愛知迷走

展示22

12:53
巨大な機械が見える。重工業、といった感じで、他の展示物とは一線を画した雰囲気を身にまとっている。遠くからでもよく見える威厳なので、光に吸い寄せられる蛾のように我々はこの機械に吸い寄せられていった。途中の展示物は適当に流し見。

その正体はプレス機だった。自動車のボディを鋼材から成形するための、プレス。600トンの力でぐいぐい押すらしい。いや、「ぐいぐい」なんて表現は生ぬるい。「ドスン」だ。違うな、「ドスン」でさえ桁が違う。全然想像ができない。

600トンもの力をかけるのだから、このプレス機の下部構造もすさまじい。上部構造以上ではないかというくらいの構造体が、地下にはあった。そりゃそうだ、普通のまな板のようなもので600トンを受けたらプレスにならない。力がかかりすぎて、地球が真っ二つになって日本の裏側のブラジルまで割れ目ができてしまいそうだ。

展示23

このプレス機を実際に動かすことができるようだ。プレス機の前にボタンがある。

いつでもボタンを押していいわけではなく、一回プレス機が動いたら数分はお休み時間がある。で、スタンバイOKになったらランプが灯るので、ようやくボタンをポチッと・・・あれ?ボタンが3つ並んでいるぞ。

解説によると、まず真ん中の緑のボタンを押せ、となっている。そしてその後、両側にある黒いボタンを同時に押せ。

「なんでこんな面倒な仕組みになっているんだ?」
「フェイルセーフの考え方だろ、誤動作を防ぐために」
「そうか、良かったな、うっかり蛋白質が潰されてのしいかにならなくて済む」
「おいちょっと待て、なんでオレが潰される前提なんだ?」

展示25

本当は一人で同時に両方のボタンを押すらしいのだが、折角なのでおかでんとしぶちょお、二人で。

「いいか、これまで育んできた愛が試されるときだぞ。お互い心をこめて・・・」

いやなシチュエーションだ。男同士だぞ、おい。

展示26

「GO!・・・と言ったらボタンを押すんだよ、いいね?」

なんていうフェイントはかけず、そこは一糸乱れずボタンを押す。

展示27

「おお!」

プレス機が動き始めた。もっとゆっくりとした動きなのだと思ったが、案外早く動きやがるぜ。そりゃそうか、一枚一枚じっくりプレスしていたのでは、商売にならない。どんどん生産しないと。

もっと「ズン!ズン!」と響くのかと思ったが、地下にショックアブゾーバーでも付いているのか全く響かない。おおよそ600トンのプレスとは思えない軽やかな動作で我々を驚かせた。

「昔のギャグ漫画って、ボケた人をシバくために『1t』とか書かれたハンマーや重しが登場してたよな」

なんて、ついノスタルジーに浸る。でも1トンなんてたかがしれてるんや!インダストリーの世界では、600トンくらいないと話にならんのや!!

展示28

その後、板金をはじめとする自動車生産ラインのあれやこれやが、実際に使われていたマシンとともに紹介されていた。広大な敷地を誇る施設だからこそできる、贅沢な空間の使い方。機械だけでなく、マネキンもあちこちにいて、実際に組み立てをやるときはこんな感じですよ、というのを臨場感を伴う形で展示している。はっきり言う、これはすばらしい施設だ。これだけ情熱とカネとわかりやすさを詰め込んだ施設は他に僕は知らない。さすが日本を代表する企業が手がけるだけある。舌を巻くしかない。

ただ、残念ながらこの頃になると集中力がすっかり途切れてしまった。疲れてきたし、昼メシの時間だしで、残りの展示はほとんど素通りになってしまった。後になって、公式サイトを見てみて、「え?こんな展示、あったっけ?そういえば見たような気もする」という有様。

教訓として、この地に足を踏み入れるなら、丸一日を確保しておくべきだ。初めての訪問で、こういうのをじっくり見たいならば、半日では足りないと思う。

土産物店

13:03
自動車館を脱出し、ミュージアムショップに向かう。

オリジナルグッズ

ミュージアムショップはオリジナルグッズだらけだ。「名古屋みやげ」でお茶を濁すようなことはなく、モノから食べ物から書籍まで、あらゆるものがオリジナル。

写真は「トヨタ関連施設限定商品」と銘打たれた、「THE KURUMANIA」。「サクサクに焼き上げたメーブルバタークッキー」なんだそうだ。包装紙が、トヨタのくるまだらけで、レトロな色使いやデザインも相まってこれは土産物として楽しい。

昔販売していた自動車のカタログが復刻されて売られていたりもする。昔は無料で配布されていた販促ツールだったわけだが、今となっては売り物だ。でもそれくらい、写真いっぱいの自動車カタログは今見ると面白い。

伝記

ちぇるのぶが我々の前に立ちはだる。

「おかでんセンセイ、是非これを!」

手にするのは、「劇画『トヨタ喜一郎』復刻版」。先ほどの展示で見かけた、「はだしのゲン」的な絵柄の漫画だ。

「おい、喜一郎御大が青ざめてるぞ」
「それはともかく、是非買って帰ってですね、帰りの新幹線の中ででも」
「いやあ・・・買う気にならないなあ」

読んだら読んだで面白いんだとは思うけど、いまいちワクワクしなかったので手が出なかった。トヨタ産業技術記念館限定販売だし、お値段は515円と安いんだけど。

蛋白質も同じだったようで、黙ったままちぇるのぶの前から立ち去った。

「えー、なんでよー、いい本なのになあ」

ちぇるのぶ、非常に悔しがる。

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