行とみなす、という申し合わせをしていた。というのは、結婚します・しました、と周囲に言うと、決まって「おめでとう」の後に「で、新婚旅行は?」と聞いてくるからだ。「どこで挙式したの?」ということは聞かないのに、新婚旅行については聞いてくる。なんだろうこのお決まりのやりとりは?

で、「予定していないんですよー」と答えると「えーなんでー、もったいないから今からでも考えたほうが」とかあれこれ言われるのもタルいんで、だったら上高地って答えておこう、と。そもそも、「冬季閉鎖中の上高地に潜入」ってすげーワクワクするじゃないですかー。新婚旅行向きでしょ。・・・といっても、上高地のことをよく知らない人がほとんどなので、僕らが熱く語っても「はあ、そうなんですか」と生返事をされることが大半だったけど。

そんな新婚旅行がわりの今回の旅行なんだから、ちょっとは贅沢をしてもよいのでは・・・という考えもある。とはいえ、その「贅沢」が信州牛朴葉ステーキではないはずだ。今ここで頼むのはやめておこう。

(つづく)

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