19:33
「さて、どうしようか」
という話になる。大須観音を見終わって、商店街も端まで行った。となると、時間も時間だしそろそろ飯食って解散だね、という流れになる。なにしろ、今日は朝が早かったし、明日は早朝から名鉄のイベント「SAGASE!」をやらないといけない。
「しかし、腹が減らないんだよなあ」
「だよなあ」
一同、嘆息しながら意見が一致。腹具合も一致。まだ腹の中に味噌とんちゃんをはじめとする焼肉一族がセイヤセイヤと盛り上がっていて、ちょっと夕食気分ではない。ましてや、ついさっき「焼き包子」を食べたのでますます夕食が遠のいた。
「とりあえず、ふくろうカフェに行ってみるか?」
しぶちょおから提案があった。ほう、ふくろうカフェ!ふくろうだけに、思わず「ホウ」と唸ってしまった。
しぶちょおから以前LINEでふくろうの写真が送られてきたことがある。なんだ?と思って聞いたら、ふくろうカフェに行ったのだという。そんな業態が存在するというのは聞いたことがあるけど、ちょっと実感がわかなかった。そもそもふくろうってかわいいのか?と。
ねこカフェは問答無用でかわいい。これは誰も異論はあるまい。しかしふくろう??
インコとか文鳥とかならともかく、猛禽類だぞ。くりっとした目がイイというのはなんとなくわかるんだが、うっかりすると指を噛みちぎられそうな気がする。身の安全は大丈夫か?
「店内に何匹もフクロウがいるんだ。止まり木に止まってるぞ」
「ええ?檻の中で飼うものじゃないのか?」
「外に出てる」
やばい。食い殺されるかもしれん。
店名は「ふくろうのいる森カフェ」という。カフェ、といっても本格的な飲み物が出てくるわけではない。紙コップジュース自販機が店の片隅にあって無料開放されているので、そこでセルフサービスで汲んで飲む。フリードリンク。そもそも、ゴミの始末さえちゃんとやるなら飲食の持ち込みがOKというおおらかさだ。
このお店の儲け、というのは、「1時間1,000円(フリードリンク込)」という「場所代」ということになる。あとは、店内にいるふくろうやミミズクの多くが売り物になっているので、このお店はペットショップでもある。なるほど、そういうことか!
店内に入ってみて、びびる。ふくろうがあちこちにちょこん、といるからだ。
「おい!ふくろうがいるぞ!」
「当たり前だ、ふくろうカフェなんだから」
「いや、でも!」
動物園でしか見たことがないふくろうという生物が、檻無しの状態で目の前にいる驚き。モザイク無しでアダルトビデオを見てしまった気分・・・というとたとえがおかしいか?でも、なんだかスースーした感じがしてこそばゆい。
一匹、二匹・・・とワクワクしながら店内にいるふくろうを数えたが、数えるだけ無駄なくらいたくさんいらっしゃる。こりゃあすごいや。
食い殺されるかと思ったが、どのふくろうも大変におとなしい。まるで木彫り人形のようで、ほとんど動かない。これだったら、インコやオウムといった小鳥の方がよっぽど騒々しい。
「おーい、生きてますか?」
と目の前にいるふくろうに声をかけると、
「なに?」
といった感じでこっちに顔を向け、つぶらな瞳をぱちくりさせる。鳥だから表情なんて全くないのだけど、まるで表情があるかのように錯覚する。二つの目が人間同様、正面を向いているからだろう。
メンフクロウ。独特の顔をしていて、切れ長の目をしている。かなり体格が大きいこともあって、かわいいかと問われるとちょっとこれは。
ネズミを捕まえて喰うくらいなら朝飯前だぜ、というゴツいふくろうがいる一方で、ちっこいふくろうもいる。思わず「あらー(はーと)」と黄色い声を上げてしまうくらいだ。いけないいけない、らしくないぞオレ。
ふくろうたちは寝ているようで、みんな起きている。たまには空を飛んだりしないのだろうか?と思ったら、足と枝とをロープで縛られていた。かわいそうだけど、もともとふくろうというのはじっと息を潜めている動物なのかもしれない。それくらい、じっとしておとなしい。
猫カフェと全く違うのが、こういうおとなしいふくろうたちも、いちいち人間に反応してくれることだ。「おーい」と声をかけたら、「なに?」といった感じで全員がこっちを見る。時には首をかしげる。僕がふくろうの前をすすすっと移動したら、それにあわせて首をウィーンとひねってこっちをずっと見ている。それがやたらとかわいい。人間にスレた猫カフェの猫なんて、声をかけても猫じゃらしをフリフリしても、全く相手にしないぞ?それがふくろうのなんと初々しいことよ。
ふくろうは首がほぼ360度自由に回せる上に両目が正面を向いているので、モノを見る時は常に首をくるくる回す。そのしぐさがふくろうファンを作るのだろう。
そんなわけで写真を撮りまくってしまった。カフェにいる全部のふくろうを撮影したわけではないけど、結構テンションが上がってしまったぞ。
白目があるふくろうと、黒目しかないふくろうの両パターンがあることに気がついた。店員さんいわく、どっちかが夜行性、どっちかが昼行性なんだとか。
一羽、えらそうなポジションに陣取っている白いふくろうがいた。名前は「白玉」だそうで。面白いネーミングだ。みたまんま、「シロフクロウ」という種類のふくろうらしい。
白玉が陣取っているところは、下から常に風が吹き出ていた。店員さんによると、「北極圏に住む鳥だから」ということだった。風を当てて白玉ちゃんの体温を下げてやらないとのぼせてしまうのだろう。北極圏は湿度が低い場所なので、気温だけでなく湿度のコントロールも難しいようだ。
なかなか一般家庭でコイツと飼う、というのは難しそうだ。実際、売り物にはなっていない模様。それにしてもこの目つき、一人や二人睨み殺しているツラですわ。
写真撮影は店内自由。フラッシュ禁止、動画撮影禁止ということさえ守れば、記念撮影し放題。嬉しくなって、年甲斐もなく自撮り。しかし、ふくろうはカメラ目線という概念が全くないので、イイカンジのツーショット写真はかなり難しい。
ふくろうとちぇるのぶ。
ふくろうが結構デカいことにあらためて気づかされる。もっとも、羽をむしればもう少し小さいのだろうけど。
ふくろうたちは紐でくくりつけられているので、行動範囲は非常に狭い。なので、ふん対策は簡単だ。ふくろうがいる場所の下に新聞紙を敷けばよい。
ふくろう自体はとてもおとなしいし、ふんは散らかさないし、いいこと尽くめではないか。マンションでも飼えるんじゃあるまいか。ふくろうといえば、「ホウ、ホウ」と鳴くものだと思ったが、このカフェに滞在していた間、一回も鳴き声を聞くことはなかった。
一方、途中でふくろうに飽きた人々。
プロ野球の途中経過を携帯電話で確認し、「ダメだ、三者凡退だ」とカープに一喜一憂するちぇるのぶ。
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