
06:54
縦走路から東を眺めたところ。
ここが大門沢、ということなのだろう。これから先、この谷をずっと下っていくことになる。
見渡す限りの、山と山。人里なんて全く見えない。送電線でさえ、見えない。下山口である奈良田なんて、当然のごとく見えない。
奈良田はダム湖のほとりにある集落。ダムは当然山に囲まれた渓谷に造られるものなので、ここから集落が見えるわけがないのだが。
わかっちゃいるけど、この先長くなりそうだ。

06:58
大門沢下降点と、その奥に見える広河内岳。
なんでぇ、山頂まで近いじゃないか、とあらためて思うが、往復70分の登山を楽しむよりもとっとと下山して奈良田温泉で70分間温泉三昧にした方が幸せそうだ。諦めることにする。

07:00
高山にいるのは雷鳥だけじゃない。
何かが飛んでるな、と岩場をよく見ると、ホシガラスがいた。
ホシガラスを見ても、雷鳥の時のようにはしゃいだ気持ちにはならない。やはりかわいらしさが全然違う。
雷鳥は、丸々とした体を揺すりながら地面をてくてくと歩く。ずんぐりしているせいか、あまり飛びたがらない。その点ホシガラスはすぐに飛ぶ。人間に対しての警戒心も、雷鳥の方が薄い。
そんなわけで、先ほど出会った雷鳥ほどは熱心に観察せず、適当に写真撮影をしたら終わりにした。同じ鳥なのにこの扱いの差よ。ホシガラスよ、悔しかったら雷鳥のように愛らしく生きよ。

07:01
大門沢下降点到着。
黄色い標識が目印。これには鐘がぶら下がっていて、カーンと鳴らすことができる。
わざわざこんな目立つ標識が立っているのは、ここが峠であるもののやや大門沢へ下りるきっかけとしてはわかりにくい地形だからだ。ガスったりすると下り道が判別不能となり、実際ここで遭難死した人もいる。その遺族が同じ悲劇を繰り返さないように、と大門沢への道しるべとして作ったのがこの標識だ。黄色だと、ガスっていても比較的視認性が高いというメリットがある。
このあたりはちょっとした広場になっていて、テント場指定はされていないものの夜にここでテントを張る人もいるようだ。
ちなみに、ここは国立公園内なので、テント場に指定されいる場所以外でのテント泊は禁止だ。最初っからここでテントを張ろう、と思って行動するのは駄目。緊急避難的にここでテントを張るというのなら、当然OK。命の確保が最優先されるべきだ。
「あの鐘を鳴らすのはあ、なーたー」
と叫びながら、カーンと鐘を鳴らしておいた。「あなた」じゃなくて「オレ様」だったけど。

07:10
足かけ二日間楽しんだ縦走歩きはここで終わり。
なかなか踏ん切りがつかず、しばらく大門沢下降点のところで休憩をとる。
しばらく休んでいたら、雷鳥の存在を教えてくれた単独行女性が遠目で見える距離にまで接近してきたので、追いつかれないように出発することにした。
奈良田は標高830メートル。この場所はおそらく標高2,800メートル近くなので、これから一気に2,000メートルの標高差を下ることになる。なかなかないぞ、こんな標高差の山歩き。普通なら、そんな標高差を埋め合わせてくれる道路があったり公共交通機関があったりするものだ。でもそんなものはここにはない。山深いのぅ南アルプスは。
稜線からそれた直後、いきなりロープが張ってある道がお出迎え。傾斜きついぞ、という脅しだ。
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