11:14
俗に染まりまくっている!
全然駄目だ!
本当なら、盛岡駅前に立ったとき、その都会っぷりにあらためて驚き、「ああ、人間というのはなんて騒がしい、ギスギスした社会で暮らしているんだ」と嘆息したかった。そして、「そういう気持ちを感じ取れたのも、3泊4日という大沢温泉での静かな生活のお陰だ。」と思いたかった。
だがどうだ?なんら普通に、つい数時間前まで浴衣を着ていたとは思えないくらい平然と、町を歩いている。そして、「さあ昼飯を食うぞぅ」と気合いが入っている。
「ロス大沢温泉」ということで、数日間は「ああ・・・あの生活は良かったなあ・・・」と遠い目をしてぼんやり過ごすのはやりすぎだと思う。日常生活に支障が出る。しかし、だからといって大沢温泉を離れるやいなやケロリとしているのも、薄情だと思う。
まあいいや、とりあえず昼飯食べたら一息つくだろ。なんだったら、「もう観光なんていいよ、だらっと喫茶店か図書館で静かに時を過ごそうではないかね君」なんて気持ちになるかもしれん。・・・ならんと思うけど。
というわけで、最初に訪れたのは(あっ、「最初」という言葉を使っているあたり、この後予定を入れる気満々やんけ)、盛岡駅前にあるじゃじゃ麺のお店「HOT JaJa」だ。盛岡冷麺の有名店「ぴょんぴょん舎」が手がける、じゃじゃ麺屋だ。
じゃじゃ麺というのは、うどんのような麺にきゅうりと肉味噌が乗った食べ物で、この界隈独特の食べ物だ。全国区として知名度が低いのは、正直言って微妙な料理だからだ。デフォルトでは味付けはされておらず、自分で卓上の酢やラー油、おろしにんにくやしょうがを好みにあわせて調整することで味を決める。何度か食べていくうちに自分のツボというものがわかってくるので、シンプルながらうまい料理だと思えてくるのだが、慣れないうちは「ぼんやりした、中途半端な料理」にしか思えない。
そんなわけで、メガロポリス東京でさえ、じゃじゃ麺が食べられるお店というのは非常に少ない。「盛岡三大麺(わんこそば、冷麺、じゃじゃ麺)」とまで地元民が誇る麺なのにこの現実は厳しい。
僕自身、食べたことがあるのは2度か3度程度しかないのが、その時点で既に「この料理、イケるぞ!」と確信していた。なので、本場盛岡で食べられることを楽しみにしていた。今日の盛岡観光におけるメインイベントかもしれん。いきなりメインイベントを最初に据えていいのか?俺。
HOT JaJa店内に入り、カウンター席に通された。
お客さんは男女問わず、といったところ。女性にも人気の食べ物らしい。カレーうどんのようにピンピンつゆがはねて服を汚す、ということはなさそうだし、安心なのかもしれない。
じゃじゃ麺はサイズが選べるのだが、(中)を選んだ。確か580円。
「せっかくだから」と(大)を選んでいないあたり、「この後もまだ別のものを食べる気ありあり」という思惑が透けて見えてイヤン。
味付けは完全自前でやろうと思っていたのだが、このお店には「当店オリジナル」なる、味付け済のじゃじゃ麺もあるらしい。余計なお世話だ、オレが全部やる!と一瞬思ったが、当店オリジナルはスパイシーらしいということなので気が変わった。スパイシー?いいじゃないか。大沢温泉滞在時、非常にまろやかな日々を過ごした。そろそろガツンといっちゃってもいいんじゃないかと。
店員さんも、「当店オリジナルがおすすめ」とおっしゃる。ならば是非それで。
卓上にはさまざまな調味料が並んでいる。中華料理屋の比ではない。これでじゃじゃ麺をオリジナルカスタマイズせよ!というわけだ。
陶器のツボの中には何が入っているのだろう?と思ってふたを開けてみたら、中には肉味噌がコンニチハしていた。あ、肉味噌も追加トッピング自由なのか。酒飲みなら、この肉味噌をつまみにガンガン飲めるんじゃないかと思ってしまうが、さすがにそれはお上品ではないのでやめておいたほうがいい。
あと、赤玉の生玉子も山積みになっている。麺だけじゃ物足りない人のためにご飯もありますよぉ、その時は玉子かけご飯にしてくださいねぇ、というわけ・・・ではない。この玉子の扱いについては後述。
11:28
じゃじゃ麺到着。
うどんのような麺に、きゅうり、肉味噌、にんにく。あと、しょうがが添えられている。
コイツラを完膚なきまでにかき混ぜ、色のコントラストが無くなって単に茶色っぽい色気のない風情になったときが食べ時。「見た目がおいしくなさそうになった頃が一番うまい」のは納豆に相通じるところがある。
食べるのはあっという間だ。なにせ混ぜ麺なので、ぱくぱく食べ進んでしまう。優雅にフォークに絡ませて、とか麺を一本すすった後にレンゲでスープを飲んで、といった所作は一切ない。ただひたすらガツガツと。
しかも、このじゃじゃ麺の場合、「わざと食べ残す」ことが大事だ。きれいさっぱり食べてしまってはいかん。むしろ汚らしく、肉味噌とかキュウリとかしょうがを皿に残した状態でいったんストップするのがよろしい。
で、店員さんを呼んで、「チータンお願いします」と一言。
この「チータン」だが、じゃじゃ麺独特のシメ方らしい。じゃじゃ麺を食べたお皿に麺の茹で汁を注ぎ、生玉子を入れて肉味噌入りスープにする。だから、あえてお皿に食べ残しを作っておく必要がある。
僕自身、初めての体験だ。なにせ、これまでじゃじゃ麺を食べたのはイベントの屋台だけだからだ。そういうお店では、茹で湯割りなんて面倒なことはやってくれない。
ちなみに正式名称は「チータンタン(鶏卵湯)」というらしい。お店によっては「チータンスープ」といったり、略して「チータン」だったりするようだ。じゃじゃ麺のお店を食べ歩いたわけではないので、このあたりは推測。
途中で料理がトランスフォームする、というのはなんだかお得感が高い。嬉しくなりながら、このチータンスープをいただいた。
あー、完全に俗に戻ったな、もう。
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