
05:46
草すべりはぐいぐいと自分の居場所を上へと押し上げてくれる。
ただし、それに見合っただけの労力を要求するけど。
でもそれじゃ申し訳ない、と思ったのか、道ばたには高山植物がたくさん咲いていた。
これでも見て落ち着け、というわけか。そうはいくものか。
頑張って登って後続を突き放すと、今度は前を歩く人たちに追いついてしまう。そうすると、中途半端にその人の後ろについていくわけにもいかず、ちょっとオーバーペースで追い越しをかけることになる。これでまた新たな後続が、しかもすぐ背後に生まれることになる。ますます休むわけにはいかず、さらにペースをあげないといけない。
そんなわけで、休めない休めない。
ぐいぐい標高を稼ぐ。


06:17
標高が上がってくると、ガスが迫ってきた。この後視界は完全にさえぎられてしまうから、周囲の景色はこれで見納め。後で晴れてくれますようにナムナム。
深く刻まれた谷には、まだ雪渓が残っていた。もう8月だけど、冬の名残がここにはある。
下山時は、あの雪渓をぴゅーんと滑り降りればあっという間に下山完了だ。でも、山のふもとに着いたときはミンチになってしまっていると思う。

06:18
このあたり一帯の斜面がずっと草になっているわけではない。
なぜか理由は不明だけど、登山道のあるところだけが高山植物が生えているエリアになっていた。
登山道は高山植物エリアを離れ、森の中も歩く。


05:46
せっかくなので、花の写真なんぞも。
花鳥風月を愛でつつ山に登る、ということを心がけないと、ひたすら筋肉馬鹿の登山になってしまう。
でも、写真を撮るだけ撮って満足してしまい、花の名前も何も知らないままだ。「名もなき花」と総称することにした。「名もなき」じゃねぇよ、単にお前が知らないだけだろう。
ちなみに山はこの時期がちょうど高山植物の見ごろ。
おかでんは「日本百名山」を中心に山登りをしているが、この世界には「花の百名山」というのも存在し、花が好きな人はそちらの百名山踏破を目指すこともある。
「花の百名山」の場合、花が咲いているシーズンに行かないと意味が薄れるわけで、全部の山に行くには相当ハードルが高い。

06:42
ガスに包まれた中標高を稼いでいくと、山全体の木々が減ってきた。
そして、細かいつづら折れだった登山道が、だんだんゆるやかになってきた。なにやらステージが切り替わったようだ。
そろそろ森林限界が近づいたようだ。
一般的に日本の森林限界は標高2,500メートルくらい、といわれるが、もちろん地域によってこの数値は変わる。
南アルプスは、北アルプスと比べて森林限界が高く、2,600メートルから2,700メートルくらいで木々が「もうダメ」と断念する。このため、山頂近くまで木々に覆われた山が多く、「ごろごろした岩場の別世界感」を味わいたい人からすると南アルプスは物足りなく感じることがある。
でもお待たせしました、そんな南アルプス・北岳ではありますが、いよいよ森林限界ですよ。
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