斜里岳(清岳荘ピストン) / おかでんさんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
2023年の日本百名山めぐりは、6月18日から19日にかけて登った巻機山で心地よいスタートを切った。

避難小屋に一泊し、急登続きの山道を汗だくになって登り切る。あの一山だけでも十分に鍛えられた感があって、良い前哨戦になった。
こういう経験を少しずつ積み重ねていくことで、次の山に向かう自信が静かに育っていく。
なにしろ普段の僕は、ほぼ引きこもりに近いテレワーカーだ。かつては通勤だけで毎日6,000歩から7,000歩は歩いていたのに、いまは保育園へのお迎えと、スーパーへの買い物くらいしか動かない。
そんな生活からいきなり本番の山に突っ込むのは、どう考えても無謀だ。だからこそ巻機山は、心身を整えるには最適な山だったと思う。
筋肉痛がようやく引き、写真整理を終えた頃には、もう次の山が迫っていた。しかも北海道、斜里岳。苦笑するしかない展開だ。
春先にはすでに一年分の登山計画を組み終えていて、数カ月前から交通や山小屋の予約、水場や食料調達の事前調査も済ませている。
飛行機は早く押さえるほど安く、逆に天候は直前にならないと読めない。このアンバランスさを抱えながら計画を進めるのは、正直なところ少し消耗する。
それでも、予定がすべて形になってくると不思議と腹が据わる。「行かない理由」をつくる余地がなくなるからだ。とはいえ、悪天候なら迷わず撤退する覚悟も必要になる。
今年の北海道ターゲットとして斜里岳を選んだのは、残りの未踏百名山の多くが北海道に集まっているからだ。利尻岳、トムラウシ、幌尻岳・・・名だたる難関揃いの中で、斜里岳は比較的取りつきやすい存在に思えた。
以前、知床の羅臼岳へ向かう車中で遠くに見えた山影がまっすぐ伸びるように立ち、妙に印象に残ったのも理由の一つだ。
さて、その斜里岳。広い道東の大地にすっと背筋を伸ばすように立つ山。聞くところによると山頂からの展望は圧巻らしい。ただしこの界隈は雲が湧きやすく、天候は気まぐれだという。そんな山に、6月30日、いよいよ挑むことになった。
2023年06月30日(金) 1日目
今回の斜里岳登山は、1泊2日の行程を予定していた。羽田空港から女満別空港へ飛び、そこからレンタカーで登山口にある「清岳荘」へ向かって前泊。翌朝早くに山へ入り、昼には下山。そのまま女満別空港へ戻り、夜には羽田空港へ帰着するという流れだ。
女満別空港行きの便はそもそも多くなく、LCCという選択肢もない。必然的にAIRDO一択となった。LCCはタイミングさえ合えば驚くほど安く飛べるが、早朝の成田発だったり、荷物制限が厳しくてチェックインまで落ち着かないなど、安さの代償はそれなりにある。「安く乗りたいと考えたお前に罰を与える」と言われているような、あの独特の緊張感だ。
その点、今回はAIRDOでとても気が楽だ。しかも登山は明日。今日はのんびりと現地へ向かえばいい。そう思うだけで、出発前の心が少し軽くなる。
ただ、一つ気がかりなのは天気予報だった。一週間前からずっと雨。しかも「しっかり降るぞ」という予報が続き、ずっと警戒していた。直前になっても大きな改善は見られず、晴れ間を期待するのはもはや無謀に近い。ただ、ひどい土砂降りの予報ではなくなったのは救いだった。
僕が6月末に北海道の山を選んだ理由は、本州が梅雨真っ最中だからだ。梅雨がないとされる北海道なら、この時期でも山に登りやすいはず。雪解けも温暖化の影響で早まっているだろうという読みもあった。ところが、今年は低気圧が北海道上空に腰を据えてしまい、雨が降り続けるというまさかの展開。これはさすがにまいった。
思えば、北海道の山は登る時期の見極めが難しい。オンシーズンは7月と8月で、それ以外は一気に冷え込む。
9月に羅臼岳に登ったとき、山頂付近は摂氏0度近くまで下がり、ヒョウまで降った。

6月の大雪山旭岳では残雪に行く手を阻まれ、登頂を断念したこともある。

さらに7月8月になれば、北海道全体が観光シーズンに突入する。気候は最高でも、飛行機もレンタカーも宿もすべて値上がりし、予約も取りにくくなる。結局、どの時期にも悩みどころがある。
そんな事情から、僕は「6月末」という絶妙なタイミングを狙ったわけだが、停滞する低気圧のせいでその目論見は半ば外れてしまった。自然相手とはいえ、なかなかうまくいかないものだ。

羽田空港到着。
女満別空港行きの出発は11:20。到着したのは約2時間前で、僕にしてはかなり余裕のある行動だ。平日ということもあり、妻子を見送ってから家を出たので時間的な窮屈さがなかった。
せっかく余裕があるなら、と離陸までの間に羽田空港にいくつもあるカードラウンジを行脚してみることにした。
羽田空港(第1ターミナル、第2ターミナル)には、ゴールド以上のクレジットカード所持者向けのラウンジが7か所ある。当日の搭乗券と該当カードを提示すれば、中に入って休憩やドリンクの無料サービスが受けられる。
第2ターミナルの制限エリア内にあるラウンジは使ったことがあったが、それ以外は未体験だった。だから今回、行ける場所には行ってみよう。
こういう“無駄な寄り道”は、1人旅だからこそ楽しめる。家族旅行では、こんな趣味に付き合わせるわけにはいかない。
というわけで、まずは久しぶりの第1ターミナルへ。僕はいつも第二ターミナルばかり使うので、どこかアウェイ感のある場所だ。
ここにはモノレールや京急の駅から上がってすぐのところにラウンジがある。便利な立地だ。
羽田空港(1T、2T)内のラウンジ名は7か所中6か所が「POWER LOUNGE」といい、おそらく運営会社が一緒だ。つまり提供サービスも共通で、行脚しても違いはないのだが、実際に確かめられただけでも今日の収穫だ。

第1ターミナルから第2ターミナルへは、地下道を歩いても大した距離ではない。登山者を目指す人間が、この程度の距離を面倒がっていては話にならない。とは言いつつ、今回はわざとターミナル連絡バスに乗ってみたかったのでバスへ。
ルートは
第1 → 第2 → 第1 → 第3 → 第1
という独特な循環。うっかり第3行きに乗ると、第2に戻るまで大回りになるので注意が必要だ。

10:11
自分にとっておなじみの第2ターミナルに到着。

まずは手荷物をさっさと預ける。
自動手荷物預け機にザックを押し込んだらエラーになってしまったため、カウンターで手動預けに切り替えた。
重量は9.18キロ。心配性ゆえに荷物を増やしがちな僕にしては上出来。もちろん一般的には重いのだけど。
今回は現地での食事提供がないため、自炊が必須だ。ガスストーブ、クッカー、寝袋、ウレタンマットも持参。巻機山とほぼ同じ装備になっている。
違うのは、今は水と食料がまだ入っていないこと、そしてガスカートリッジがないことだ。飛行機にはガス缶を持ち込めないため、現地調達が必須となる。離島や地方の登山では、ガス缶の調達と破棄が意外とポイントになる。

第2ターミナル3階にもラウンジがある。ここまで来たなら保安検査をとっとと抜けたほうが何かと安心だが、制限エリア外にラウンジがあるのは、それはそれで便利だ。

中に入ると、フリードリンクが整然と並ぶ。ビュッフェのようにぎゅうぎゅうではなく、気持ちに余白が生まれる配置だ。ガラスケースに収まっているのは青汁(豆乳入り)と黒酢ジュース。妙に健康的だ。

無料では物足りないというエグゼクティブ向けに、有料でビールやハイボールも置いてある。「羽田スカイエール」や「スモーキーハイボール」という名前が並んでいて、ちょっと心をくすぐられる。

10:44
20分ほど滞在した後、第2ターミナル内をぶらぶら歩く。
「空弁工房」という店が目に入った。駅弁ならぬ空弁だ。

かつサンドや天むすはともかく、お弁当形式のものは軒並み1,300〜1,500円。高いとは思うが、空港内で何か食べようとすれば結局どれも高いので、相対的に安く見えてくるのが不思議だ。しかも「加賀屋監修 のどぐろちらし寿司」などと立派な名前まで付いている。

女満別空港行きの飛行機は定刻出発予定。搭乗口は56番ゲートだった。ひとまず胸をなで下ろす。56番ゲートなら、制限エリア内のカードラウンジから歩いてすぐの場所だ。出発直前まで落ち着いて過ごせるし、妙な動線に振り回されずに済む。
空港という場所は、同じ建物の中でも「近い」「遠い」の感覚に意外と差がある。保安検査場からほど近いゲートもあれば、延々と歩かされる果ての番号もある。
今回はたまたま相性が良かったようで、旅の滑り出しとしては悪くない。遠すぎるゲートだと、ラウンジで一息ついたつもりが、気づけば搭乗時間ギリギリになって駆け足になることも多い。今日はそんな慌ただしさとは無縁だ。
ターミナル全体に満ちる、午前の穏やかな気配。旅行客のざわめきやアナウンスの声に混じって、これから始まる旅の輪郭が少しずつ浮かんでくる。目的地は斜里岳。
(つづく)

コメント
コメント一覧 (2件)
何はともあれ"リアルタイムとは別のパラレルをーるどを往く"おかでんのご帰還めでたし。
スマホも保険でなんとかなったようでそこもまた良し。(Fujiの一眼が心配でなりませんが…)
それにしても"振り返れば、斜里岳は本当に楽しい山だった。"果たしてそうか?うーん、わからん。山男の思考はさっぱりわからん。今後の活躍も期待しております。
zennさん>
富士フイルムのカメラをご心配いただき、ありがとうございます。
そう言われてと気がついたのですが、この記事の最後に載せている「故障したスマホ」の写真、まさにX-T20で撮ったものでした。機動力を重視したい場面で、あえてごつい一眼カメラを取り出して構えているというのは、冷静に考えるとかなり倒錯していて面白い絵面ですね。
先日からzennさんには「新しくカメラを買うなら?」という個別のお話をさせていただいていますが・・・いずれ、あるタイミングから「おや?記事の写真の質感が変わったぞ?」という局面が訪れるはずです。
もし変化に気づかれましたら、ぜひ早押しクイズの勢いで「カメラ買い替えただろ!」と突っ込んでみてください。楽しみにしています!