ガソリンはなくても車は走る【白嶺三山縦走】

本日の夕食会場

16:55
おじさんの予告通り、「17時ちょっと前」である16時55分に食事ができたとの通告があった。隣の小屋で食べるので来い、という。

いったん外に出て、われわれが寝泊まりする建物に隣接する小さな小屋に入る。

そこは6畳もスペースがあるかないか程度の場所で、4人がけのちゃぶ台が4つ並べられていた。ぎゅうぎゅう詰めになり、膝同士をぶつけ合いながらなんとか着席する。

今日はまだ人数が少ないからいいけど、人が多いときはどうするんだろう。

ご飯とみそ汁はセルフで

16:58
テーブルが並ぶ真ん中に、でん、と大きな鍋が二つ並ぶ。年期が入った、武骨な鍋だ。一つはご飯、一つはおみそ汁。

自分の分は自分でよそうのが一番なんだけど、狭いのでそんなことは無理。だから、鍋の近くにいる人が「どれくらい食べます?」と聞きながら、みんなの分をよそっていた。ここにいるのは年齢も、性別もばらばら。食事を食べる量だって、全然違う。

高野豆腐とひじきの煮物

16:58
テーブル上には、おかずだけは各自のお皿に盛られたものがセットされていた。それが、これ。

非常に色目の悪い、あまり食欲をそそらない豪快なおかず。ええと、高野豆腐とひじき、きのこ、ふきなどを醤油で甘辛く煮たもの。正式な料理名は不明。こんなの、ありそうな料理だけど実際には見たことがない。おじさんオリジナルか。

雑に盛られているところが、いかにもおじさんらしい。

高野豆腐も、ひじきも、乾燥された状態で保存できる。だから、軽いし長持ちする。考えてみれば、山小屋メシとしては最適なおかずと言えるかもしれない。

これが農鳥小屋の夕食

17:01
というわけで農鳥小屋、本日の夕食。

付け合わせとか彩りといったものは期待しないこと。おじさんのキャラを前面に押し出した、メシ。「ご飯」という言葉よりも、「メシ」という言葉の方がぴったりだ。どんぶりメシだし。

しかしこれが侮れない。見た目は悪いけど味は結構良かったのだった。場に居合わせた人たち、みな一様に絶賛。おじさんを褒め倒していた。

おじさんは「いやあ」とほんの少し照れて、この料理については多くを語らなかったけど。

みそ汁は具だくさんで、いいだしが出ていた。そしてひじきも、塩辛くなく、甘く高野豆腐が煮含まれていてちょうど良かった。甘すぎるとご飯のおかずにならないけど、これはちょうどいいバランス。やるな、おじさん。

向かいに座って食事をしていたマダムから、「私あんまり食べられないから食べて。あなた若いんだから食べられるでしょう」と言われ、このおかずを大量に分けてもらった。よっしゃああああ、がっつり食うぜ。

おかでん39歳、山の中ではまだまだ若造の部類だ。若い人も最近は山に戻ってきたんだな、と感じさせられることがあるけど、こんな山深いところで、小屋泊まりをするような人ってまだまだ若い連中は少ないようだ。

すっかりあたりはガスで覆われてしまった

17:58
食事の最中、ずっとおやじさんはしゃべり続けていた。話し相手がいるわけではなく、おやじさんの語りに宿泊客が神妙に耳を傾ける、といった感じだ。

べつにおじさんさんの武勇伝を聞かされるとかそういうのではなく、もっぱら話題は明日の天気についてだった。おじさんはおじさんなりにわれわれのことを案じてくれていて、情報提供をしてくれているのだった。

おじさんいわく、

「明日は雨だな。昼頃雨が降りそうだ。でも正直わからない!今年の天気はよくわからない!今年も、静岡のほうで豪雨があったし、落雷なんかもこれまでの比じゃない。何があるかわからないから、早く下りた方がいいよ」

だそうだ。

食後、外に出てみたら、もうあたりはすっかりガスで覆われていた。真正面に見えるはずの間ノ岳は、まったくその輪郭を見せなくなっていた。

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