栄枯盛衰を温泉地で見た【鬼怒川温泉】

これも廃墟・・・ではないな

15:00
次に見えてきた建物も廃墟かな・・・?

いかんな、「目に見えた建物はまず廃墟かどうか疑え」という変な癖ができつつある。でも、鬼怒川温泉を散策したことがある人なら、この挙動が決して誇張表現ではないことを理解してもらえるはずだ。

古い建物のようだけど、朽ちた感じはないようだな。しかも駐車場には車が停まっているようだ。ぶっきらぼうな外観だけど、これは廃墟ではなさそうだ。

本日の宿だった

廃墟もどきの建物を素通りし、その建物の正面に回りこんでみて「ああ!」と思わず声をあげてしまった。鬼怒川御苑、とそこに書いてあったからだ。僕の今晩のお宿じゃないか。

「鬼怒川御苑」という文字フォントはかなり古い。21世紀の今なら、このフォントは選ばれないだろう・・・という作りだ。大江戸温泉物語に買収されたとはいえ、ロゴデザインのやり直しはしなかったらしい。そういうコストすらも惜しい、ということなのだろう。

建物の前には車がいっぱい。にぎわっているのがぱっと見ただけで伺えた。ちょうどチェックイン時間だということもあるけど、他のホテルとは大違いだ。廃墟を見た直後なので、この理不尽なまでの差に愕然とするしかない。

これだけ客がにぎわっているのは、「鬼怒川御苑という宿がすばらしいから」というわけではないと思う。「大江戸温泉物語グループ」経営による低価格が喜ばれているからだろう。既に「大江戸温泉物語の宿なら、本来の宿のグレードよりもはるかに安く泊まることができる」という信頼ができつつある。

鬼怒川温泉に行きたいから、数ある宿の中からたまたま大江戸温泉物語の宿を選んだ・・・というのではない。大江戸温泉物語の宿でどこか空室がないか、と全国探していたらたまたま鬼怒川が空いていたので利用、といった使われ方がされているようだ。

ひなまつり

安く宿を提供するために、極端なまでにコストカットを図っているのだろう。最低限のリフォームで済ませ、あとはケチケチ大作戦なはずだ。・・・と思っていた。なにせ、2月の閑散期とはいえ、一泊二食(食べ放題付)で税込み7,000円だ。贅沢を言っちゃいかん。なので、どちらかといえば薄ら笑いを浮かべつつ、「ほら、やっぱりこの程度だよね。安いんだもんね、そりゃそうだよね」というスタンスで臨んでいる。

・・・のだが、玄関先におひな様が飾ってあったのには出鼻を砕かれた。あれれ、「コストカットしまくりで、安かろう悪かろうの宿」だと斜に構えていたのに、全然違うっぽい。どうなってるんだ?

お茶のサービス

しかも、玄関入ったところにはウォータージャグが置いてあって、お茶が無料で振舞われていた。

このような心遣いはさほどコストがかかるものではないが、それでもわざわざやるというのは侮れない。何か僕は思い違いをしていたようだ。「安かろう悪かろう」というのはひょっとしたら違うのかもしれない。

ロビー

びびったのがこのロビー。

吹き抜けになっていて開放感がある上に、ソファが並び、ちっとも貧相な印象がない。

もちろん、吹き抜けなんて買収したもともとのホテルがそうだったのだから驚くことではないのだけど、もっとこう・・・安宿ならではの、貧相なロビーを想像していたからびっくりだ。個人経営の温泉旅館なんかでよくある、狭くて薄暗くて雑然と雑誌や新聞、置物が置いてあるロビー。そういう印象だった。

しかしこのホテルはどうだ、そういう雰囲気が皆無だ。もともとはお高いホテルだったのだろうから、それがそのまま引き継がれているというわけか。低価格に抑えられた宿に生まれ変わっても、みみっちさは出さないようにしているのだな。

フロント

フロント。

全くチープさがないし、従業員さんはジャケットを着込んでパリッとしている。ため口を聞くような人は一人もおらず、プロ意識がしっかりしている。

あれー?あれれー?

「ほらね、やっぱり安いから」と言う気満々だったのに、全然そんなことはない。値段が安いのだから、という理由で何かを我慢させられている感が見当たらない。

浴衣は自分で選ぶ

ゆかたはフロント脇の棚からセルフサービスで持っていくことになっていた。

コストカットの発想というより、むしろこちらの方がユーザーフレンドリーでありがたい。僕のように身長がある人間の場合、大抵部屋に備え付けの浴衣はサイズがあわない。で、我慢して着続けるか、それとも部屋に案内してくれた従業員さんが気を利かせて、「大きいの持ってきますねぇ。ちょっと待っててくださいねぇ」とひと手間余計に動いてくれるか。どちらにせよ面倒だから、全旅館施設一律で「ゆかたはフロントから自分で持っていってくれ」がいい。

レジャー施設券発売中

レジャー施設の前売り券が売られている。

錦絵風の男女が描かれていて、この辺りが「大江戸」っぽいといえばぽい。しかし、外観からしてもそうだけど、「大江戸温泉物語」であることはほとんどわからない。

マッサージ受付

なんでこんな写真を撮影したのか、今となっては覚えていない。

撮影したということは、「この際マッサージ受けちゃおうかなあ」と心がグラグラしたのだろう、きっと。結局マッサージは受けなかったけど。

ホワイトボードに予約がのってる

ロビー片隅にホワイトボードがすえつけてあった。「貸切風呂・カラオケBOX予約状況」と書いてある。

こういう予約状況をリアルタイムで掲示してくれるのはとてもありがたい。いちいちフロントに問い合わせて空き時間を聞き、仲間と「どうする?」「どうしようか?」と首をひねり、「すいませんちょっと考えます」といったん引き下がる、なんて面倒くさい。その点ホワイトボードだと状況が一目瞭然なので、十分に検討したうえでフロントに予約を入れることができる。フロントとしても、むしろ効率がよいだろう。

ホワイトボードは色気がないかもしれないが、こうやっていろいろな情報を掲示するには最適だ。とても良い取り組みだと思った。

うずうずする

ざっくりロビー周辺を見渡した際、ここが「大江戸温泉物語の宿だ」とわかった唯一のものがこれ。写真撮影用のパネルだった。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 初めまして
    コメントをさせて頂きます。
    記事に紹介されていた鬼怒川温泉の御苑で勤めていた者です。私が勤めていた頃はバブルの終わりの頃でした。
    平成4年頃~6、7年まで鬼怒川温泉のホテルの寮を借りて仕事をしていました。
    非常に懐かしいですね…御苑…本当に広いホテルで、今で言うダンジョンの様な(笑)新宿駅ほどではないですが、
    私は当時、宿泊されるお客様を部屋まで案内する仕事(フロント受付から客室案内係や繁忙期には仲居さんの
    サポートまで幅広く?仕事をしておりました。)をしていて、一度、お客様を部屋まで案内するのですが、フロントまで戻るには非常に時間が掛かっておりました。年末年始の忘年会や新年会や夏休み、冬休みなどとにかく休みを利用して来るお客様もたくさん来ていました。

    とにかく一番大変だったのは年末の忘年会シーズンですね、もう何百名との団体のお客様がどっと来るので、部屋までの案内も大変なことはさる事ながら、宴会も賑わい…もうお酒をたくさん召し上がるお客様も多かったので仲居さんだけでは、対応しきれずよくサポートにも駆り出されました。写真を拝見させて頂いてあの頃は…とつい懐かしんでしまいました、貴重な掲載して頂き写真をありがとうございました。

    今じゃ鬼怒川温泉も廃墟マニアには堪らない様な感じになってしまった様ですね、本当に懐かしい…。御苑は隠し部屋がたくさんありましたよ(笑)

  • はやぶささん>
    貴重な体験談、お聞かせいただきありがとうございます。往年の賑わいを実際に体験した方から聞けたことがとても嬉しいです。

    あの崖にへばりつくような建物、そして増改築を繰り返して巨大化した建物ははやぶささんが仰るような桁違いに大勢のお客さんがいらっしゃったたまものだと思います。炭鉱跡や金山跡が文化遺産として保存されているように、御苑のような超巨大ホテルはなんとか今後も経営が続いてほしいものです。団体旅行が減ってきてからまだそんなに時間が経っていませんが、すでに文化遺産的な珍しさと驚きに満ちた建物だと思います。

    御苑の前にある「ふれあい橋」、やたらと立派なんですがなぜあんな立派な橋があるのか、とても不思議です。

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