閉鎖病棟・上高地【小梨平ソロキャンプ2018】

スポンサーリンク

06:31
朝6時半の河童橋。2018年5月最初の日の朝。

まだ人の気配はほとんどない・・・と言いたかったが、案外いらっしゃる。こういうところを歩いているのは、大抵が上高地界隈の宿に泊まった人たちだ。暖かいホテルの部屋で寝泊まりした人たちが多いだろうけど、「同志よ!」という気持ちになる。

同じ上高地の一晩を過ごした仲間、という連帯感が芽生えてくる、気がする。

いや単にそんな気が、この瞬間だけ、するだけだけど。あと1時間もすれば忘れる。

それくらい、こっちとしては寒さからまだ立ち直れておらず、誰かにすがりたい気持ちがあるのだろう。

06:32
端から見ると、バカみたいに見えるだろう。

毎日2回・3回としつこく岳沢の写真を撮っている。

日増しに形が変わっていくのです、なんてことはない。単に、静かな山だ。でも撮らずにはおれないんだよな。朝だから、昼だから、夜だから。天気が良いから、悪いから。何か理由ができれば、その都度撮っている。

06:34
河童橋から梓川右岸を見たら、繁みのなかに佇む建物がある。あれが西糸屋山荘。二階のテラスの白い柵が遠くからでも目立つ。

その背後に、西穂高岳から焼岳に続く稜線が見える。

西穂高岳から奥穂高岳まではびっくりするような岩稜地帯なのに、西穂山荘があるあたりから焼岳手前までは、「なんでここまで違うの?」と違った意味でびっくりするくらい、なだらか(に見える)。

登山地図を見ると、「ぬかるみの道」などと書かれているし、口コミを見ると「眺望がなくひたすら歩く」とも書いてある。あまり人気の道ではないようだ。

06:37
上高地バスターミナルにやってきた。

ここでも頻繁に写真を撮っているな。

時間ごとに景色がかわる山の風景を撮りまくるならともかく、バスターミナルの写真を撮るのは我ながらへんなことだな、と思う。

たぶん、ここに来ると「ああ、下界との結節点にやってきた」ということで一種の懐かしさと軽い興奮を覚えるのだろう。

「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」(石川啄木)

という詩を思い出す。

ただ、僕は下界に戻りたい、と思っているわけではない。「まだ下界には帰らない」証として、ここにあるバスを傍観している自分に深く満足している。

今日一日、まだ上高地だ。

06:38
おお、上高地登山相談所はこの時間でも既に開いていた。さすがだ。

06:38
バスが行ってしまうと、またしばらくバスターミナルに静寂が戻る。

アルピコ交通の職員さんはこの時間でも何人もいる。下界から毎日通うというのは無理だと思うので、シフト制で一週間とか上高地に泊まり込みになるのだろうか。朝からお疲れさまです。

朝からお疲れさまです、というのは売店も同じ。

河童焼きのお店は営業準備中、おみやげ処ピッケルはもう営業を始めていた。この時間にお土産を売っても、誰が買うのだろう?とは思うけれど。そういえば、こういう売店の人たちも、上高地に泊まり込みか。

釜トンネルは19時に閉鎖されます、と書いてある。

上高地下山最終バスは、新島々行きも、平湯・あかんだな行きも共に18時。

このバスに乗り遅れた人は、バスターミナルの傍らに停まっているタクシーに乗れば、19時までなら脱出できる。逆に、19時を過ぎてしまうと、もう上高地に閉じ込められるということになる。

とはいっても、牢屋のようになるわけじゃないので、閉鎖されたゲートを乗り越えれば脱出はできるだろう。脱出したら、松本~飛騨高山行きのバスに乗ればいい。・・・ああダメだ、その路線バスももう終わってる。

滅多にいないとは思うけれど、上高地に閉じ込められて途方に暮れる人、というのが現れるはずだ。その場合どうするのだろう。バスターミナルに一番近い五千尺ホテルに、19時過ぎくらいに「・・・泊めていただけませんか?お金はないんですけれど。皿洗いしますんで」という人が現れるかもしれない。

06:39
上高地食堂にやってきたぜ。

お店の前から、広場を見下ろす。

先ほどやってきたバスから降り立った登山客が、身支度をしている様子が見える。こんな朝早くから、今日はどこを目指すのだろう?たぶん、涸沢なのだろう。今出れば、昼過ぎには到着できる。

昨晩の寒さの答え合わせをする。

朝6時の上高地の気温は、2度。おおなんだ、氷点下まではいかなかったか。

・・・と思ったら、下の週間天気予報を見てもう一度「おお」と声が出た。今日の最低気温はマイナス3度。冷えたやんけ!道理で今この瞬間、衰弱しているわけだ。

で、この後だけど、マイナス3度からぐいーんと気温が急上昇して最高気温が22度。いやもう、むちゃくちゃですわ。一日で25度も温度が変わるんかい。体調を悪くしそうだ。

でも、こういう環境に身を投じているからこそ、気持ちがシャッキリする。生きている!という実感がある、というのは都会ぐらしだとあまりしないものだ。むしろ身の危険を感じてこそ、楽しい。

ただ、この楽しさも長くは続かないようだ。

やっぱり、今日になっても明日・明後日の天気予報が好転しない。水木金、と3日連続で雨が降るようだ。

何時に雨が降るのだろう?と時間単位で予報を見てみると、今のところ明日の14時から雨、のようだった。そうかぁ。じゃあ、この楽しいテント生活も、明日の14時をリミットとして終わりにしようかな。

もうしばらく様子を見るけれど。好転するようなら、さらに一泊したっていい。

(つづく)

コメント

タイトルとURLをコピーしました