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このマルカン百貨店を訪問したのは、今時珍しい「大食堂」が存在するからだ。その大食堂で名物料理があるというので、食べに来たというわけだ。先ほど「焼きおにぎり定食」を食べたのは、あくまでも「遅い朝ご飯」だったということにしておいて欲しい。
昔はどの百貨店にも、最上階に大食堂があったと思う。日の丸とか星条旗が突き刺さったお子様ランチ、楽しかったなあ。子供にとって、めいっぱいのハレの場といえば百貨店であり、大食堂だった。
「デパートの大食堂」の定義、というのはちょっと難しいが、「和洋中なんでも扱っているレストランで、広い客席を誇る」というのが正しいと思う。今じゃ、和なら和、洋なら洋の飲食店がテナントとして入居するのが当たり前になって、この手の「大食堂」はすっかり絶滅危惧種になっている。
で、花巻のマルカンですよ。6階が「展望大食堂」と銘打たれている。素晴らしい！
店頭の食品サンプルは、圧巻の一言。
和洋中、という言葉がまさに当てはまる、古今東西あらゆる料理を揃えた景観は他ではなかなかお目にかかれない。
客席から見える形で厨房がある。社員食堂を思い出させる。社員食堂も、ビュッフェスタイルの形態をとっているところなら和洋中取りそろえていることが多いが、まさにそれの巨大版だ。
展望大食堂、を名乗るだけあって、客席は確かに広い。そして窓が大きくて開放感がある。
机とか椅子とかも、「ああ、これぞ大食堂だなあ」という感じにさせられる。気取った感じが全然ない。
ただし、「良い雰囲気だなあ」と僕がほっこりしているのは、レトロ感を楽しんでいるからであり、地元民からすれば「東京モンが上から目線で見やがって」ということかもしれない。でも、東京と張り合っても意味がないし、資本力がそもそも違いすぎるのだから、独自路線で良いと思う。むしろこういうのがカッコいい、と思える時代はいずれ来ると思う。
ミシン目で切り分けるタイプの食券制度は世の中から随分減ったけど、こういうところではまだ健在で嬉しくなる。僕が持つ「大食堂のイメージ」というのは、やっぱりこの食券だからだ。
前払い制、というのがちょっと背筋が伸びる。着席して、うだうだと卓上のメニューを見ながらメニューを吟味することができない。入店時にビシッと何を食べるか、胃袋と財布と合議しないといけない。
窓からの景色。花巻駅方面を見たところ。確かに展望がよい。
以前、わんこそば挑戦をした「やぶ屋総本店」が見える。
ナポリカツ650円。
ワンプレートで、ナポリタンととんかつとサラダが載っているというもの。
一つ一つは別に珍しいものではないけど、一つの皿に収まっている光景というのは見たことがない。なんだか不思議な食べ物に見える。
ナポリタンは、見ての通り「奇をてらったりはしないよ」という雰囲気満載の、ケチャップスパ。むしろ清々しくて素晴らしい。ワクワクしてしまうビジュアルだ。
これで650円なのだから、安いとしかいいようがない。カツが載っている時点でそれなりのお金になりそうなものなのだけど。
あと、忘れちゃいけない、この大食堂を訪れている人の何割かが食べているものがこれ。ソフトクリーム。一体何回巻いているんだ？というくらいぐるぐると巻き続け、恐らく機械の高さ限界まで巻いて、それでも足りずに最後はだらんと垂らすという脅威の盛りつけ。タバスコや粉チーズの高さと見比べて欲しい、いかにこいつがでかいかを思い知らされる。
これで170円だというのだから笑ってしまう。これで儲ける気はないらしい。
こんなロングなものを舐めたりかじったりしていたら、途中でソフトクリームが崩れてしまう。だって、「ソフト」なんだもの。なので、箸で食べるのがマルカン流なのだという。
割り箸でちょこっとずつすくい取り、口に運ぶことを繰り返す。箸を使ってソフトクリームだなんて初体験なので、なにもかもが目新しい。
ただし味の方はというと、お値段相応だ。さすがに170円でこれだけの量を出すのだから、濃厚でうま味ぎっしり、というわけにはいかなかったようだ。かなり薄く感じられ、物足りない味ではある。しかし、ビジュアルがすごいので是非頼みたい一品だ。
ソフトクリームのコーンを支える土台も面白い。ステンレス製の、取っ手付きのものだ。キャンドルを入れたら良さそうな外観。今時こういうのもなくなったよなあ・・・としげしげと眺めてしまった。
こういう「気取った食器」って減ったよな。たとえばカレーのルーを入れるための、アラジンの魔法のランプみたいな形をした器(ソースポット)とか。世の中がより実用的に、シンプルになってきているのだろうか？
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