名古屋なめ尽くしオフ【名古屋】

蓬莱軒に向けて歩く

熱田神宮をあとにした我々ご一行様は、本日の夕食会場である「あつた蓬莱軒」へ向けて歩き始めた。

名古屋めしに限らず、ご当地メシというのはB級なものが多いが、この「蓬莱軒」で提供される「ひつまぶし」は誰がなんといおうとA級グルメだ。いや、食べ方そのものはB級そのものなのだが、高級食材うなぎをふんだんに使っているという点で、お値段だけでなく質・量ともにA級といって間違いない。

さすがにひつまぶしで「うなぎの量が少なくて、下の白米が見える」というお店があったら悲しすぎる。ひつまぶしは、「みっちりうなぎが敷き詰められてこそ、成立する料理」と言える。それを考えるとすげえな。吉野家とかで夏季限定で売られているうな丼とは訳が違う。

蓬莱軒外観

地図で見ると「蓬莱軒」は熱田神宮のすぐ脇にあるように見えるのだが、実際はかなり歩く。というのも、熱田神宮自体が巨大な森だからだ。

「歩け歩け、まだ大須で仕込んだカロリーを消費できていないぞ」

一同励まし合いながらお店を目指す。

蓬莱軒看板

さすが名古屋とはいえ、あっちでもこっちでもひつまぶし屋が存在するというわけではない。食べられるお店というのは案外少ない。そんな中でも、特に有名なのが今回訪れる「蓬莱軒」だ。行列必至の人気店で、「名古屋でひつまぶしを食べるなら蓬莱軒」と推す人も多い。

僕はこれまで名古屋を訪れた際、何度かひつまぶしを食べた事がある。知人をご案内したこともある。しかし、それはすべて「しら河」というお店だった。どうしてもうなぎを使う分お高くなってしまうひつまぶしを、比較的廉価に提供してくれるお店だからだ。アワレみ隊のしぶちょおから教えて貰ったお店でもある。

しかし今回、しぶちょおに相談してみたところ、「やはり蓬莱軒に行っとけ」と言われた。しら河のひつまぶしも良いのだけど、蓬莱軒を一度食べておくべきだというのが彼の主張だった。特に、名古屋初上陸の人がオフ会メンバーの中に含まれているのだからなおさらだと。そこまで言わしめるお店、ということだ。

超有名店ではあるが、店舗数は少ない。熱田神宮界隈には、「陣屋」と呼ばれる本店と、我々が今回訪れた「神宮店」がある。このほかに、松坂屋の名古屋店に1店舗あるだけだ。正確には、松坂屋のデパ地下にテイクアウト専門店があるが、座って食べることができるのはこの3店だけだ。

個室を用意して貰えた

名古屋を代表する料理の超有名店でありながら、店舗数は少ないやら営業時間は短いやらで、そりゃあもう食べようと思えば激戦っすよ。そんなわけで、今回はたっぴぃさんが事前に予約を入れておいてくれていた。ありがたい。

いくら「まだ胃の中に物が残っている感じがするね。腹がこなれていないね。」と言ったって、予約なしでお店の外で延々と待つというのはいやだ。多分、空腹ではない分、途中でうんざりして「もういいんじゃない?ひつまぶし、やめとこうよ」って誰かが言い出したはずだ。「待っている間に、小腹が空いてくるかも!」なんて期待してはいかん。

で、6名で予約を入れていたこともあり、すんなり入店することができたし、個室にも案内してもらえた。やあ、なんだかVIP待遇って感じだ。

ただし、予約は17時。普通の生活を送っている人がお夕飯を食べるにはちょっと早すぎる時間ではある。しかし、熱田神宮にお詣りする時間とか、このお店自体の混雑状況とかを考えると、これくらいの時間で予約を入れるしかないのだった。

今回我々がやっているのは、本当にパズルめいている。出来るだけ一筆書きであちこち動こうとしているし、動けば何か食べる事になるし、そのためには時間とか胃袋のペース配分なんて完全に後回しだ。

お品書き

お店の予約は入れてあったものの、一体ここで参加者一同がどこまで飲み食いするのかが全くの未知数だった。計画の段階で、「ああ、このお店に到達する前に大須でおなかいっぱいになっているな」ということはわかっていた。そんな中、あらためてここで居酒屋感覚でガンガン飲み食いするのかどうか?参加者全員なじみ深いオフ会常連であるものの、「食の持久力」を各自どれだけ持っているのかは、誰もわからなかった。

そりゃそうだ、これまで僕が酒を飲んでいた頃は、僕が「一次会完全燃焼型」であり、ハイペースでお酒を飲んで、ものの2時間で「じゃあ、お疲れさまでした」とオフ会を解散にしていたからだ。なので、これまでのオフ会で二次会、三次会と展開していった例は数少ない。

加えて今回は、早朝の新幹線で酒盛りを始めるところから一日が始まっている。「もういい加減飲み食いはいいよ・・・」という人が現れてもおかしくないし、特にお酒に関しては「疲れたので、ウーロン茶でいや」と判断する人がいても当然だと思う。

さて、どうしたものか。

メニューを前に、一同の様子をうかがう。

この蓬莱軒が終わったあとも、さらにもう一軒行って飲み食いする計画がある。それでようやく今日は終わりとなるのだが、「あの蓬莱軒のひつまぶし」が中継地点に過ぎない扱いにされてしまっているのが我ながら呆れる。

ひつまぶしといえば言うまでもなくご飯ものだ。基本、酒飲みで構成されているこのメンツの場合、「ご飯もので酒が飲めるか!」ってなりそうな気もする。

「じゃあ、ひつまぶしを頼みますか。どうせ皆さんおなかは空いていないだろうから、ここはその程度でいいかな?あとせいぜいお口を湿らせる程度にビールなんぞを。」

なんて提案しても良いのだけど、「馬鹿言っちゃいけない、折角の個室なんだし、飲んで喰うぞー」という雰囲気がメンバーからびんびん漂ってくる。唯一酒を飲まないおかでん、ここでうっかり余計な提案はしない方が良さそうだ。

ビールで乾杯

で、その結果始まるビールでの乾杯。この後ご飯ものがくるとか、そういうのは関係ないらしい。全国の居酒屋で使われる定番の日本語、「とりあえず、ビールで。」という注文はここでも通用した。

ついでに言うと、「お疲れー」と言いながら乾杯をするのだけど、何に対してお疲れなのかもよくわからない。

メンバー6名のうち、特に嬉しそうだったのがおやびんだった。ああそうだ、遅れて参加して先ほど合流してきたんだった。我々が大須で食べ歩きをしている一方で、おやびんだけは何も飲み食いをしていない。一人「出遅れ」状態だ。そりゃあもう、喉も胃袋も完璧な状態だ。

その様子を見て、平日仕事帰りの飲み会を思い出した。遅れて参加する人がいた場合、

「俺たちもう既に結構やってるから、いいよ好きなモン適当に頼んで」

って言うでしょ。で、遅れた人は

「あ、そう?じゃあすいませーん、生、大ジョッキ。あと、フライドポテトと唐揚げと」

なんて言い出したりする。おい、俺達はもう既に飲み会の中盤戦から後半戦にさしかかっており、なんならお新香くらいでも、とか考えているところなのに何だそのテンションは?と驚き呆れたりするもんだ。でも結果的に、その「後から来たフレッシュな人」のペースに巻き込まれ、ついつい飲み過ぎ・食べ過ぎになる。

これが宴席の途中でバラバラに何人かが遅刻してきた場合はもう大変だ。その都度乾杯をやって、その都度フレッシャーズのペースに巻き込まれることになるからだ。お会計も結構すごいことになるし、酔っ払い方も尋常じゃない。

それと同じことが今起きているのかなあ、という気がなんとなくした。多分、大須食べ歩き体験組は若干の厭戦感はあったと思う。しかし、お品書きを見て「あ、これも頼みたい!あれも!」とハッスルしているおやびんを見て、旅の初心である「名古屋を食べまくろう」を一同、思い出したのだった。

オールフリーを飲むおかでん

おかでんもビールを飲んでいるかのような写真だが、よく見るとスーパードライの瓶の後ろにサントリーオールフリーの瓶が写り込んでいるのがわかる。さすがに僕はもうお酒は飲まないし、飲みたいとも思わない。

実は断酒をしたのが2013年3月なのだが、それから1年と2カ月が経過した今日、初めて「ノンアルコールのビールテイスト飲料」を口にした。なんだか、名古屋に来た!という開放感と、蓬莱軒でひつまぶしを食べるぞ!というテンションで嬉しくなってしまったからだ。

お酒に未練はこれっぽっちもないのだけど、20年近くあれほど愛したビールだ。「ビール風味」の飲み物を口にしたら、飲みたい!という気持ちがフラッシュバックしてしまい、またビールに手を出してしまうかもしれない。それを警戒して、ノンアルコールビールであっても一切口にはしてこなかった。それを今日解禁したというのは、よっぽど満足感があったのだろう。

・・・で、久々に飲んだビール「風」な飲み物だけど、感慨というか、ビールに対する郷愁みたいなのは一切感じなかった。警戒していた「飲酒欲求のぶり返し」なんて微塵も感じなかったし、むしろ「大して旨くもないビール風飲料に高いお金を払うのは馬鹿馬鹿しい。お茶でいいや」とさえ思った。

アルコール依存症が疑われ、その結果断酒をすることになった僕だが、結果的には「依存」の手前で通常人の生活に引き返すことができたらしい。ガチの依存症の人は、ノンアルコールビールを口にするなんてもってのほかだし、そもそも飲み会の席に同席することすら禁止だ。飲みたい!という気持ちが抑えられなくなるからだ。その点僕はまったくケロリとしているわけで、よくぞ踏みとどまったな、と思う。

それもこれも、「アルコールが好きだった」というよりも「ビールが好きだった」という嗜好によるところが大きいと思う。その証拠に、断酒する前もした後も、部屋には10年以上放置され埃が積もっている韓国焼酎やバーボンの瓶(未開封)が転がっていた。誰かが手土産で家に持ち込んだものだ。もともと僕の趣味じゃない。医者から「肝硬変で死にますよ」と言われた時でさえ、これらアルコールを飲もうとは全く思わなかった。ただひたすら、ビールを飲み、時々ワインを飲んでいた程度だった。それが「踏みとどまることができた」最大の理由だと思っている。

断酒直前はγ-GTPが1,400あったのだから、アルコール依存症について書かれた有名な小説、中島らもの「今夜すべてのバーにて」の主人公(恐らく著者自らをモチーフにしている)よりも値が悪い。それを思えば、今こうしてニコヤカに酒席に出ていられることは本当に幸せなことだ。

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