川を越え、雨に打たれ、風にあおられて【斜里岳】

いよいよ登山開始だ。

雨が止むのを待つ、なんて呑気なことは言っていられない。このあと雨足が強くなる可能性のほうが高いし、とっとと登ってしまったほうがいいと思う。

登山口のホワイトボード。雨による沢の増水と、馬の背付近の強風への注意喚起が書かれている。

05:09
登山口の脇に、ホワイトボードで「登山情報」が掲示されていた。

  • 昨夜からの雨で沢は増水しています。
  • 下二股までで不安を覚えた方は新道コース往復をお勧めします。
  • 馬の背~頂上 強風予報

ホワイトボードに記された「増水」と「強風」のコンボ。これ、暗に「登らないで帰れ」と言っているよね。

小屋番さんが、今朝早くこのボードを更新してくれたらしい。こういう生の情報は本当にありがたいし、身が引き締まる。

それにしても、本格的な渡渉と沢登りが始まる「下二股」よりも手前で「不安を覚える」パターンがあるのか。僕が思っている以上に、ここはハードな山らしい。

ヘルメットとレインウェアを装備し、登山口の前でポーズをとるブログ主。

05:14
途中でザックから荷物を出し入れするのは面倒だから、今のうちからヘルメットを被っておくことにした。

使っているのはブラックダイヤモンドの「ハーフドーム」というモデルだ。

ブラックダイヤモンドといえばクライミング界の重鎮だけど、その流れで登山用ヘルメットも定番として売られている。

僕としては、「全身モンベルマン」という没個性な状態を避けたかった。その結果としての選択だったのだけど、いざ並べてみるとヘルメットの青色はレインウェア(モンベルのレインダンサー)とそっくりだし、ロゴの雰囲気まで似ている。結局、統一感が出てしまったのは計算外だった。

この「ハーフドーム」は、ラインナップの中でも一番お手頃なベーシックモデルだ。外側をABSのハードシェルで覆い、内側をEPSフォームで守るという、実に質実剛健な仕様だね。

僕の脳内シミュレーションでは、これを被ればグッとかっこよくなるはずだった。ところが、通販で届いた現物を鏡の前で被ってみて絶句した。「つくしみたい」なのだ。顔がやたらと長く強調されてしまった気がする。おかしいな、もっとシュッとした見た目になる予定だったんだけど。

上高地あたりで見かけるヘルメット勢はあんなにかっこいいのに、なぜ自分だけつくしになってしまうのか。不思議で仕方がない。

後で調べたら、高いモデルは強度を保ちつつも薄型軽量に作られているらしい。なるほど、課金額が足りないから「頭でっかち」になるという仕様か。世の中は実によくできている。

登山において、ヘルメットは顔の印象を左右する超重要パーツだ。帽子を買うとき以上に慎重に、できれば店頭で試着することをお勧めしたい。僕みたいに現場で困惑したくないならね。

同じ価格帯なら、マムートの「スカイウォーカー」あたりを検討してもよかったかな、なんて今さら後悔してみたりする。

斜里岳登山道と原生林ウォーキングコースの分岐点にある手書きの看板。周囲は深い緑に囲まれている。

05:17
道に入ってすぐ、分岐が現れた。

左はウォーキングコース、まっすぐ進めば斜里岳登山道。迷わず直進だ。

雨に濡れて泥濘んだ細い登山道。剥き出しになった木の根が階段状に連なっている。

05:20
足元はすでに泥濘んでいて、いかにも登山道という雰囲気だけど、まだここは序盤の序盤だ。

急な斜面に設置された濡れた鉄製の階段と、その下に続く砂利の林道。

05:21
階段を下りると、そこには林道が続いていた。ここからしばらくは、フラットな林道歩きが続く。

霧に包まれた白樺の林道。雨で濡れた路面にはわだちがあり、静寂が漂っている。

05:22
わだちがあるところを見ると、時折車も通るんだろうね。

比較的歩きやすい、わだちの上を選んで進んでいく。

雨の中、青いヘルメットとレインウェアを着用して自撮りする執筆者の姿。眼鏡が濡れている。

05:23
・・・あれっ?

重大な欠陥に気づいてしまった。ヘルメットを被った状態だと、レインウェアのフードがちゃんと閉まらない。今の僕にはXLサイズが適正なんだけど、これはまだシュッとしていた頃に買ったLサイズ。要するに、加齢と体型の変化という「仕様」が牙を剥いたわけだ。

それにしても、ヘルメット着用を想定していないフードの小ささには参った。

仕方なく無理やり被ってみたけれど、上を引っ張れば下が出る。今度はおへそが露出しそうな勢いだ。これじゃ、ただの露出狂の登山者じゃないか。

「ヘルメットさえあれば雨でも平気!」かと思っていたが、やはりそういうわけにはいかなかった。
メガネを愛用する身としてはなんとかレンズを濡らさずに済ませたかったけれど、ヘルメットもフードも、その願いを叶えてはくれなかった。

深い森の向こうに、ガスに煙る斜里岳の山影が薄っすらと見える風景。

05:28
霧の隙間から、斜里岳の斜面が顔を出した。かなりの急勾配に見える。

これからあの急斜面に挑むのかと思うけれど、正直まだ実感がわかない。昨日から一度も山容を拝めていないし、前泊した清岳荘も「山奥の秘境」というよりは、なんだか身近な宿という感覚だったからかもしれない。

巨大なフキの葉が群生する林道の終点付近。山全体が深い霧に覆われている。

05:31
さっきまでの白樺と笹のゾーンを抜けると、今度は巨大なフキのような植物が群生しているエリアに出た。

登山道の入り口に立つ「登山届は済みましたか」と書かれた案内看板。奥へ続く細い道。

05:32
林道、終点。

ここから道がグッと細くなり、いよいよ本格的な山歩きの始まりだ。

「登山届は済みましたか」という看板の問いかけに、心の中で静かに頷く。ここから頂上まで3.6km。数字だけ見れば短く感じるけれど、目の前の薄暗い森が「そんなに甘いもんじゃないぞ」と威嚇してくるようだ。これは相当な長丁場になりそうだ。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 何はともあれ"リアルタイムとは別のパラレルをーるどを往く"おかでんのご帰還めでたし。
    スマホも保険でなんとかなったようでそこもまた良し。(Fujiの一眼が心配でなりませんが…)
    それにしても"振り返れば、斜里岳は本当に楽しい山だった。"果たしてそうか?うーん、わからん。山男の思考はさっぱりわからん。今後の活躍も期待しております。

  • zennさん>
    富士フイルムのカメラをご心配いただき、ありがとうございます。
    そう言われてと気がついたのですが、この記事の最後に載せている「故障したスマホ」の写真、まさにX-T20で撮ったものでした。機動力を重視したい場面で、あえてごつい一眼カメラを取り出して構えているというのは、冷静に考えるとかなり倒錯していて面白い絵面ですね。

    先日からzennさんには「新しくカメラを買うなら?」という個別のお話をさせていただいていますが・・・いずれ、あるタイミングから「おや?記事の写真の質感が変わったぞ?」という局面が訪れるはずです。

    もし変化に気づかれましたら、ぜひ早押しクイズの勢いで「カメラ買い替えただろ!」と突っ込んでみてください。楽しみにしています!

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