潜入、湯治宿【大沢温泉】

2015年02月18日(水) 3日目

こたつ開放

07:16
夜中、寒さで目が覚めた。部屋の四隅のうち二方面が窓で、一方面がふすまで廊下に繋がっている。窓に障子がついていようがどうしようが、冷気の侵入は容赦ない。

「できるだけ安く泊まろう」なんて思って、寝袋持参ということにしなくて良かった。僕が持っている寝袋は「気温0度まで対応可能」と謳っているけど、実際のところは10度を下回ったあたりから寒さを感じるようになる。そりゃそうだ、寝袋はジップロックじゃない。どうしても隙間ができるので、そこから冷気が寝袋内に侵入するからだ。

ストーブをつける、という対応もできたが、寝ている間に直火があるというのはどうも薄気味悪いものだ。現実的に火事にはなることはないし、一酸化炭素中毒になることもない。でも万が一があったときに「一晩の眠り」が「永久(とわ)の眠り」になってしまったのではたまらない。なのでストーブ点火はやめておいた。

そのかわり、こたつ布団をめくり上げて、こたつで部屋を暖めるということをやってみた。電気ストーブ代わりだ。しかし、こたつというのは「布団をかぶせて密閉空間を作って、ちょうど心地よい温度」になるように設計されている。布団全開の状態で部屋を暖めようだなんて、大それた作りにはなっていない。

結局諦めて、「寒いのう」と言いながらもう一枚厚着をして寝直した。

そんな寝苦しい夜が明けての3日目朝。

朝の大沢の湯

07:19
今日も曲がり橋を渡って菊水館にある「南部の湯」を朝風呂会場とした。朝一発目の入浴は、顔を洗ったりひげをそったりしたい。なので、カランがある風呂場のほうが何かと便利だからだ。なので、名物露天である大沢の湯が部屋のすぐ近くにありながらのスルーだ。

大沢の湯には、入浴者が誰もいなかった。平日ということで宿泊客が少ないことに加え、平日泊できて大沢温泉に泊まるような人は高齢者が多いようで、朝がめっぽう早いからだろう。7時過ぎだなんて、人生の大先輩諸氏からすれば「お昼どき」くらいかもしれない。

朝食

07:57
「やはぎ」で朝ごはんを食べる。うん、こういう朝ごはん、いいなあ。「折角の宿泊なんだから、『おおっ!?』とテンションが上がるご飯を」という気持ちは当然あるけど、今回はテンションを上げない日常を非日常空間で創出する、というのがテーマだ。

既に花巻観光をしたり、館内探検をしたりと趣旨から外れつつあるけど、こうやってきわめて普通な朝ごはんを目の前にすると気持ちが新たになる。よし、今日も一日地味に過ごそう、と。

この際、「今日も一日頑張ろう」だなんて、一切考えちゃいけない。

やはぎに置いてある本

08:00
「やはぎ」には雑誌が置いてある書棚がある。料理を待つ間ご覧ください、というわけだが、品揃えを見てみたら見事に車雑誌だらけでびっくりした。しかも、純粋に新車のレビューなどが乗っているタイプのものではなく、「オレの愛車を世界で一つだけの車にカスタマイズするぜ」系の雑誌が中心だった。

岩手県民の県民性なのか、それともこの食堂を利用する人がそういう趣味の人だらけなのか、それともお店の人の愛読誌なのか。

普通なら、旅行雑誌だったり、「自遊人」みたいなタイプの雑誌だったり、せいぜい「dancyu」みたいなグルメ雑誌だったりするものだ。それがこの車雑誌なのだから、面白い。

牛乳売り

08:28
食後、部屋に戻ってくつろいでいると、昨日同様に廊下でガチャガチャと音が聞こえてきた。瓶同士がぶつかる音だ。あ、牛乳屋さん、今日も来てくれているんだ。

自分の部屋は大沢の湯に通じる廊下のどん詰まりにあるため、牛乳屋さんが部屋の前までやってこないと思われる。なので、まだガチャガチャ音が遠くから聞こえている段階から、財布を握り締めて廊下に首を突き出し待ち構えた。

やってきたのは、モロに牛乳屋!といった人ではなく、女性の従業員さんだった。両手にかごを持ち、廊下を売り歩いていた。「牛乳~、牛乳はいかがですか~!」といった売り文句はないし、部屋をノックして御用聞きをすることもしない。「このガチャガチャ音で察してくれ」というわけだ。はい、わたくし、十分に察しました。

かごの中には、小岩井の牛乳シリーズがいろいろ入っていた。重たいだろうから台車で運べばいいのに、と一瞬思ったが、階段がある建物なのでそれは無理だ。

「売れますか?」

と聞いてみたら、

「結構毎日お買い上げになる方が多いですね」

とのことだった。一般家庭における「牛乳配達」という制度が随分と減って久しいけど、この宿では現役バリバリだ。

ヨーグルトを買った

折角だから何か買おうとは思ったが、既に冷蔵庫には小岩井の牛乳シリーズ各種が十分にストックされている。長逗留だとはいえ、明日の午前には退去するわけだし、これ以上飲み物はいらん。

すると、ヨーグルトの取り扱いもある、という。それは渡りに船だ、ヨーグルトなら買うぞ。

購入したヨーグルトは、「朝食みかん&ヨーグルト」というものだった。あれ、これはグリコ製なんだな。小岩井のヨーグルトではないのか。

いくら丼
いくら丼

13:20
時間は一気に飛んで、お昼。

ひたすらお風呂に入って、部屋でだらけて午前中は終わりだった。文章として書き留めておくことが他にはない、というのはよいことだ。この日は、お散歩も探検もなし。

12時頃のやはぎが混んでいるのは目に見えていたので、13時過ぎになってようやくお昼ご飯を食べに行く。

この日は、「いくら丼」を頼んでみた。「冬期限定」ということもあって、だ。あと、初日夜の「やはぎ定食」でお料理のいいとこ取りをしてしまったため、今更「ひっつみ定食」とか「刺身定食」を頼むとネタがかぶる。ここは丼ものが妥当だと判断した。

お値段800円。

きざみ海苔、錦糸玉子の上に鮭フレークとウニ、そしてわさびが乗っている。

うひょう。イクラはズルいよな、このつやだけで美味さUPだ。

「北海道物産展」なんぞで、海鮮丼としてカニとかウニとかと一緒にてんこ盛りになっているイクラをよく見かけるが、ああいうのは「盛ればいいってもんじゃないだろう?」と思う。逆にこれくらいの量のほうが食欲がそそられるし、地に足着いた「うまそう感」がかもし出される。物産展で「海鮮丼てんこ盛り!でもお値段は2,000円!」とか言われても、ぜんぜん嬉しくない。

おつまみ

丼モノだけでは心もとなかったので(何が「心もとない」のかは自分でも不明)、もう一品頼んでみた。「ごぼうカリカリ揚げ(285円)」。居酒屋でよく見かけるおつまみだ。こういうのをちょいと追加注文できる、というのがこのお店のすばらしいところ。

なんなら、「焼き鳥」だってメニューにある。1本95円。さすがに焼き鳥は注文しなかったけど。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください