23:09
寝る前のラストということで、まだ入浴を果たしていなかった「薬師の湯」へ行ってみる。これにて大沢温泉の全部のお風呂に入ったし、探検も完了だ。ようやく明日からゆっくりと過ごせる。・・・って、あれれ、まだ「曲がり橋」の向こう側、菊水館及び「南部の湯」に入っていないや。二日がかりの館内探検ってどうなっとんねんこの宿。
さすがに平日だし、湯治宿ということもあってご高齢の方が多いようだ。夜遅くにもなると、すっかり人の気配がない。なので、浴室に行っても誰一人いなかった。これまでさんざん障子越しに室内の住人のシルエットが透けて見えていたが、就寝したらしくあちこちが真っ暗になっていた。
・・・室内に人がいるかどうか、だけでなく、起きているか寝ているかさえもわかるというこの無防備っぷりよ。今の時代、貴重な「開けっぴろげ」だよな。
南部の湯には大きく効能書きが掲示されていた。「リュウマチス」にも効くらしい。「リウマチ」と書かずに「リュウマチス」と書くのが、昔からある温泉宿の吟爾なのだろうか?結構この表記は見かける。
入浴の仕方が書いてあるのはどこの温泉でも見かけるけど、ここのものはちょっと変わっていた。湯温ごとの効能が水銀温度計の絵と共に紹介されていたからだ。
よく入浴の適温とされる42度~44度くらいは「爽快温度」とされている。42度~39度までは「鎮痛温度」とされ、神経痛やリウマチスに効果。39度~35度までは「鎮静温度」で、動脈硬化症、高血圧症、ヒステリー、半身不随に良いようだ。
以前、精神病患者が療養のために訪れる秘湯「行義温泉」の事を書いたが、まさに体温と同じくらいの湯温というのは鎮静効果があるのだな。僕の場合も、ぬる湯に浸かるのが一番良さそうだ。でも、ついつい熱いお湯でグダグダにのぼせるまで浸かるのが大好きな性分で。
そんなことをやっているから、いつまで経っても細かい事ばっかり気にして心が安まらないのだよ。療養に来ているのだから、ぬるま湯三昧でもしとけ。
というあなたに朗報です。薬師の湯の場合、出入り口から見て右側にあつめの湯、左側にぬるめの湯と湯温が分かれているのでございます。お好きな方をどうぞ。
・・・と、こうなりゃぬる湯に浸かるしかあるめえ。
変な形をした湯船。無駄に浅い部分が広く、寝湯状態だ。ふれあいラグーン、とかいってイルカの背中にタッチできますよー!みたいな浅瀬。半身浴大好きな人にはたまらんのかもしれないけど、「どっぷり肩までお湯に浸かるのが無性に嬉しい」僕からすると、物足りないことこの上ない。結局、あつい方のお湯にお世話になりっぱなしだった。
それはともかく、この薬師の湯は洞窟のような場所だ。湿気がすごく、どうもすっきりしない。開放感がないので、あまり僕の好みではなかった。
23:31
部屋に戻るついでに、売店の前を通る。すっかりみんな寝静まったようだ。すれ違う人は一人もいない。床は新しくやり直しているので、歩く度にミシミシと音を立てることはない。とはいえ、乱暴に歩くと音が響き、障子一枚隔てて寝ている人の迷惑になる。夜歩くときは慎重に、すり足で歩く必要がある。まるで力士の朝稽古のように。どすこいどすこい。
通路を挟んで右側が売店、左側がジュースやお酒が売られているガラスケースなのだが、ガラスケース側はシャッターが下りていた。さすがにご自由にどうぞ、というわけにはいかない。
部屋に帰って、寝る支度をする。今日は花巻市街をうろついたし、この旅館を探検したし、ちょっと不謹慎な療養初日となった。夕食時間も自分勝手に決めたし。しかし、せめて寝る時間だけはちゃんと守らないと。24時就寝、これは守りたい。夜ちゃんと寝れば、おのずと朝もちゃんと起きるというものだ。
で、睡眠薬を取り出す。
いやいや、こんな睡眠薬なんてあるか。ピンクの小粒だぞ。お通じの薬やんけ。
まだ僕は、那須湯本最終日で覚えた絶望と恐怖を忘れてはいない。温泉に入ってダラダラ汗をかくならば、便秘は覚悟しないといけないということを学んだ。もちろん水分は豊富に摂取しているのだが、それでもまだ足りないかもしれない。便秘になってからでは遅いので、問題が露呈する前に対処をしておこうと思う。寝る前に飲んでおこう。
前回四万温泉の際に飲んだ3錠分、既にタブレットがカラになっているのがお恥ずかしい限りだ。温泉にいく都度、消費されていく便秘薬。
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