潜入、湯治宿【大沢温泉】

帳場近くの畳の間

11:42
豊沢の湯に入り、洗濯物をコインランドリーからサルベージ。その後は、部屋に戻りがてら帳場の脇にあるロビー的な空間でしばらくくつろぐことにした。

畳アンドちゃぶ台的な机。なんだか馴染みがない空間なので落ち着かない。和風旅館であっても、玄関先にあるロビー部分というのはソファという形が多いからだ。ソファだったら、すっと座って、気が済んだらバッと立ち上がることができる。しかし、畳だとどっしりと座ることになるため、僅かに勇気が必要となる。本当にここでくつろいじゃって良いのだろうか?って。

写真奥に事務員さんのような方が机に向かっているが、あれが自炊部における帳場。部屋数の割には、非常に小さくて驚かされる。こんなので仕事が回るのか!?と。

でもそれが自炊部ならではだ。「部屋の鍵を預かる」なんていう概念がそもそもない。部屋に鍵なんてないのだから。だから、鍵を保管する棚なんてものは帳場にはない。そして、「お食事の際にビール1本と日本酒をお飲みになられていますので、ええと、お会計は・・・」なんてややこしいことがない。そんなものは自己解決か、または「食事処やはぎ」で完結している。帳場では知ったことではない。

もちろん、やれ浴衣を借りるだ、こたつを借りるだのと細かい計算は必要だけど、長逗留する人が多いのだろうし、頻繁にチェックイン・チェックアウトが繰り返されないのかもしれない。

とかなんとか、ぼんやりと考えてみる。

たんす

この「ロビー」なのか「待合室」なのかわからない畳の間脇には、古いたんすが置いてあった。飾りなのか、実際に使っているのかは不明。重厚な作りで、取っ手や棚の継ぎ目は金具。「突っ張り棒みたいな耐震補強がされていないじゃないか!」と今どきなら指摘されそうだけど、たんすそのものが重たくて倒れないんじゃないかという気さえする。いや、実際は大きな地震が来たら倒れるんだけど。

実家にもこの手のたんすが多数あるのだけど、とにかく引き出しを開け閉めするだけでも力仕事だ。「さあ、引き出しを開けるぞ」と覚悟を決め、二の腕に力を込めて両足を踏ん張らないといけない。昔の人ってのは、日常生活の動作全てにおいて、力が必要だったんだろうな・・・と思わずにはいられない。玄関の引き戸を開けるのだって、滑りが悪くてガッタンガッタン言わせながらだったんだろうし。それが今のご時世、サッシの網戸がスムーズに動かない!というだけで苛立ってしまうくらいだ。なんて世の中なめらかに進化したんだ。

地震でかなり揺れた

地震で思い出した。今朝がた、岩手県で結構強い地震が起きたんだった。携帯電話が緊急地震速報を発して怪しい警報音を発したし、実際建物が随分と揺れた。さすが古い建物だけあって、揺れ方もヤバい。普段、「比較的新しい建造物」の中にいるのが当たり前の生活なので、古い建物の揺れというのは心底身の危険を感じさせられた。

津波警報も出ていた。さすがに内陸部の花巻市には影響がないが、大沢の湯が大津波を起こして僕の部屋が飲まれる、なんてことはないよな?さすがに。

学習中

朝8時過ぎに一発デカい地震があったあと、さほど余震はないようなので今は平静を取り戻している。

さて、卓上にラミネート加工された宿の案内が置いてあったのでそれを読んでみる。ここにいても特にやることがないし。

解説

「自炊部のご利用について」という手書きで暖かみのある解説ペーパーが用意されていた。丁寧に書かれていて交換が持てるが、二次元バーコードも印刷されていてなかなか侮れない。

この自炊部の仕組みについてはこれまでさんざん紹介してきたとおりで、今更新しい情報はない。

「部屋料金」+「借り物(寝具類)」+「こたつ・ストーブ・扇風機」=宿泊料金

という考え方が自炊部だ。で、僕みたいに厳寒期の2月に訪れていたら、何かと借り物や暖房器具が多くなるので値段が高く付く。気候がよろしい春とか秋に訪れるのが最も安い、というわけだ。

で、部屋単体の料金についての記述があったのだが、一人泊の場合2,157円~3,506円、二人以上泊の場合1,972円~2,435円となっていた。やっすぅ。ただし、寝具すらないので、全部自分で持ち込むことが前提となるわけだが。

そんな人おるんか?と思っていたら、この後実際にそういう人を見つけたのでびっくりした。自炊部玄関の脇にある荷物搬出用?の扉をバーンと開けて軽トラが横付けになっていたので「何かの作業かな?」と思ったら、じいさまがビニール紐で縛り上げた布団とか衣類が入っていると思われる風呂敷、その他諸々を下ろしている最中だった。まるで引っ越し。あ、本当にこういうガチ湯治の人っているんだ!と驚いた。

料金早見表

「宿泊・日帰り料金目安早見表(冬)」というのがあった。

確かに早見表かもしれないけど、いろいろなパターンがありすぎて早見できねぇ、という内容ではある。

値段からすると、僕は「タイプ3・スタンダード」の「1人」で泊まっているのだと思う(楽天トラベル経由で申し込んでいるので、正直よくわかっていない)。この場合、

室料2,500円+布団一式735円+こたつストーブ974円+丹前ゆかた270円=4,479円

となる。「タイプ1」になるとあと100円くらい安くなるようだけど、中庭に面していたりして部屋の立地はあまりよくないようだ。それを思えば、この値段にはとても満足している。ちなみに、朝昼晩3食を「やはぎ」で食べるので、結局丸一日滞在すると1泊3食で8,000円くらいか。

旅行前、予約を入れる際に「こたつがあればストーブはいらないかな?いや、ストーブを頼むかわりに丹前無しにしようかな?」などとあれこれ思案しまくったのだが、結論としては「冬なのだから、全部いるわボケ」が正解。防寒は最大限しないと、この冬の厳しさには耐えられん。

水車

12:52
いったん部屋に戻ってくつろいだ後、お昼ご飯を食べに「やはぎ」に向かった。

すると、やはぎは人でいっぱい。えっ、朝も夜もそんなに混んでいないのに、昼は激混みなのか!

外来入浴の人が風呂上がりにメシ喰っていくというのもあるのだろうし、これだけ充実したメシ屋は近隣にあまりないだろうから、メシ目的にやってくる人だっているかもしれない。とにかく、入店を諦めざるをえないくらいだった。

いやでも、売店で何か買って小腹を満たすというのは寂しすぎる。やっぱり「旅情」だから。単にカロリーを取ればいいっていうもんじゃない。かといって、この大沢温泉界隈の集落に何か飲食店があるわけでもない。

バスに乗って花巻市街に出る・・・ということもちらっと考えたが、すぐに却下した。そんなことやったらウキウキしてしまうだろ。ダメだダメだ、あくまでも軟禁されているくらいの感覚で、おとなしくこの地で時間を過ごすことに療養の意味がある。

「花巻バーガー、っていうのを今花巻市は地元B級グルメとして推しているんだよなあ」

とか余計なことは考えてはいかん。

とりあえず、大沢温泉館内の探検は終わったので、外に出てみることにした。散歩がてら外に出て、戻って来た頃には食堂が空いていることを期待して。

自炊部を出たところに、水車があった。あれ?菊水館にも水車があったけど、こっちにもあるのか。どちらも川からは離れていて位置が高い場所にあるので、移設したものなのだろう。

そしてその奥には鳥居が見える。温泉神社、というのがあるらしい。「温泉神社」というのは温泉地にはよくあるものだ。こんこんとわき出る薬効あるお湯に神の存在を見た、というのはよくわかる話だし、それがこれからも湧き続けますようにと願うのもごもっともだ。

温泉神社

だからといって、うわあ!なんだこれ。

ご神体?がどう見ても男根だ。「何をいうか、こけしだ」と言われてもいろんな意味で納得できないぞ。

そうか、意外だったな、温泉の神様を男性のシンボルに見立てるとは。こんこんと湧き出る、というのは温泉も性欲も同じという発想なのだろうか。

それとも、男根から温泉が出で、出たものは湯船(女陰を暗示)に溜まる、ということか。いやさすがにそれは考えすぎか。

建物

12:54
あれ・・・学校の体育館のような建物がある。

場所からして、昨日館内探検の際に発見した「卓球台が置いてあった講堂」なのだろう。宿の付帯施設にしてはちょっと形が武骨だ。まさに学校の校舎、といった感じ。

建物入口

入口のところには、8/31で閉校しました、という記述とともに、「昭和の学校大沢分校」と書かれてあった。どうやら、昔は学校として使われていた施設の一部を保存し、こうやって使える状態にしていたらしい。でもそれも終了してしまったようだ。

昭和の学校、という存在自体は、この先に行った新鉛温泉のところに「山の駅」という肩書きでオープンしているらしい。昭和レトロを標榜した、ホーロー看板や古い映画ポスターなどが展示されている有料施設っぽい。

大沢温泉駐車場

13:08
大沢温泉の駐車場。まだ地面が氷でガリガリ。

それにしても車の多いことよ。平日昼間でほぼ駐車場が埋まってしまっているのだから驚かされる。

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