
10:36
緑に覆われる山。
さすがに森林限界ははるかに突破しているので、木が覆い茂るということはない。せいぜいハイマツだ。
とはいえ、岩がゴロゴロしている殺伐とした山肌ではない。
これを癒される景色と捉えるか、「アルピニズムに欠けていて面白みがたりない」と感じるかは人それぞれ。
いずれにせよ、木がなくて遠くまで見通せる景色というのは気持ちがよいものだ。たとえそれが今日のような荒天であったとしても。
・・・って、あれれ、ガスが少しずつ晴れてきたぞ。このまま晴れてくれればうれしいのだけど。
山の天気は変わりやすい、というのを地でいっている本日のお日柄。

10:52
北岳から北岳山荘めがけて結構下ったので、これからまた間ノ岳に向けて登りなおしだ。
でも、こういう開放的な景色だったら、なんか許せる。
以前、高妻山に登ったとき、アップダウンを繰り返す登山道にいい加減疲弊し、「位置エネルギーの無駄」「山と山とを橋でつなげろ」とやけくそなことを言っていたけど、今日はにこやかに歩けている。

10:56
晴れると思わせておいて、ガスにまた覆われる山。
雨が降ってこないだけまだましだ、と思えているけど、レインウエアを着るべきか、脱ぐべきかの瀬戸際状況が続くのでちょっとうっとおしい。
こういう時、レインウエアの下は着用しない。濡れたってかまうものか、と開き直る。ごつい登山靴を履いていると、ズボンの類の着脱が面倒でかなわないからだ。着脱の際に汚れるし。

10:58
あれっ。
なにやら標識が見える。
もう間ノ岳山頂に到着だろうか。だとしたらえらくゆるいゲームだったものだな。これが百名山のうちの一座としてはちょっと物足りない。

10:59
・・・と思ったら、案の定これは間ノ岳ではなかった。
えーと、柱に文字が彫りこまれているけど、よく読めない。
中・・・白根・・・?
中白根山、という山らしいここは。
というか地図を見ろ地図を。ちゃんと地図にも書かれているぞ。
しかし、地図上の扱いとしては雑魚キャラ同然だった。普通、登山地図の場合、要所要所で所要時間が区切られて記載されているものだが、この山は無視されていた。
「北岳山荘から間ノ岳まで1時間40分」。
確かに、ガツーンとそびえ立つ山ではない。銃走路上にちょこっと出っ張っている場所だ。雑魚キャラ扱いされる理由はそんなところからくるのだろう。
とはいえ、ここはれっきとした「3,000メートル越えの山」の一つ。
世の中には、「百名山を全部登る」という趣味のほかに、「標高3,000メートル以上の山を全部登る」という趣味の人だっている。そういう人にとっては、この山だって「単なる通過点」ではなく立派な到達点だ。無礼があっちゃいかん。
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