
10:05
北岳山荘玄関先の黒板。
あー。
今日も混雑するのか。「1つのお布団に1-2名様でのご案内」だって。「1つのお布団に1名」なら混雑とは言わないけど、2名なら早くも日常生活ではあり得ない体験になる。つきあいたてのカップルじゃねえんだぞ、と声を大にしていいたい。
でも、今日のように少し曜日をずらして(月曜日)いてもこのありさまだ。これが土曜日夜とか、日曜日夜だったらもっと阿鼻叫喚だったというわけだ。いや、山の人たちは基本マゾだから、「阿鼻叫喚」なんてことはない。ひたすら狭い空間という折檻を無言で耐え続けるだろう、きっと。
おかでんがこの日泊まる農鳥小屋はどうなってるんだろう?さすがに山深いところなので、登山客はぐっと減るはずだ。しかし、小屋のサイズもそれに見合って小さくなるので、やっぱりイイカンジになれあいの一晩を過ごすことになるのだろうか。

10:06
せっかくなので、小屋の中をのぞき込んでみる。別に用事があるわけじゃないけど。
山小屋に厳密なチェックイン・チェックアウト時間があるわけではない。だから、10時過ぎという「旅館業にとってはアイドルタイム」であっても、小屋に出入りしても全く問題はない。
ほら、現に小屋の中では人が何人もいる。
天気があんまりよくないので、もう早々にここで一泊しちゃおうという手続きを取っている人もいた。ええ?まだ10時だぜ。もうチェックインか。
この山小屋には、入り口付近にベンチがあったり売店があったりすることはない。ひたすら武骨に、大きな建物が突っ立っているだけだ。そもそも、窓すらこの建物にはない。だから、「やあ、山小屋着いたぞ」と一休みする場所がないのだった。だから、とりあえずこうやって小屋の中に入っちゃう。
でも、小屋にだって、通りすがりの登山客が休める場所なんてない。えーと、視察完了。外に出よう。

10:06
この北岳山荘には立派な別棟があって、食料庫にでもなっているのかと思ったら「昭和大学医学部北岳診療所」という看板が掲げられていた。
要するに、夏の間だけボランティアで大学が診療所を開いている、というものだ。ここに限らず、北アルプスなど人気の山域には、山小屋に併設する形でこういう診療所があるパターンがある。でも、さすがにボランティア、ヒューマンリソースにも限界がある。8月末には大抵の診療所は閉まってしまう。海の日あたりから1カ月ちょっとだけの、短期間の診療所。幸い、こういうところを利用したことは一度もない。というか、これまでのおかでんは7月だの8月といったハイシーズンに山に登ることはしなかったので、こうして診療営業中ってのを見るのが初めてだ。
大それた設備があるわけでもなく、用意できる薬だって知れているだろう。でも、靴擦れが痛くて、とか胸がムカムカして、といった程度のことには対応してもらえそうだ。ちなみに、いくらボランティアだからといって診療費が無料ってわけではない。ちゃんとお金がかかるので注意。

10:06
水道の蛇口があった。100円のチップを入れる箱が備え付けられているとはいえ、どうぞご自由に、となっているのが潔い。300メートルくみ上げてきたものらしい。天水に頼るよりはるかに安定して供給できるから、少し精神的ゆとりがあるのだろう。

10:07
山小屋本体の脇に、結構大きい建物が建っているな、とは思ったのだが、これがお手洗いだった。
入り口にチップ箱がある。
小屋泊まりの人たちは、用をたすためにわざわざ外に出てこないといけない。
宿泊棟と一体化させていないのは、テント泊の人たちのトイレと共用にしたかったのと、臭いが寝泊まりする部屋に伝染するのを嫌ってのことだろう。下水道完備!というわけではないので、当然気を遣っても臭いは出る。山小屋によっては、目が染みるような強力な臭いが、トイレ周辺に満ちあふれていることがある。そんなところで寝泊まりするのはさすがにいやだ。
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