
20:50
部屋の窓から見た鬼怒川温泉の夜景。
橋の照明がきれい。昼は、立ち並ぶ巨大ホテルの「業(ごう)」みたいなものが気になって仕方がないが、夜になるとそういうものは見えなくなる。ウワア、ライトアップがきれいだよ!と無邪気に楽しむことができる。
これで、ホテルの客室にほとんど明かりがともっていなければ、「うわあ・・・」となるけど、見た限りそこそこ明かりはついているようだ。思わずほっとする。

22:02
小一時間ほど部屋で屍になっていたが、いつまでも横になっているわけにはいかない。風呂だ、風呂。あくまでも今回の旅は「ひとり温泉療養シリーズ・最終章」なのであって、風呂と部屋をひたすら行き来してこそナンボだ。プロの温泉往復ニストとして、ストイックなまでに風呂に入らなくちゃ。
3階のロビーを通り抜けてみたら、既に売店は真っ暗で、もぬけの殻だった。さすがに22時まで営業したって、お客さんは買い物をしないだろう。コンビニじゃあるまいし。酒が足りないなら自販機で買えばよい。

夜食処は今まさに盛りなりけり。
昼間見たときとうってかわって、赤ちょうちんが活き活きとしている。格子戸から店内が見えるのだが、さすがに鈴なり・・・というわけにはいかなかった。多くのお客さんが、バイキングでしこたま食べただろうから夜食のキャパシティはなさそうだ。
とはいえ、何名かお客さんはいて、夜食・・・というより飲みなおしの風情だった。
よっぽど僕もえいやっ!と中に入ろうかと思ったけど、満腹なのでやめた。さっきの夕食が既にお夜食分も含んでいるので、もう今日はおしまい。

暗闇に浮かび上がる、「花園」と「夢小路」の看板。

ドアの向こうからは、ご機嫌に十八番を歌ってらっしゃる声が響いてきた。やっぱりこういうのが好きな人は好きなんだな。

露天風呂に入ったのち、風呂の近くにあるまんがコーナーに立ち寄る。折角だから何か一冊。
手に取ったのは、「テルマエ・ロマエ」だった。ちょうどいいじゃないか、温泉に来て、温泉漫画を読むだなんて。しばらくこの漫画に没頭する。

まんがコーナーの隣に、マッサージチェアがあるのでその様子も見に行った。もうね、何でも見ておかないと気が済まないんだ。悪い癖だ。こういうのが行き過ぎると、「あれもやりたい、これもやりたい、でも何もできない。うワーッ」と頭が一杯になって疲れ果てる。で、昨年12月頃に逆戻りだ。また那須湯本温泉からやり直しだから、ほどほどにしておかなくては。
「無重力リクライニング」という売り文句がドキドキさせられる。なんだそのニュートンの法則をなかったかのようにするキャッチコピーは。
「ファーストクラスの乗り心地をあなたへ」だって。うひゃー、おら、ファーストクラスなんて乗ったことないだべよー。
それにしても、折角のキャッチコピーなのに、商品名が「あんま王」というのはかなりギャップを感じる。急に和風になっちゃった。
無料かな?と甘い期待を抱いていたのだが、さすがあんま王、納税の義務が発生するようだ。無情にも100円玉を入れないと王様は動かないようなので、やめておいた。無重力ってのはとても気になったけど、まさか想像を絶するレベルで宙に浮くようなことはあるまい?
鬼怒川温泉駅行きのバスが多頻度運行されているようだ。そのほか、東武ワールドスクウェア、日光江戸村にも行くらしい。
明日どうしようかな・・・鬼怒川界隈にあるアミューズメントスポットはほとんど利用したことがない。この際だから行ってみようかとも思ったが、一人で行っても寒々しい気がする。屋外施設だし。明日は日光東照宮界隈をうろついてみようかと思っている。
バスは要予約、しかも有料なので僕にとっては不要。駅までは歩いていこうと思う。

ロビーに、「開運セレブガチャドリームゲット」なるガチャガチャが置いてあった。ガチャガチャといえば100円~せいぜい数百円までのものだが、どうやらコイツは1,000円札を要求するらしい。セレブよのぅ。そのせいで、ガチャにありがちな硬貨投入部なんてものは存在しない。札を入れろ、札を!というわけだ。うわあ高飛車。
そもそも、ガチャというのは中のカプセルを取り出す際、レバーをガチャガチャといわせながら回転させることからきている。でもこいつはセレブなので、ボタンを一発押すだけだ。電動でカプセルが出てくる。すげえ!セレブだ!
で、そのカプセルの中に商品引換券が入っていたら、ガチャの下にあるショーケース内の商品がもらえるんだと。

ショーケース。
妖怪ウォッチのおもちゃが目を惹くが、一応カシオや富士フィルムのデジカメ、任天堂3DS・・・といったものもある。デジカメなんぞは型落ち品なのだろうが、だとしても1,000円では到底買えるものではないので、当たればラッキーだ。
とはいえ、当然コイツラがぽんぽんと当たると商売にはならない。なかなか当たらないんだろう。だとすれば、苦労して当てたご褒美がこれじゃあ・・・という気にはなる。正直、いらん。
さすがセレブは僕と価値観が違うらしい。きっと、こんなのは手慰み程度にやるのだろう。ショーケースの中のものなんてどうでもよくって。
「ちょっと今回の旅では財布が分厚くなりすぎたな。お札をもっと減らしたいから、ここで無駄遣いしていくか」
くらいのことがしれっとできてこそ、セレブだ。

このホテルのリーフレットが手に入ったので、中を見てみた。
大広間の写真がバーンと出ていて、お膳と座椅子がずらっと並んでいる様は圧巻。そうか、こういう大宴会は今でも承っているのだな。大江戸温泉物語になったからといって、規定路線を全否定というわけではない。
おっと、右中央にさっき気になった「VIP会議室」の写真もあった。
あれー?普通だな、召使いの姿などどこにもないし。
ただ、さすがVIPだな!と思ったのは、照明が蛍光灯ではなく暖色の明かりだったということ。それ以外はよくわからなかった。
読んでいたフリーペーパーに、あさやホテルの紹介記事が掲載されていた。うわ、なんだこのバイキングは!和洋中約100種が並ぶんだそうで、見るからに壮観。あーこりゃ建物外観どおり中身も豪華だわーこういうのがセレブだわーと思う。もっとも、セレブがバイキングを食べるのかどうかは知らないけど。
館内施設では、平成26年秋「ザ・バー」と「きぬの蔵」がグランドオープン。「ザ・バー」ではカクテルを愉しみながらラグジュアリーな夜のひと時を。「きぬの蔵」では、大人の隠れ家のような空間で、厳選された地酒と焼酎が愉しめる。
だってさ。店名を「ザ・バー」にしちゃうなんて、大層な自信だ。おい、セレブはみんなあさやに集まれ!このホテルでセレブガチャなんてやってる場合じゃないぞ!
それにしても、いったんは倒産したのに産業再生機構から資金注入を受けて今じゃこれだもんなぁ。世の中不公平にできているもんだ。

明日何をするか、全く何も考えていないのでそろそろ考えなくては。
とりあえず日光に向かい、そこで散策しようと思う。折角だから湯波を食べようと思うし、なにやら御用邸があったりミステリースポットがあったり、東照宮以外にも面白い場所がありそうだから。

月が出る鬼怒川温泉。
明日は晴れそうだ。ではおやすみなさい。
2015年02月27日(金) 2日目

2日目の夜が明けた。
部屋の窓は西向きで、鬼怒川温泉自体が谷に位置しているのでまだ暗い。眼下にある、対岸のホテルなどはまだ夜が明けていない感じだ。
何か既視感がある絵だ。キャラクターデザインは高名な人にやってもらったのだろうか?ディズニーランドのアニメCMでこんなのがあったな、とふと思った。
温泉旅館に泊まっていて、ふとこういうのを見るとちょっとギョッとする。妙にコマーシャリズムだからだ。温泉宿というのは個人経営であり、資本がガツンと入ってます感というのは乏しいものだ。だからアニメ絵を用いたポスターなんて、違和感がある。
ああそうか、大江戸温泉物語だからこそこういうことができるんだな、と感心させられる。
ちなみに大江戸温泉物語は2016年夏、温泉関連施設専門のREITをおったてて東京証券取引所に上場している。その名も「大江戸温泉リート投資法人」。かなり温泉の運用に自信があるようだ。名前がすげえな、何をやっている投資法人だかよくわからないという。冗談みたいなネーミングとも言える。
コメント
コメント一覧 (2件)
初めまして
コメントをさせて頂きます。
記事に紹介されていた鬼怒川温泉の御苑で勤めていた者です。私が勤めていた頃はバブルの終わりの頃でした。
平成4年頃~6、7年まで鬼怒川温泉のホテルの寮を借りて仕事をしていました。
非常に懐かしいですね…御苑…本当に広いホテルで、今で言うダンジョンの様な(笑)新宿駅ほどではないですが、
私は当時、宿泊されるお客様を部屋まで案内する仕事(フロント受付から客室案内係や繁忙期には仲居さんの
サポートまで幅広く?仕事をしておりました。)をしていて、一度、お客様を部屋まで案内するのですが、フロントまで戻るには非常に時間が掛かっておりました。年末年始の忘年会や新年会や夏休み、冬休みなどとにかく休みを利用して来るお客様もたくさん来ていました。
とにかく一番大変だったのは年末の忘年会シーズンですね、もう何百名との団体のお客様がどっと来るので、部屋までの案内も大変なことはさる事ながら、宴会も賑わい…もうお酒をたくさん召し上がるお客様も多かったので仲居さんだけでは、対応しきれずよくサポートにも駆り出されました。写真を拝見させて頂いてあの頃は…とつい懐かしんでしまいました、貴重な掲載して頂き写真をありがとうございました。
今じゃ鬼怒川温泉も廃墟マニアには堪らない様な感じになってしまった様ですね、本当に懐かしい…。御苑は隠し部屋がたくさんありましたよ(笑)
はやぶささん>
貴重な体験談、お聞かせいただきありがとうございます。往年の賑わいを実際に体験した方から聞けたことがとても嬉しいです。
あの崖にへばりつくような建物、そして増改築を繰り返して巨大化した建物ははやぶささんが仰るような桁違いに大勢のお客さんがいらっしゃったたまものだと思います。炭鉱跡や金山跡が文化遺産として保存されているように、御苑のような超巨大ホテルはなんとか今後も経営が続いてほしいものです。団体旅行が減ってきてからまだそんなに時間が経っていませんが、すでに文化遺産的な珍しさと驚きに満ちた建物だと思います。
御苑の前にある「ふれあい橋」、やたらと立派なんですがなぜあんな立派な橋があるのか、とても不思議です。