栄枯盛衰を温泉地で見た【鬼怒川温泉】

部屋

15:37
自分の部屋に、いざ潜入。

扉に手をかけた時点で、「あ、こりゃ安モンじゃないわ」ということに気が付く。おっかしいなあ、当初予定では表面の化粧板がはげかかっているような、バターンと閉まる扉だったのに。立派でやんの。

「チープな施設を見て、『ほら、やっぱり安い宿だもんね』と上から目線であら探しをする」というスタンスが間違っている、ということは既に理解していたが、それでもいちいち驚かされている。

というのも、僕がこれまで数多く宿泊してきた経験から、「1泊2食8,000円を下回る宿はそれなりに我慢を強いられる」という法則を導き出していたからだ。快適に泊まるためには10,000円、ちょっとした贅沢気分を味わうなら12,000円以上というのが僕の経済感覚での基準となっている。

※これはもちろん人によって差があるだろう。「20,000円以上の宿でないとショボい」と感じる人も世の中には多いだろうし。

今回はいくら閑散期の平日とはいえ、「1泊2食7,000円」の宿だ。期待なんて全くしていなかった。逆に、「おとなしく温泉に浸かってのんびりする」ことが主旨である温泉療養なので、期待でワクワクするような宿では困る。ショボい方がむしろ助かるくらいだ。

しかし・・・しかしッ!これはどうだ、部屋の扉を開け放った瞬間に感じる「あっ、これは安宿ではないぞ」感。

玄関

もったいぶって振り返って玄関の写真なんて撮影しちゃうくらいだもんなー。それくらい、部屋を目の当たりにするのが恐れ多い。

この玄関だって広いなオイ。自宅の玄関よりもたたきの部分が広いじゃないか。どうなってるんだ?せいぜい館内用スリッパくらいしか置かない場所なのに。贅沢なスペースだ。僕、ここで寝ろと言われたら眠れるかもしれん。

部屋内部

で、部屋の中。

わー。

畳が新しいというのがまず嬉しい。部屋の香りがとてもさわやかだ。日に焼けて黄ばんでいたり、タバコの焼け焦げがあったりはしない。

そして広々としたスペース。これは・・・10畳、か。一人で使うには広すぎるスペースだ。ここで一晩中柔道の受け身の練習でもしていようか?と思うくらいだ。

「6畳あれば3人は寝泊りできる」、というのが僕の考え方なので、ここだと5人部屋に該当する。一人で使うのは申し訳ない気になる。しかも安い値段なんだし。

窓

しかもちゃんと窓際にはテーブルと椅子つき。

この席を使いこなしたことって、案外ない。一時的に使うことはあっても、この席でゆっくりと過ごしたことは、どの旅館においても経験がないと思う。とても日本的な家具配置なんだけど。

窓の外

窓から見下ろすと、そこには鬼怒川の渓谷美。

なるほどこういうことか。ゴツゴツした岩が眼下に広がり、風光明媚だ。すばらしい!とひざを打つほどの絶景ではないけど、非日常空間として十分に楽しめる。

で、対岸には別のホテル。あれは・・・いや、廃墟じゃないな。ちゃんと営業している。「ほてる白河湯の蔵」という名前らしい。

ほほう、あの辺りが大浴場かな・・・などとついつい物色してしまう。夜になると、風呂場がよく見えるかもしれない、と考えるとソワソワしてしまう。

もちろんそんなことはありえないけど。こうも堂々とホテル同士が向かい合ってると、風呂が覗かれないようにちゃんと手が打ってあるに決まってる。

あと、たとえ見えたとしても、熟年マダムでよろしければどうぞ、ということで。いえ、さすがにそれはちょっと。

床の間と絵画

「ちょっといい部屋」の判断基準として、「床の間がある」という点が挙げられるが、この部屋はさらに油絵が飾ってあった。絵を飾るともなれば、ワンランクどころかツーランクくらい格上(おかでん比)だぞオイ。

「おや?これはゴーギャンかな?」

適当なことを言う。ここは宮崎シーガイアではないので、さすがにゴーギャンではない。←※「水曜どうでしょう」を知っている人でないと理解できない話題

クローゼット

押入れクローゼットも写真撮影。こんなの撮影して、どうするんだ。

電源

さすがにこういうところは古さが隠し切れないんだな。スイッチが今風のものではない。

空調は3段階調整になっていて、個室単位でエアコンが付いているわけではない。

冷蔵庫

湯沸しポットと、冷蔵庫。

冷蔵庫を開けてみたら、グラスが冷やしてあった。気が利いてる!・・・というより、単に置き場がなかったからだろう。

遠隔ロックをかけることができる、宿特有の冷蔵庫だ。おそらく昔はこの中にドリンクが入っていて、飲んだ分だけ精算というスタイルをとっていたのだろう。しかし今じゃ、「ご自由にお使いください」だ。こういうところで小銭を稼ぐよりも、手間を惜しんだのだろう。このご時勢、自販機で飲み物は買えるんだから、冷蔵庫ビジネスはいらない。

トイレ

トイレ。シャワーつき。

グルコサミンを売っている

トイレの壁にポスターが貼ってあった。大江戸温泉物語のものだが、グルコサミンのサプリメントを通信販売しているらしい。色々手広くやっているものだなあ。実際、お年寄りが多くこの宿を利用するだろうから、ひざ関節に良い(とされている)グルコサミン!って案外売れるのかもしれない。しかも、便座によっこいしょ、と苦労して座ったら、目の前にこのポスターだもの。

折角だから和式トイレにして、しゃがんだら目線の先にグルコサミン広告・・・の方が効果ありそうだが、そんな設備じゃお年寄りは嫌がるからダメだ。

洗面台と風呂

ユニットバスじゃなくて、全部分離しているのだから。

風呂場

今回は利用する機会はなかった。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 初めまして
    コメントをさせて頂きます。
    記事に紹介されていた鬼怒川温泉の御苑で勤めていた者です。私が勤めていた頃はバブルの終わりの頃でした。
    平成4年頃~6、7年まで鬼怒川温泉のホテルの寮を借りて仕事をしていました。
    非常に懐かしいですね…御苑…本当に広いホテルで、今で言うダンジョンの様な(笑)新宿駅ほどではないですが、
    私は当時、宿泊されるお客様を部屋まで案内する仕事(フロント受付から客室案内係や繁忙期には仲居さんの
    サポートまで幅広く?仕事をしておりました。)をしていて、一度、お客様を部屋まで案内するのですが、フロントまで戻るには非常に時間が掛かっておりました。年末年始の忘年会や新年会や夏休み、冬休みなどとにかく休みを利用して来るお客様もたくさん来ていました。

    とにかく一番大変だったのは年末の忘年会シーズンですね、もう何百名との団体のお客様がどっと来るので、部屋までの案内も大変なことはさる事ながら、宴会も賑わい…もうお酒をたくさん召し上がるお客様も多かったので仲居さんだけでは、対応しきれずよくサポートにも駆り出されました。写真を拝見させて頂いてあの頃は…とつい懐かしんでしまいました、貴重な掲載して頂き写真をありがとうございました。

    今じゃ鬼怒川温泉も廃墟マニアには堪らない様な感じになってしまった様ですね、本当に懐かしい…。御苑は隠し部屋がたくさんありましたよ(笑)

  • はやぶささん>
    貴重な体験談、お聞かせいただきありがとうございます。往年の賑わいを実際に体験した方から聞けたことがとても嬉しいです。

    あの崖にへばりつくような建物、そして増改築を繰り返して巨大化した建物ははやぶささんが仰るような桁違いに大勢のお客さんがいらっしゃったたまものだと思います。炭鉱跡や金山跡が文化遺産として保存されているように、御苑のような超巨大ホテルはなんとか今後も経営が続いてほしいものです。団体旅行が減ってきてからまだそんなに時間が経っていませんが、すでに文化遺産的な珍しさと驚きに満ちた建物だと思います。

    御苑の前にある「ふれあい橋」、やたらと立派なんですがなぜあんな立派な橋があるのか、とても不思議です。

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