潜入、湯治宿【大沢温泉】

花巻行きのバス

09:48
宿からバス停に向かったら、ほぼ間髪入れずにバスがやってきた。ああそうだ、都会暮らしをしていたら、「バスというのはお客の乗り降りや信号の都合で遅延して当たり前」という認識だけど、こういうところだったらほぼジャストタイムで運行されるのだな。

行き先が「イトーヨーカドー」になっている、というのには苦笑してしまう。花巻駅、というのはあくまでも経由地にすぎないわけだ。なんだか笑えない冗談のようだ。冗談じゃなくて、これが現実なのだけど。

さあ!イトーヨーカドーに行くぞ!

気合いが入る。

いやいや、それは違うから。でも、寝過ごすと、肝心の花巻駅を通過してイトーヨーカドーに行ってしまう。油断大敵だ。

これまでは、ひたすらダラダラする時間帯だった。でもこれからは「気を抜くと命をとられる」都会に戻る。ちょっと気を引き締めないと。

さようなら花巻南温泉郷

09:55
バスは、ずいずいと道中の温泉地を通り過ぎながら花巻市外へと向かっていく。往路に使った無料送迎バスとは違い、こちとら路線バスだ。いちいち温泉旅館のご都合なんて気にしちゃいないので、宿の玄関先までお客様をお出迎え、ということはない。バス停はあちこちにあるのだけど、気分は快速運転、といった感じ。

最後、「花巻南温泉郷」と書かれたゲートを潜り抜けて、温泉密集エリアは終了となった。ああ、いよいよ現実に戻るんだな、とあらためて覚悟をせざるをえない瞬間。

都会モンと目を合わせたらブン殴られるかもしれないから、できるだけ伏し目で歩こう、とか、この悟りの境地を体現するために、家に戻ったら尺八を習って、虚無僧でも始めようか、とかいろいろ考える。

ああいかん、煩悩のかたまりだ相変わらず。

花巻駅改札

10:19
寝過ごして気がついたらイトーヨーカドー、という惨事にいたることなく、無事花巻駅で下車。ちょうど5分後に盛岡行きの電車がやってくるよ、と電光掲示板に表示が出ている。さすが、路線バスはこのあたりちゃんと考えている。びしっと乗り継ぎができるようになっているのだろう。

しかもその盛岡行きは快速だ。あと1時間大沢温泉で待機して、花巻南温泉郷の無料路線バスを利用しなかったのはまさにこの電車に乗りたかったからだ。出だしが1時間遅れる上に、快速に乗れない。これでは盛岡滞在時間がえらく短くなってしまう。

というか、盛岡市街観光をする気満々、というのが果たして良いことなのかどうか、非常に疑問を感じてはいる。まだ初々しかった2ヶ月前の那須湯本療養のときは、観光をできるだけ廃することを決心していたはずだ。前月の四万温泉もしかり。それが今じゃなんだ?単なる温泉観光旅行じゃねぇか。

まあ、それだけ「普通に観光をしても、精神的な負担がなくなってきた」ということでもある。さすがに2ヶ月前の僕の体調において、「盛岡とか花巻で観光するよー」って決めたら、徹夜してでもあれこれ調べまくり、完璧な旅行プランを作っていたはずだ。分刻みのヤツ。で、当日もその分刻みがちゃんと予定通りになるよう、すっげえカリカリしっぱなしだったはずだ。それが今回は気が楽なので、良しとしよう。

東北本線

さすがに岩手県まで来て、北上とか新花巻から新幹線に乗ってまっすぐ帰京、というのはあんまりだ。ご当地グルメの花巻バーガーは気になるけど、これはいずれまた機会があれば。

11:03
電車は盛岡駅に到着。「花巻空港駅」でさえもすっ飛ばされる。交通の要衝となっている空港。その名前を冠した駅でさえスルーされるというのはかなり切ない。

あまり聞いたことのない空港なので、一日に2本とか3本程度しか定期便がない超ローカル空港ではないか?と思った。しかし調べてみると、新千歳、伊丹、小牧、福岡便が就航していて、その数12本もあった。わおう、そこそこ多い部類だ。大変失礼いたしました。羽田便がないので、単に東京界隈に住んでいる人からは縁遠かっただけだ。いかんね、東京主観主義・東京偏重主義に自分が染まりきってしまっている。

わんこキャラ

下車してみて気がついたけど、ラベンダー色に塗られた東北本線の側面には、「そばっち」なるキャラクターが描かれていた。

わんこきょうだい、というヤツだ。詳しくは知らないので、初めて見た。わざわざJRの車体に貼り付けるくらいだから、相当気合いを入れてPRしているのだろう。

中央の「そばっち」というのはすぐにわかる。わんこそばといえば全国区の知名度を誇る岩手の名物だ。で、「こくっち」?・・・なんだそれ。ああ、雑穀の「こく」からきてるのか。あわ、ひえ、いなきびなどの生産高が岩手県は日本一なんだって。へー、知らなかった。

でも、あわとかひえって食べないなぁ。雑穀米なら、年に数度食べる機会があるかないか程度あるけど、それくらいだ。健康食品という位置づけは確立していると思うけど、それ以上の「おいしく・楽しく食べる」という発想は一般の人にあまりないように思う。せいぜい、「小鳥のえさ」という認識か。

ほかにも、「とふっち」「おもっち」「うにっち」といった兄弟が並ぶ。「おもっち」は緑色、というのがいかにも、だ。言うまでもなくずんだもちを意識した色というわけだ。「ずんだ」といえば宮城県のイメージが強いけど、岩手県でも愛されているんだな。

わんこロード

11:06
盛岡駅の東西自由連絡通路は、どうやら「わんこロード」というらしい。てっきり、「わんこそば」なんてのは岩手県民以外の人たちが「えっ、岩手県出身?じゃあ毎日わんこそば食べてたの~?」なんて冷やかしに使う言葉であり、当の岩手県民からしたらうんざりしているキーワードかと思っていた。でもさっきの「そばっち」からしても、どうやらガチで岩手の人は蕎麦とかわんこが好きっぽい。

わんこロード方面には、「IGRいわて銀河鉄道線」の改札がある、という表記があった。アンドロメダに行く銀河鉄道999が発着するわけではなく、岩手県を走るローカル路線だ。東北新幹線が八戸に延伸した際、JR東北本線が第三セクターとして切り離された路線。新幹線ができるたびにJR在来線がズタズタになっていく・・・なんかもうむちゃくちゃだな。ちなみに青森県側の旧JR東北本線は、運営母体が変わるので「青い森鉄道」になる。青春18きっぷを愛用する旅行者は受難の時代だ。移動できる場所の制約が日に日に増えていく。

IGRいわて銀河鉄道の主要株主はどうなっているのかと思って調べてみたら、岩手県が54%、盛岡市が16%・・・と岩手県および岩手県北部の自治体が占めている。なるほど、これだと青森エリアと経営を分離しないといけないわけだ。

ついでに、どういう業務をやっているのかもチラ見してみたら、かなり手広くやっているようだ。駅構内コンビニの延長線上として「郵便切手及び収入印紙の売りさばき並びに酒類及びたばこの販売業」なんてのがあるのはわかる。しかし「洗車場業」とか「中古品等の小売業」というのはすごいなと思うし、造園や農林業までやっているとなれば一体この会社は何がメインなのか、ぱっと見わからなくなってくる。

従業員数は230名だということだけど、メインの旅客業務およびその周辺スタッフに随分人を割いているはずだ。となると、それ以外の業務というのはもう個人商店レベルでやっているんじゃなかろうかというほど、社員数と「やる業務」の種類とがあっていない。「自分たちができそうなこと」をとりあえず定款にてんこ盛りにしました、ということなんだと思う。実際にそれらを事業としてやっているかどうかは別。

コインロッカーに荷物を預ける

11:09
今回の旅行はそれほど大きな荷物ではなかったけど、これからの盛岡市街の観光にあたって邪魔なのは間違いない。なにしろ、あちこちを歩いて回ろうとしているからだ。

なので、コインロッカーに荷物を預けておいた。

コインロッカーは、無機質かつ画一的な光景になるので、道迷いならぬロッカー迷いが多発するようだ。そのため、ロッカーの場所をわかりやすくするために、このエリアでは「うさぎさんマーク」が貼ってあった。

もし、自分のロッカーがどこだかわからなくなったら、駅員さんなどに「うさぎさんロッカーはどこですか?」と聞けば教えてもらえる、というわけだな。

それにしてもこの絵は味わい深いな、幼稚園児向けの絵本みたいだ。

盛岡駅前

11:12
さあ、身軽になったところで盛岡観光スタート。いろいろ回るぞー。

・・・ああ、何一つ変わっちゃいない。短時間であれもこれもと詰め込み、しかもそれを「もっとも効率よく」巡るための一筆書き作戦をしこたま考えるという。

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