潜入、湯治宿【大沢温泉】

駅に塾がある

14:57
路線バスをまんまと取り逃がしてしまったけど、このあと15:25に送迎バスがやってくる。それに乗れば問題はない。慌ててタクシーを使ったりしなくてもいい。

ではなんで最初から送迎バスに乗ろうとしなかったのかというと、宿に到着する時間が遅くなるからだ。何度もこのサイトで書いてきたが、温泉旅館泊で最大の贅沢な時間って、「チェックインしてから夕食までの時間」。これに尽きる。だから、できるだけ早くチェックインしたいんだ。15:25のバスに乗ってたら、チェックインが16時になってしまう。それだと、あっという間に日が暮れてしまう。

・・・まあ、結果的には路線バスを取り逃がしてしまったので、送迎バスに乗るしかないのだけど。でもいいんだ、気持ちを切り替えよう。ここが素泊まりのメリットで、「お夕食は大広間で18時からご用意できます」なんてチェックイン時に言われないんだから。食事処の営業時間内に、好きな時にいけばいい。今日はお昼をしっかり食べたのだから、夕食は遅くしてもいいな。

待て待て、ちょっと待て!

おかしいな、温泉療養というのは、食事時間が宿都合で固められているからこそ、規則正しい生活と「あれこれ思い悩まなくて済む」メリットがある!と僕は主張していたはずだ。しかし今さっきの発言はなんだ?敢えて自ら「たが」をはずそうとしている。いかんなーよろしくないなー。

こりゃ罰として、温泉地獄だな。もう許して、というくらいお風呂に入って、ぐったり疲労困憊しちゃる。

さて、送迎バスの到着までしばらく時間がある。花巻駅を観察してみることにした。

駅構内に塾がある、というのは初めて見た。駅舎だぞ?「駅ビルの中に入居しているテナントのうちの一つ」なんかじゃないぞ?まさか塾講師はJRに雇われている、というわけではないと思うが、びっくりした。

飲食店が駅構内にある

15:04
花巻駅には、立派な売店がある。ちょっとびっくりするくらいだ。改札脇に、自動ドアで仕切られた広い空間があり、そこで飲食や物販が行われていた。

自動ドアの頭上には「花巻駅マチアイ」と書かれた看板が掲げられてある。岩手のスーパーヒーロー、宮沢賢治が書いたっぽい字体だ。「宮沢賢治フォント」ってのを作ったら、岩手県限定で売れるかもしれん。

この看板名通り、中は待合室も兼ねている。駅ナカ施設的な飲食物販だけでなく、ベンチもあるという作りだ。電車の便数が少ない中、吹きっさらしの待合所というのは冬だとイヤだ。だからこうやって自動扉で区切られて中にちゃんとお店もあるような場所、というのはとてもありがたい。

訳ありじゃがスティック

「どっさり訳ありじゃがスティック」というのが売られていたので、買ってしまった。温泉療養3泊4日に備えて何もおやつを買っていなかったし、もともとポテチ類は大好物だからだ。

それにしても、「訳あり」がどっさり、って良くないんじゃないかと思うがどうなんだろう。もっと生産ラインを見直して、ちゃんと「訳なし」のものをどっさり生産しようよ、と思う。まあ、「訳あり」と謳われているのでついつい買ってしまった僕はまんまとしてやられたと思う。

こいつ、量が多いこともあって、訳ありのクセに大して安くなかったと記憶している。結局大沢温泉滞在中に消費されることはなく、東京に持ち帰ることになってしまった。岩手土産が「訳ありじゃがスティック」になるとは。

送迎バス乗り場

今度こそバスを逃さないように、送迎バス乗り場の位置を確認しておく。よし、駅改札出てほど近いところだ。ここなら、不慮の「予定より早くバスが来ちゃいました。誰も乗る人いないなら、前倒しで先にいっちゃうよー」という事態にも対応できそうだ。これを逃したら、今度こそタクシーだ。

送迎バス

15:22
「花巻南温泉郷バス」と書かれた白いバスがやってきた。これがこれから大沢温泉に僕を連れて行ってくれる送迎バスだ。ちなみに値段は無料。

「花巻南温泉郷バス」と名乗っているだけあって、道中いろいろな温泉地に立ち寄っていく。それぞれの温泉宿がお金を出し合って共同運行しているのだろう。

人でいっぱい

月曜日夕方だというのに、バスは満員。花巻駅から乗車する人は比較的少なく、多くは既に乗車済みだった。このバスの始発駅は、東北新幹線新花巻駅だからだ。きっと遠方から訪れたお客さんばかりなのだろう。そりゃそうか、近郊の人だったら、マイカーで温泉に向かう。

花巻駅から僕と一緒に乗り込んだのは、学生と思われる若い男女だった。今晩の自炊について相談をしているのがチラチラと聞こえる。なるほど、お金に余裕がない学生にとって、湯治宿は格安で温泉旅行が楽しめる格好の場所なのだな。学生だったら、「飯はカップラーメンでもいいだろ」と割り切りもできるだろうし、「大人ならではの贅沢」を知らない分湯治宿を受け入れやすいと思う。

一方、若き老害おかでんは「安い宿に泊まらないと、自分の財布うんぬん以前に社会的な視線が怖い」という無駄なプレッシャーで湯治宿を選択している。ああいやだね、歳を取るって。「療養なんだから好きにさせてくれ」と開き直ればいいのに。そうやって「見えない世間体と一人で戦う」から、自分勝手に疲れ果ててぐったりするんだ。

雪原

でも安心して欲しい、そんなキミをこれからいで湯が癒やしてくれるのだ。だからここまで来たんだ。ほら、車窓の外を見ろ。あっという間に住宅地は消え失せ、銀世界だ。

この景色を見るだけで、転地効果で少し身体と心が楽になる。

これでオムツでもしていて、この景色をみつつ着席したまま放尿、なんてやったら人生観が変わるかもしれん。でもそれは開けてはいけない扉のような気がするからやめとけ。

15:42
バスはまず最初の温泉地に到着した。「路線バス」ではなく「送迎バス(ただし乗り合い)」なので、びっくりするくらい宿の玄関口にバスを横付けさせる。一瞬、自爆テロで宿に突撃して破壊する気か!?と焦ったくらいだ。

温泉1

普通、そういう絵面を見る時って、「さあ下りる準備をしよう」と自分も身構えているものだ。しかし、自分はまだ当分下りない、というリラックスした状態でバーンと別の宿に横付けされると、なんだか見慣れない光景でぞわぞわする。

ちなみにこの宿の名前は、「悠(はるか)の湯 風の季(とき)」というらしい。宿泊業界にもキラキラネームの波が押し寄せているのか。

玄関先しかわからないけど、なんだか感じがよさそうな宿ではある。

15:44
志度平温泉が見えてきた。

温泉2

温泉旅館のショールームみたいな感じで、ちょこっと楽しい。温泉旅館の玄関先に到着しました、お客さんがおりました、出発しました、しばらく進むと前方からまた別の旅館が見えて来ました・・・を繰り返すからだ。

で、送迎バスなのだから、宿の方がお出迎えに玄関先までやってきている場合もある。そういう応対をバスからぼんやり眺めているのも、楽しい。

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