19:01
大須観音の参拝を終え、また商店街に戻る。商店街は井桁状に複数あるので、まったく飽きない。それにしてもよくもまあ、こんな立派な商店街があるものだと何度来ても驚かされる。
近くに住宅地があって、生活に必要だから・・・というタイプの商店街ではない。八百屋とか精肉店とかが並んでいるのではないから。もともとは大須観音に参拝する客の往来目当てで発展したのだろうが、今となっては商店街自体が一大ショッピングモールとして、フードコートとして、レジャースポットになっている。商店街が「通過点」なのではなく、「目的地」になっている幸せな形だ。
「金のとりから」という唐揚げのチェーン店がここにも出店していた。店頭には、顔をはめて記念撮影ができるパネルが置いてある。
「おい蛋白質良かったな、さっきメイド喫茶でできなかった記念撮影がここでできるぞ」
「なんとしてでも記念撮影させたいのか?」
「そりゃあもう、蛋白質様名古屋来訪記念!ってことで」
「お前はどうなんだよ、東京から来てるだろうが」
「いやまあ、僕は」
またブーメランが返ってきたけど、お茶を濁しておく。
で、撮影したのだが、いまいち面白くない。いや、無理矢理撮影させておきながら「面白くない」というのは申し訳ないのだが、ごくごく普通の写真だ、これでは。
「見てろ、しぶちょおがお手本を見せてくれるぞ」
「しょうがないなあ、こういうのはこうやるんだ」
しぶちょおが穴に顔をはめる。
いいね、これくらいオーバーにやらないと記念にならない。
「良かったなしぶちょお、名古屋の思い出になる」
「オレ、地元だぞ?」
「ああそうか」
もししぶちょおが急逝するようなことがあったら、この写真を遺影にしよう。
百花繚乱、と言っても過言ではない商店街の店。飲食店が特に多いが、それ以外のお店もいちいち面白い。
この写真は、店頭にソックスが売られている様子。カラフルなソックスだな、と思ったら、柄がどれもすごい。いや、すごい、というより日常的すぎて、変。
何がどう「日常的」なのかというと、「かつおだし」とか「わさび」といったスーパーで売られている商品のパッケージ柄なのだった。なんだこのソックスは。シュールなギャグとして秀逸。ちくしょう、欲しいぜ。いや、欲しいけど自分では履かないけど。誰かに押しつけたい、という意味での「欲しい」だ。
「まろやかほっこりココア」「冷や奴」「食器用洗剤」「とろけるチーズ」・・・。
微妙すぎる絵柄がたまらない。カッコいいとかそういう雰囲気は皆無で、ただただひたすら日常的だ。でもソックスという日常的な衣類であっても、そんな日常的な柄が描かれていたら非日常だ。
午前中「トヨタ産業技術記念館」で見た紡績技術の粋が行き着くとこうなるのか、と思うとたまらん。高度な紡績機械がないとこんなソックスは織れないわけだが、それにしてもまさかこんな展開になるとは。いい意味で技術力の無駄遣い。
よっぽど「香ばしい香り 麦茶」とか「豆腐とわかめの味噌汁」ソックスを買おうかと思ったが、これをあげても「履く機会がない」と言われそうなのでやめた。自分用にしては多分サイズが小さいだろうし。
19:18
「おかでんと蛋白質には是非食べていってもらいたいものがある」
しぶちょおが言う。「おかでんは食べたことがあるかもしれないが」といって連れて来られたのは、「台湾の焼き包子(パオズ) 包包亭」というお店だった。ああ、確かにここは食べたことがある。焼き小籠包屋だよな。あんまり記憶に残っていないけど、旨かった記憶がほんのり。しぶちょおも推奨する旨い店、というお墨付きだ。
「・・・あれ?このお店の隣、洋品店があったはずだけど」
僕は覚えていた。このお店の左隣には、マダム向けの洋服などを売るお店があったことを。店先にも売り物の服が吊るしてあったのだけど、焼き小籠包の肉汁が飛んで服にかかってしまうことに辟易していたらしい。がっちりハンガーラック周辺にビニールの壁を作り商品を防御していたっけ。で、大きく「迷惑です」という張り紙。
でも今や、見覚えのない「元祖台湾カレー」という看板が出ている。なんだこりゃ。「台湾ラーメン」「台湾まぜそば」というのは知っているけど、「台湾カレー」というのは聞いたことがない。
「麺屋はなび(台湾まぜそばの元祖)が出店したんだよ、ここのお店、結局焼き小籠包の汁に負けて出て行ってしまったんだねえ」
としぶちょおが教えてくれた。災難としかいいようがない。
台湾カレーも気になったが、さすがにガッツリと食べる気にはなれない。なので、久しぶりに焼き包子を食べることにした。
肉包と菜包があり、いずれも160円。
蛋白質も、しぶちょおのおすすめに乗って注文していた。
肉包。
店頭に、「男はニンニク」と書かれた容器が置いてあったので、「おう、オレは男だ」と勢いよくにんにくを肉包に乗っけて食べたった。生にんにくなので味は強烈。というか、男になりすぎて、肝心の肉包の味がぼやけてしまった。しまった。
肉まんの外観だけど、基本は小籠包だ。なので、皮をかじると中から肉汁がじわっと出る。熱いので注意。
その結果、食べている途中の人を写真撮影するとこんな顔になる。表情が切ない。「あつつつ」となっている瞬間。
お店の左隣が台湾カレーの店となったので「肉汁被害問題」は一件落着かと思ったら、まだまだそうではないようだ。右隣は「大須リブル」というスペアリブやコロッケを売るお店なのだが、さらにもう一軒隣にはこんな張り紙が・・・。
「油でよごさないで!」という文字の周辺に、「モラル!モラル!モラル!」がぐるっと取り囲んでいる。何があったんだ一体?
「シャッターが閉まっている間は商品が店頭に出ているわけでもないし、汚すも汚さないもないような気がするのだが」
「いやぁ、肉汁がしたたって床に落ちるだろ。それで床が汚れたりするんだよ」
なるほど、それは確かに。
このお店に限った話ではないが、商店街の中の小さな飲食店はイートインスペースを持っていないお店が多い。このため、客は食べ歩きをするか、店頭で立ち食いをするしかない。道の真ん中で食べると人々の往来の妨げになるので、どうしても軒先で食べることになると・・・ああ、肉汁が飛び散っちゃった、と。これはたまらん。
小籠包というのは肉汁が飛び出してナンボな食べ物だ。まさか安全第一で肉汁が出ない小籠包を開発しました!というわけにはいくまい。ご近所さんづきあいが大変だろうと同情してしまう。
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