12:49
岩手県庁にやってきた。
ネタに事欠いて県庁見物か!とかいってはいかん。ちゃんとれっきとした観光名所なのが、ここ岩手県庁だ。
そういえば、自治体ごとに庁舎というのは立派度合いが異なる。「うわあ血税を使ってなんてことを!」というものもあれば、いたって地味なものもある。そういうのを巡る旅、というのも案外楽しいのかもしれない。全国各地といかないまでも、せめて東京23区の区役所巡りとか。
とはいえ、今回はそんな県庁舎に用があるわけではない。県庁舎内にある職員食堂でメシでも・・・いやもうやめとけ。お前さっきから食べ過ぎ。
お目当ては、敷地内にあるこの大木だった。老木かつ大木すぎて、あっちこっちに「つっかえ棒」が立ちまくっている。お陰でどこまでが木そのもので、どこまでがつっかえ棒なのかよくわからない有様に。そこまでしてでも残しておきたい木、ということだ。
天然記念物・盛岡石割桜。
その名の通り、石の割れ目から生えている桜だ。噂には聞いていたけど、実物は「なんじゃこりゃ!?」というものだった。合成写真のように、石の上に桜が乗っかっている。いや、乗っかっているんじゃない。僅かな石の割れ目に入り込んでいるんだ。
こんな隙間から芽吹いた桜が、よくもまあここまで生長できたものだ。いや、そもそも種から芽が出た時点では、周囲は岩に囲まれていたわけで、ほとんど日光が差し込まなかっただろうに。月並みな言い方をすれば、植物の神秘。
道理で、昭和を代表する名曲「青い山脈」の歌詞にも出てくるわけだ・・・
とその場ではすごく感心していた。が、後になって調べて見たら、「青い山脈」の歌で出てくるのは「雪割桜」であって、「石割桜」ではなかった。うわ、何の思い入れもない桜を感心して魅入ってしまったよ。「さすが歌で有名な桜」だなんておもいながら。全然違うじゃねーか。
先ほどから、町中をカタツムリの絵柄の路線バスが走っているのを見かける。どこかの企業広告なのかと思ったが、行き先表示のところに「でんでんむし」と書かれていてびっくりした。えっ、そのまんまじゃないか、と。
「株式会社でんでんむし」とかいう会社が、社員やパートを自社工場・倉庫へ送り迎えするための貸切バスなのかと思ったが、路線バスだわ、これ。なんだよ行き先が「でんでんむし」って。
どうやら、バス側面の行き先掲示板を見ると、盛岡駅を起点にした市街巡回バスらしい。で、右回りと左回りがあるらしい。しかも運賃は100円らしい。こんな便利なバスが街の中心地を走っててえんか?民業圧迫じゃないのか?と思ったが、調べて見たら運行しているのは民間会社だった。何かのボランティアじゃあるまいか、というくらい安い。しかもこども運賃は半額の50円だし。
いいなあ、100円なら次の目的地まで歩かないでバスに乗ってもいいなあ。
さすがに歩き疲れ気味。さっきから食べて、歩いて、食べて、歩いてだから。
でんでんむしに乗ろうとすると、一体どういう路線なのかを調べるところから始めないといけない。自分の行きたい場所と折り合いがつくかどうか、あれこれ思案するのは面倒なので結局歩いていくことにした。
さらに駅から遠ざかることしばし、次に目指したのは「盛岡正食普及会」という建物だった。
13:08
うわ。なんだこれ。
古い建物、というのはよくわかるんだが、チョンマゲの人が出てくるような蔵造りの家ではないし、かといって単にボロい古民家、というわけでもない。不思議な風情のある建物だ。
わざわざ歩いてここまでやってきておいて、「うわ、なんだこれ」とか言っているのは変な話だが、それくらい事前情報を仕入れずに観光をしているということだ。今回はスタンプラリー的にあちこち観光地を詰め込んで行動しているけど、根を詰めないように「行き先はあらかじめ決めておくけど、中身までは調べない」に徹している。
だとしても、「うわ、なんだこれ」はあんまりだよな。お前何しにきたんだよ、って。
旧井弥商店(現盛岡正食普及会)、という名前の建物らしい。この「盛岡正食普及会」という変わった名前に惹かれて、わざわざこの地まで歩いてきたんだ。
明治時代を代表する土蔵造りだそうだ。あれっ、土蔵なんだこれ。
ああなるほど、確かに蔵だ。横から見ると、立派な蔵が並んでいる。
途中で増改築をしたのだろうか、瓦屋根が途中で別の屋根に埋もれてしまっている。
ところで「盛岡正食普及会」って何だ?
調べて見たら、戦後まもなく作られた会で、地元産の玄米や麦といったものを使ったパンやビスケットを売っているらしい。
店頭にはいろいろな張り紙が貼ってあった。
「2LDK 家賃3万5000円」
いや、それは嘘だが、「べに花油」とか「枇杷生葉」などいかにも健康によさげなキーワードが張り出してあった。「ロシアビスケット」と書いてあるのを見て、「ロシアロケット」に読めて、大陸間弾道ミサイルか?と思ってしまったが、見間違いだった。こういうお菓子も、添加物不使用など気が配られたものなのだろう。
「せっかくだから」というのを信条としている僕ではあるが、この店内には入らなかった。店頭の張り紙を見る限り、ちょっと欲しいものが見当たらなかったからだ。ジャンクフードで溺れ死ぬ気はないけど、かといって健康すぎるものに割高なお金を払うという気もあまりないので。
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