名古屋なめ尽くしオフ【名古屋】

芸大前駅

トヨタ博物館を後にした我々は、またリニモの「芸大通駅」へと歩いて戻っていった。目の前には県道6号線が走っているのだが、周囲にこれといった郊外型店舗や家がない場所なので、バイパス状態でびゅんびゅん車が走っている。よくぞこんなところに新路線を作ったものだ、とあらためて一同感心。

さすがに万博規模のイベントを開こうとすると、都市部では無理だ(あれ?上海万博は上海のど真ん中でやってたな。でもあれは特別)。どうしても郊外の広い敷地でやらざるをえないわけで、そうなるとこういう「無謀な路線」で交通網を整備するしかなかったのだろう。

開業前は「1日平均3万人が利用するので黒字」という目論見だったようだが、いやアカン、シロウト目に見てもそんな数は無理や。じわじわ駅周辺が栄えていくかも、と期待する前に日本は少子高齢化で衰退するわ。赤字が埋まるなんてのは金輪際なかろう。

このトヨタ博物館を有する「芸大通」駅でさえ無人駅だ。まあ、そりゃそうだろうなあ。近所に住む人がいたとしても、車で移動するだろうし。名古屋は車社会の国だ。名古屋の中心であっても、呆れるくらいに広い通りが整然と整備されているその姿は一見の価値ありだ。ただし、「名古屋走り」と揶揄される独特の交通マナーが存在するわけだが。

地名が読めない・・・

「読めない地名だなあ」

思わず笑ってしまったのが、駅前にあった交通標記。まず「長久手」というのを「ながくて」と読むのは、まあ、歴史を学んだことがある人ならわかる。結構トリッキーな読み方ではあるけど。で、「足助」が「あすけ」で、「猿投」が「さなげ」なんだな。

「・・・ところで、小牧・長久手の戦い、って名前だけは覚えてるんだけど、なんだっけ?」
「さあ?」

芸大通駅の隣の駅は、「長久手古戦場」となっているのだが、いざそれが何だったのかが思い出せない。こんなとき、スマホを取り出してささっと調べれば話は早いのだが、そんなことしたって面白くもなんともない。敢えてわからないまま、ぐだぐだ妄想を語っている方がよっぽど楽しい。「三国志の舞台になった場所じゃないか?」とか無茶苦茶な事をお互い言い合う。

「そういえば長久手古戦場の駅前は何か土向きだしで大規模開発中だったね。あれはひょっとして、草木も生えない状態が未だに続いているとか」

もう言いたい放題だ。風評被害になるから、これ以上はやめとけ。

ただ、地図でこのあたりを調べてみると、「血の池公園」という物騒な名前の場所がある。やっぱり古戦場の余韻というのはまだ現代でも残っているようだ。

「霊感が強い」という人は、こういうところに行くと「武士の霊がたくさん見える」とか感じるのだろうか?でもそれだったら、東京大空襲や関東大震災で多数の方が無念の死を遂げた東京であったり、一瞬にして万単位の人が死亡した広島や長崎って、幽霊だらけで視界がふさがってしまうはずだ。そのあたりどうなっているのだろう?

駅のホーム

芸大通駅のプラットホーム。週末のお昼だというのにこの閑散とした様子。地下鉄東山線を藤が丘から先に延伸させることで対応できなかったのか?わざわざリニモを作る必要はあったのか?と思うが、東山線は名古屋市営。名古屋市から外の事についてはあんまり係わる気はなかったのかもしれない。いや、実際はもっと複雑な事情があったんだとは思うけど。

ちなみにどうでもいいが、藤が丘駅は名古屋市のぎりぎり東端にあたる。リニモに乗って1駅目である「はなみずき通駅」は既に長久手市。

リニモがやってきた

リニモがやってきた。往路の藤が丘駅ではホームドアに阻まれて全くその姿を拝むことができなかったが、今なら・・・できる!ほとんど誰もいないホームの、ガラス越しに激写が・・・できる!

JRが国鉄時代から開発してきている「リニアモーターカー」の流線型イメージがあまりに強すぎて、リニモの実物を見ると「あれっ」という感じがする。普通の新交通システムにしか見えないからだ。でもこれ、地上から1センチくらい浮いて動いてるんですぜ旦那。それを思うとスゲーと思う。スゲーけど、だからどうしたと言われたら確かに困るんだが。

このリニモ、なにやらデカいヘッドマークがつけられていることに気がついた。萌えキャラ?なんだこれ。「ぽぷかるちゃん」と書かれている。「鉄道むすめ」など萌えと交通というのは親和性があるとはいえ、何故ここに?ラッピングバスよろしく、広告収入で赤字を補っているのだろうか。

調べてみたら、愛知を中心とした中部圏でポップカルチャーを盛り上げていこう、という「愛知ぽぷかる聖地化計画」のマスコットキャラクターなんだそうだ。んで、このヘッドマークは「文化の妖精 ぽぷかるちゃん」なんだって。へえーへえー。

万博会場跡地を聖地として、いろいろポップカルチャーのイベントをやっているらしい。で、その交通手段として使われるのは当然リニモなわけであり、リニモ全面協力のもとこの萌えヘッドマークがつけられているというわけだ。

こうやって路線を盛り上げていこう、というのはよい事だと思う。しかも万博会場の跡地は今や広大な公園となっている。ビックサイトや幕張メッセのようなイベント会場ではなく、自然の中であれこれやるっていう試みは面白い。頑張って欲しい。

ただ・・・萌えキャラを前面に押し出してると、それは「サブカルチャー」または「萌え」という狭い世界にとどまってしまう。「ポップカルチャー」を名乗る、ってことはもう少し幅広い、音楽や映像、広告やデザインといった庶民的アートの要素も含ませたいのだと思う。やりたいことと宣伝塔となるキャラとが一致していない気がするけどいいのかなこれで?

東山線到着

いろいろなことを考えつつ、藤が丘に戻り東山線で栄を目指す。途中、東山公園駅で無事よこさんと合流することができた。

「いやー、大変だったんすよー」

よこさんは開口一番でぼやく。わざわざカピバラを見に単独行となったというのに何があったというのか。カピバラに噛みつかれたとか?

「星ヶ丘駅から一駅分歩いたんスけどね、これがもー、すごい遠くて。散歩のつもりだったのに、歩いただけで疲れちゃって」

確かに東山公園は広大だ。動物園だけでなく、植物園があったりバラ園があったり遊園地もある。園内マップを見ると、それらはコンパクトにまとまっているように見えるが、実際はかなり違ったらしい。念願のカピバラには会えたというが、その割には喜び前面というより疲労困憊ぶりが著しかった。

「でも喜びたまえ、それだけこの後のビールが旨いってことが確約された、というわけだから」

我々はこれから、「台湾ラーメン」発祥の店として名高い「味仙」で台湾ラーメンを中心とした昼飯を食らうつもりだ。もちろん、飲める人はそこで飲む。トヨタ博物館で車を満喫した人はそれなりに。歩き回った人もそれなりに。それぞれが最高の一杯を楽しめばいいじゃないか。それでこそ名古屋オフだ。

原価で飲食を楽しめる店

台湾ラーメン、というのは、「味仙」のオーナーで台湾出身の方がまかないで食べていたラーメンだ。唐辛子と一緒に炒めたひき肉が乗ったラーメンだが、台湾そのものにはそんな食べ物は存在しない。担仔(タンツー)麺(台湾語読みだとターミー)が近いとされるが、実際は似て非なるものだ。

味仙のまかない飯だったはずだけど、今ではすっかり名古屋のB級グルメの一角を担うようになっている。それどころか、最近では味仙とは全く関係ないけど名古屋発祥で「台湾まぜそば」というのがブームになっているのだから、つくづく名古屋の食文化ってのは深くて幅広くて面白い。

で、味仙というお店自体は名古屋を中心に10店舗近くある。今池に本店があるのだが、我々は矢場にある支店を訪問することにしていた。

途中、「原価で飲食を楽しめるお店」というすごくびっくりさせられる看板を掲げているお店を発見した。なんだこれ?

よく、「飲食店は原価率30%で経営するものだ」と言われる。つまり、70%の粗利から、賃料や人件費、電気ガス水道などの経費を賄うのが王道というわけだ。それが「原価で飲食を楽しめる」とはこれいかに?そんなん、炊き出しボランティアに近いではないか。

なるほど、こういう仕組みなのか

一同唖然としていたら、店頭に黒板が出ていてこのお店の仕組みが丁寧に説明してあった。

なるほど、入場料を取るんだな。男性1,600円、女性1,400円。これさえ払えば、あとは飲食は原価で提供するよ、というわけだ。あと、カード払いとか面倒くせえことはやらせない、現金のみの受け付けだぜ、というのも納得。

「なんだ、入場料制か」とは思う。時々、焼肉屋でこういうスタイルのお店がある。さすがに肉を原価で提供するお店ってのは僕は知らないが、入場料500円とか払えば、肉ひと皿あたりの料金は結構割安で注文できる。それの居酒屋バージョンと思えばいいのかもしれない。

「でもよ、じゃあビールとか頼んでも200円とか300円とか?」
「ジュース一杯100円とか?」

どんな飲食ができるお店なのかはよくわからないが、原価で飲み食いさせると宣言した以上は客一人からの儲けってのは決まってしまう。つまり、男性なら1,600円だ。男性10名やってきてわいわい宴会やっても、16,000円しか儲からない計算になる。大丈夫か、やっていけるんだろうか?心配になってくる。

「でもこういうお店だと良心的かもね。焼酎水割りとかわざわざ薄めに作らなくていい。かかった費用だけ全部お客さんに請求すればいいんだから」

・・・とも思うが、どうなんだろうね。それはお店が性善説に立っているという前提での話だから。

「とりあえず寄っておく?」
「やめときなさい。これから台湾ラーメン食べるんでしょ?」
「いやそうだけど気になって」

酒を飲まない僕からしたら、絶対元がとれないと思うけど、気になるなぁ。

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