名古屋なめ尽くしオフ【名古屋】

これがベンツ

「ああ、これなら知ってる。自動車を普及させた、『T型フォード』でしょ?」

といいながら近づいてみたら、全然違った。ベンツ製の「パテント・モルトヴァーゲン」という車だった。なんかシンプルな構造の車を見たら全部「T型フォード」とみなしてしまうあたり、自分の記憶力のいい加減さが恥ずかしい。そもそもT型フォードは四輪だ。で、この車は三輪だ。そもそもの構造からして違う。記憶力以前の話だ。お前ちょっと廊下で正座な。

車輪が人力車
ベンツ説明

1886年から製造が始まったということなので、T型フォードなんかよりも遙かに歴史がある。何しろ、ガソリン自動車第一号なんだからそりゃそうだ。でも、ガソリン自動車といっても、構造としてはチャリンコにエンジンが付いちゃいました的なもので、ママチャリ的なチェーンがぐるぐる回って、後輪を動かす仕組み。

0.9馬力だというから、こりゃあ坂道とか、ぬかるみの道とか難儀しただろうな。そのくせ重さは300キロあるので、人力で押したり引いたりするには相当難儀する。

みんなで車を見る

この場に居合わせている4人とも、そこまで車大好き!という人ではないので、「へえ・・・」という感じでたくさんの車を見て行くしかない。でもそれくらいの関心度合いでちょうどよかった。何しろ古今東西の車が沢山あり、一台一台に夢中になっていたら本当にきりがない。ショールームにある車をジロジロ見るだけでも時間がかかるというのに、それがここは何百台もあるのだから。しかも見たことがないようなヤツらだらけで。

作品を見る

なにしろ、レオナルド・ダ・ヴィンチが考案したとされる「自走車」のレプリカまで飾ってあるくらいで。

1480年頃のものだというが、ダ・ヴィンチすげーな。こういうのをマジもんの天才と言うんだろう。

作りとしては、巨大なゼンマイが仕込まれた車輪つき板の上に乗って移動しますよ、というものだ。誰がそのゼンマイを巻くんだ?とかブレーキはどうするんだよ、といろいろ問題はあるにせよ、ちゃんと船の舵のような形をした前輪及びステアリングを備えており、これはまさしく車だ。

ローマ時代のように奴隷が潤沢にいる貴族ならば、こういうのを本当にこしらえて、奴隷にゼンマイを巻かせてすいすい運転していたかもしれない。・・・いや、そんな面倒な事をしないで、奴隷に人力車を引かせた方が早いか。

延々と車

超絶広い施設、というほどではないトヨタ博物館だが、それでも扱っている車の数は相当なものだ。敢えて自社製品の登場が控えめというのが本当に好感だ。車好きが高じて集めて、作っちゃいました感があるというのは見ていて嬉しくなってくる。

「車の数は相当なもの」とはいっても、それでも世に数多く流通した著名な車さえ網羅できていない。それくらい車というのは頻繁にモデルチェンジするし、現れては消えていく。国立国会図書館みたいに、「日本で発行された蔵書は全部収蔵するぞ」的な発想で車を集めたら、一体どれくらいのスペースが必要になるのだろう?東京ドーム何個分、という表現でも足りないくらいになりそうだ。

博物館らしい展示

車そのものの展示の他に、博物館にいる学芸員の手によるいろいろな車関係の展示も行われていた。こちらはポスター。

車のロゴ

こっちはいろいろな自動車メーカーのバッジ。BMW程度ならわかるけど、それ以外は知らないメーカーのものが多い。「なんだろう、これ?」「これ、カッコいいね」などとみんなで話をしながら観賞していたら、学芸員の方がすすすっとやってきていろいろ説明をしてくれた。

これはどこそこのメーカーで、会社自体が存在したのはわずか○年で・・・とか、とても珍しいバッジで・・・とか。もう根っからのカー・ガイ(大の車好きのこと)って感じの人で、説明するのが嬉しくて仕方がないのが手に取るようにわかる。

そういうカー・ガイから話を聞いているとこっちも楽しくなってくるので、実は大して興味はなかったんだけど「へえ!そうなんですか!じゃあこれなんかはどうなんですか?」とついつい話を拡大しちゃった。こういうときの僕は、やたらと聞き上手になる。すると、カー・ガイ学芸員さんはますます口調なめらかに、微細に説明してくれるのだった。

さすがに「いいぞもっとやれ」的な感じで最初はその方の知識を楽しんでいたのだが、20分が経過したあたりでいい加減こっちも疲れてきた。喋ってる方ではなく、聞いている方が疲れたんだから相当なものだ。

で、「なるほど。そういうことなんですね」と言いつつすっとその場を離れ、もう別のコーナーに行くよ、というそぶりを見せたら、カー・ガイは先回りしていて、「もう一つ。このバッジはですね・・・」と説明をさらにかぶせてきた。すげえこの人。

どうせ僕らはこの後ひたすらメシ喰って酒飲んで、っていう一日なんだ。こうやってのんびりといろいろ話を聞かせてもらえて、本当に面白かった。後々まで、「あの学芸員さんすごかったねえ」と話しのネタになったくらいだ。いくらなんでも、ひと組の客に対して20分も説明を続けるというのは熱心すぎる。だからこそ、素敵だし感動した。

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